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3876号 2024年10月5日

「体育」と「フィジカル・エデュケーション」の違い

(本日のお話 2714文字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

スポーツの秋ですね。
本日、子どもの運動会の人も少なくなかったようです。
今日はそんな運動の話について、お伝えさせていただければと思います。



先日、大学院の仲間の紹介で、フィジカルトレーナーとして会社を起業された方とお食事をしました。その方は、筑波大学 大学院の体育学の博士課程に在学されており、そして前回のオリンピックで銀メダルに貢献したチームのフィジカルトレーナーとして活躍されています。

その方と、健康・運動に関する経営をされている仲間と3人で話をする中で、「運動とウェルビーイング」をテーマに盛り上がったのですが、その内容が、考えさせられるものでした。

スポーツの秋とのことで、今日はこのお話について、皆様にご共有させていただければと思います。よろしければお付き合いくださいませ。

――――――――――――――――――――――――――――
<目次>
体育は好きだけど、好きじゃない
体育はそもそも「色んなスポーツをやること」ではない?
「体育」と「フィジカル・エデュケーション」の違い
3歳の息子の運動会で思うこと
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■体育は好きだけど、好きじゃない

私事で恐縮ですが、私は「体育」の授業は”好き”でした。
・・・が、一方、”好きではなかった”のでした。

”好き”の側面としては、算数とか国語より、レクリエーション的な感じがあって楽しかったから。身体を動かすのも、気持ちよかったです。ですので、好きでした。

しかし、特に中学校くらいになると様子が変わりました。
”好きだけど、好きじゃない”という気持ちが芽生えてきました。
それは、評価や比較が始まったからです。

体育の成績は頑張っても「3」しかとれず、リレーや走り幅跳びも、他者との比較で「自分はできない」部類になっていました。子どもは時に残酷です。よくある「花いちもんめ」的やつで、ドッチボールのメンバーをリーダー役が一人ずつ選ぶ時、いつも最後に残る一人になっていた記憶もありました。この悲しさ、劣等感の中で、

「体育は好きだけど、好きじゃない」

という、葛藤めいた気持ちが生まれていきました。

あれ、そもそも「体育」って誰かに勝ったり、評価されるためのものなんだっけ・・・?

■体育はそもそも「色んなスポーツをやること」ではない?

そんな事を考える中で、「体育とはそもそも何か?」について、ある体育に関わる方の体育に関する疑問を教えてもらいました。こんな考え方です。

・『体育』は、もともとは「健康と体力向上」だった
・そこに”見せる”というショー的な要素が含まれるようになった。
・”見せる”ためには、順位をつけて表彰したほうが盛り上がる
・”見せる”ためには、ダンスなぢ揃えて動いたほうが華がある

後述しますが、体育の目的には「社会性・協調性の育成」というものも含まれます。ゆえに、意味がないとはいいません。

ただ「集団性・社会性の獲得」という目的だけでなく、一つの「見せるイベント」として市民権を獲得する中で、「本人にとっての健康と運動」という主目的以外別のものが付加されていったのでは、とのこと。

つまり、「個人の身体的・精神的な健康の向上」にフォーカスをないがしろにされてはいないか?

というお話でした。

なるほど、こういう論点にも触れてみると、今の体育についても、思うことが生まれてきそうです。

■「体育」と「フィジカル・エデュケーション」の違い

では、そもそも「日本の体育」とはどのように生まれたのか?
また、海外とどのように違うのか? 簡単ですが調べてみました。

まず体育の歴史は、明治時代の学制改革に伴い、19世紀の後半に導入されたとのことです。最初は軍事訓練の一環の体力向上であったのが、大正時代に、教育の一貫として位置づけられ、今に至るそうです。

そして、冒頭に紹介された「体育とフィジカル・エデュケーション(PE)」の違いいては、また、両者の違いは簡単に調べてみたところ、以下のような説明がありました。

***
<日本の「体育」>
●内容:
運動技能の習得や体力向上に加え、健康教育や性教育、安全教育の要素を含む
●スポーツの種類:
伝統的に武道(剣道、柔道など)や相撲など、日本の文化に根ざしたスポーツが教育カリキュラムに含まれる。単なる体力向上の手段だけでなく、精神修養や礼儀作法、規律の育成を目的とする。
●教育目標:
集団での調和や協調性の育成に力を入れる傾向がある。体育を通じて、チームワークや他者との協力、集団行動の中での規律を学ぶことが重視される。

<海外の「フィジカル・エデュケーション」>
●内容:
運動技術やスポーツの知識に焦点を当てつつも、「健康教育」(Health Education) として栄養や心身の健康に関する内容を扱うことが多い。特にアメリカやヨーロッパでは、健康教育が体育から独立している
●スポーツの種類:
地域ごとに異なるスポーツ文化が反映される(例えばアメリカではバスケットボールやフットボールなど)。またフィットネスの概念がより強調され、個人の健康維持のためのエクササイズプログラムが組み込まれていることが多い。
●教育目標:
個々の身体的・精神的な健康の向上がより強調される。特にアメリカなどでは、個人のフィットネス目標や健康意識がカリキュラムの中心になることがあり、心肺機能の向上や筋力トレーニングのようなフィットネス要素が強く取り入れられている。
※ChatGPTの回答より要約
***

つまり、日本では「集団行動・規律の育成」「精神修養」という側面が比較的強く、海外では「個々の身体的・精神的な健康の向上」という側面が比較的強い、というようです。

■3歳の息子の運動会で思うこと

話はかわりますが 今日は我が息子(3歳)の保育園の運動会でした。

我が息子は、周りがダンスをしていても、外から手拍子をしてみているだけ(笑)でしたが、本人は楽しそうでした。

また、かけっこも、周りのお友達が全力で走る中、散歩に出かけたおじいちゃんのようにトコトコ小走りでゴールをしていました。ただ、本人は、それもまた楽しそうでした。

きっと、そこから順位や優劣がつくことで、そうした体を動かす純粋な喜びが失われてしまう可能性があるとしたら、それはとても寂しいことです。

日本と海外、それぞれメリット・デメリットはあるでしょう。
文化の違いもあるので、どちらがいいとも言えません。
ただ、私が個人的に思うのは「身体を動かすことそのものの価値」にもっと注目できると、運動の可能性が広がりそうだな、とも思いました。

最近の本では、運動のメリット(記憶力向上、幸福感など)もより明らかになってきています。集団行動よりも、もっと土台となる、一生付き合っていく自分の身体をもっと好きなってもらえたら嬉しい、そんなことを子どもの姿を見ながら、「フィジカル・エデューケーション」の話を思い出しながら思った次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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