「ジョブ・クラフティング研修」の進め方とポイント ~読書レビュー『ジョブ・クラフティング』#7~
(本日のお話 2754文字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は2件のアポイント。
また1件のコーチング(受けるほう)。
また、研修プログラムの企画・作成などでした。
コーチングは何度やっても(やってもらっても)、色々と気づきがあります。
今、出版プロジェクトを企画していますが、そのプロセスの中で感じるモヤモヤの理由が、
なんとなく見えてきた気がした時間でした。
対話から気づくことはたくさんありますね。
*
さて、本日のお話です。
本日も著書『ジョブ・クラフティング』について、読書レビューをお届けいたします。
本日は「第7章 産業保健におけるジョブ・クラフティング」についてです。
「・・・ん?産業保健?」と思われるかもしれませんが、書かれている内容は「ジョブ・クラフティング研修の具体的な進め方」にも焦点を当てており、ものすごく参考になる内容でした・・・!
それでは早速まいりましょう。
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<目次>
90秒でわかる本章のポイント
ジョブ・クラフティング研修の進め方
研修1回目(2時間)
研修2回目(2時間)
実施時に気をつけるポイント
ジョブ・クラフティング研修の効果
まとめと個人的感想
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■90秒でわかる本章のポイント
・本章では、産業保健心理学におけるジョブ・クラフティングを検討する。産業保健とは「労働者の健康と安全、ウェルビーイングを高めること」を目的としたものである。
・その産業保健においてポジティブ心理学への注目が高まっている。ポジティブ心理学の代表的な成果は「ワーク・エンゲイジメント」であり、ワーク・エンゲイジメントを向上させる介入が研究されてきた。
・その中で、「仕事の資源(上司・同僚のサポート、自律性など)」と「個人の資源(楽観性、自己効力感など)」を高めることが、ワーク・エンゲイジメントの向上に有効であるとされる。そして、仕事の資源と個人の資源の両方を高めるものが「ジョブ・クラフティングの介入」である。
・しかし、JC介入研究は、いくつかの課題もある。具体的には、無作為比較実験による効果検証がされていない、日本での事例が少ない等である。それらを踏まえて、著者らは、ジョブ・クラフティングの介入プログラムの開発を行い、281名に対して2回の集合研修を実施し、効果検証を行った。
・その結果、ジョブ・クラフティングの介入は「ジョブ・クラフティングをあまりしていない層」「36歳以下の若年層」に有効であることがわかった。
という内容です。
本章の前半は、組織において注目が高まる産業保健分野(メンタルヘルス、ウェルビーイング、SDGs等のテーマ)とジョブ・クラフティングの関連を説明します。
後半では、これまでのジョブ・クラフティング介入研究の課題を踏まえて、日本におけるジョブ・クラフティング介入プログラムを開発し、その内容と、実施した効果について紹介がされています。
特に後半は、自組織でもそのまま使える内容で、大変参考になる内容だと感じました。
■ジョブ・クラフティング研修の進め方
さて、では「ジョブ・クラフティング研修はどうやって進めるのか?」ですが、以下のように説明がされています。2時間✕2回の集合研修のポイントを見てみましょう。
<研修1回目(2時間)>
●目的:
「ジョブ・クラフティング(以下JC)を理解し、自分のジョブ・クラフティング計画を立案すること」
●ワークの内容:
(1)事例検討
・仕事に対してやらされ感や行き詰まり感を感じている架空のAさんの事例を用いて、「どのようにJCすると、Aさんはより前向きに、働きやすくなるか」を個人ワークとグループワークを通じて考える。
(2)参加者自身の業務や働き方の見直し
・現在行っている業務を3つ程度挙げてもらい、それぞれの業務に対して、どの程度JCできているかを振り返る。
・次に、参加者が挙げた業務に対して、どのようなJC(タスク・関係性・認知)ができるかを個人ワークで考える。そして、グループワークで意見を共有し、JCのアイデアを広げる。
・2週間~1ヶ月間で取り組むJC計画を立案する。「いつ、どこで、何をするか」まで具体的に決める。
<研修2回目(2時間)>
●目的:
「ジョブ・クラフティングの振り返りと改善版のJC計画立案を行うこと」
●ワークの内容:
(1)JC計画の振り返り
・計画内容や実行した回数、実行して感じた気持ちの変化や実行しやすさ、次に活かす場合のポイントについてワークシートに記入する。
・個人ワークで振り返った後に、グループワークで振り返りを共有する。
(2)改善版JC計画づくり
・「より実行しやすく、ポジティブな気持ち(仕事のやりがい、楽しさなど)につながるようなJCは何か」について個人ワーク、グループワークを通じて考える。
◯実施時に気をつけるポイント
また、JC研修を実施する際に、気をつけているポイントが4点紹介されていました。以下、引用いたします。
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<JC研修の実施において気をつけるポイント>
1、JCのポイントとして、「JCは自分の仕事の中身を元から変えるというよりは、自分の働き方に少し工夫を加えることが大切」と伝える。
2,JC計画の立案のとき、「どの業務に対してであれば、簡単にジョブクラフティングができそうか」という視点で振り返りを促す(できそう、と思える事が大事)
3,JC計画の振り返りのとき、「JCを実行した結果生じた、ポジティブな気持ちの変化に注目してもらう」ことを促す。
4,JC計画が実行できなかったときに「実行できなかった」という振り返りも大切な気付きであることを伝える
P155-156
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■ジョブ・クラフティング研修の効果
さて、このような研修を5つの企業と、1つの小学校において、281名に実施をしました。
無作為化比較試験として、介入群・対照群に割り当て、介入群には6週間のJC介入プログラムの実施を行い、ベースライン・3ヶ月後・6ヶ月後で、その効果を検証しました。
調査をした内容は、成果変数を「ジョブ・クラフティング尺度(12項目)」「ワーク・エンゲイジメント(9項目)」「仕事のパフォーマンス(1項目)」とし、介入群・対照群の違い、参加者の属性による結果を検討しました。以下3点が、主にわかったことです。
●わかったこと1:研究参加者全体では、JCやワーク・エンゲイジメント、仕事のパフォーマンスに統計的有意な効果は得られなかった
●わかったこと2:「JCをあまり実施していない集団」においては、3ヶ月後時点において、介入群の「ワーク・エンゲイジメント」が、対照群に比べて有意に上昇していた
●わかったこと3:「36歳以下の集団」では、3ヶ月後と6ヶ月後における介入群の「仕事のパフォーマンス」が、対照群に比べて有意に上昇していた
とのことです。
つまり、ジョブ・クラフティングの介入は「ジョブ・クラフティングをあまりしていない層」「36歳以下の若年層」に有効と言えそうです。
■まとめと個人的感想
今回の研修プログラムは、「ジョブ・クラフティング研修プログラム実施マニュアル」として、一般向けに公開されています。
実際に、これらのプログラムの実施に私も関わりましたが、参加者の皆さまが非常にいろんなアイデアを出されており、活発な議論がされているのがとても印象的でした。
研修プログラムも、こうした効果検証も含めて整理されていると、非常に説得力があります。「研究と実践をつなぐ知見」であり、こうしたものがたくさん多くの人に知られると、人も組織も良くなっていくことに繋がるのだろう、そんなことを感じた次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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