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3879号 2024年10月8日

在宅勤務だとジョブ・クラフティングはやりやすくなるのか? ~読書レビュー『ジョブ・クラフティング』#9~

(本日のお話 2598文字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は、午前中はチームビルディング研修。
また午後は「出版ゼミ」の講座への参加でした。
その他研修プログラムの作成と、夜はピアノのレッスンでした。

出版ゼミでは、ひたすら「見出しがつまらないね」「自己紹介が面白くない」と
耳の痛いフィードバックを受けています。

面白いものを書くことと、新しいものを書くことと、
正しく書くことの間に揺れまくっているこの頃。

謙虚に受け止めてまいりたいと思います(汗)



さて、本日のお話です。

本日も著書『ジョブ・クラフティング』について、読書レビューをお届けいたします。

本日は「第9章 テレワーク下のジョブ・クラフティング」についてです。

もはや一つの働き方としてすっかり定着したテレワークですが、テレワークによって自律的に働きやすいという声もあれば、上司や同僚との接点が少なくなり支援が得られづらい、といった側面も見られます。

その中で、「テレワークがジョブ・クラフティングにどのように影響を及ぼしているのか?」このことを研究したのが本章です。

先に結論から言えば、「在宅勤務の頻度が高いと、ジョブ・クラフティングの一部(挑戦的要求度)が高い」という結果になりました。ということで、以下詳細を見ていきたいと思います。

――――――――――――――――――――――――――――――
<目次>
在宅勤務とジョブ・クラフティング
COR理論とは
研究の仮説と結果
まとめと感想
――――――――――――――――――――――――――――――

■在宅勤務とジョブ・クラフティング

最近、Amazonが在宅勤務から原則出社に切り替えたというニュースが9月16日のニュースにありました。

アンディ・ジャシーCEOいわく、「在宅勤務より、対面で仕事を行うほうが業務上の利点が大きい」「お互いの学び合い・チームの結束力を高めるなどのメリットは対面のほうがある」と述べていました。

一方、「在宅勤務」の特徴とメリットもあります。
代表的なものは「働く人の自律性の高さ」です。モチベーション理論によると、働く人の自律性が高まると、従業員の責任感が向上し、モチベーション向上に寄与する(Hackman&Oldam, 1976)ことがわかっています

在宅勤務の環境では、上司の監視がなく、細かい指示を受けて仕事を遂行するため、より自律性が促されることが考えられます。こういった意味では、在宅勤務もメリットがあるといえるでしょう。

そして、「ジョブ・クラフティング」とは「従業員自らが、仕事を自信のスキルや能力を活かせるように改変したり、職場環境を自身に合うように変化させていく」ことです。在宅勤務の環境は、一人ひとりが自律的に仕事に取り組むわけですから、ジョブ・クラフティングも重要な概念と考えられるのですね。

■COR理論とは

さて、在宅勤務とジョブ・クラフティングに関する仮説に関連するものとして「COR理論」(Cosevation of resouces theory)(Hobfoll, 1989)なるものがあります。

へー、そんなのあるんだ、と私も読みながら思いましたが、COR理論とは、「大切なリソースが脅かされたり、失うことによって人はストレスを感じる」というメカニズムを説明した理論とのこと。

ちなみに、ここでいう「リソース」とは「個人が価値を置いている、またはそれを実現するための手段として機能する個人特性、条件、またはエネルギー」とされます。たとえば、時間、他者からの支援、あるいは自律性などでしょう。そうしたリソースがなくなるとストレス高まるよね、というお話かと。

そして、繰り返しになりますが「在宅勤務のほうが、より特定のリソース(自律性)は獲得しやすい」と考えられます。あれやこれや周りから言われづらいため、自分の思ったとおりに仕事を進められるからです。

もちろん、在宅勤務では一方「非言語情報が伝わりづらく、意思疎通や社会的支援が受けづらい」というリソースの消耗も考えられます。まさにAmazonの出社に戻した理由の部分ですね。

いずれにせよ、基本的には「在宅勤務では、主体的に仕事の改変や創意工夫が求められる」と考え、この仮説が実際どうなの??を検証することにしたのでした。

■研究の仮説と結果

さて、本研究では、日本の従業員651名を対象に、在宅勤務とジョブ・クラフティングについて「4つの仮説」を検証しました。

調査方法は、日本版ジョブ・クラフティング尺度と、在宅勤務の利用頻度をコロナ前後を比較してデータを集めました。

また、日本語版ジョブ・クラフティング尺度では、以下の4つの下位尺度から調査をしています。

――――――――――――――――――――――――――――――
<ジョブ・クラフティングの4つの要素>
1,構造的資源向上(自身の専門性や能力を向上させようとする行動)
2,社会的資源向上(他の従業員のフィードバックやソーシャルサポートを得ようとする行動)
3,挑戦的要求度向上(困難な業務などに積極的に取り組もうとする行動)
4,妨害的要求度低減(感情を乱すこと、非現実な要求をする人と関わることが減る)
――――――――――――――――――――――――――――――

そして、それぞれ仮説と結果は、以下の通りとなりました。

●仮説1:コロナ禍 / コロナ禍以前において、在宅勤務の利用頻度が高いと、在宅勤務における「構造的資源向上」が高い
→ 支持されなかった

●仮説2:コロナ禍 / コロナ禍以前において、在宅勤務の利用頻度が高いと、在宅勤務での「社会的資源向上」が高い
→ 一部支持された

●仮説3:コロナ禍 / コロナ禍以前において、在宅勤務の利用頻度が高いと、在宅勤務での「挑戦的要求度向上」が高い
→ 一部支持された

●仮説4:コロナ禍 / コロナ禍以前において、在宅勤務の利用頻度が高いと、在宅勤務における「妨害的要求度低減」が高い
→ 支持されなかった

まとめると以下の2点がポイントとなります。

――――――――――――――――――――――――――――――
●わかったこと1:”コロナ禍に”おける在宅勤務頻度が高いと、「挑戦的要求度向上」に取り組む度合いが高い

●わかったこと2:”コロナ禍以前に”おける在宅勤務頻度が高いと、「挑戦的要求度向上」と「社会的資源向上」に取り組む度合いが高い
――――――――――――――――――――――――――――――

結果の考察として、「在宅勤務では『挑戦的要求度向上』が見られること」について、「自律性が高まり、内発的動機づけが高まり、普段行っていないような困難でやりがいのある業務に取り組むことが原因では」、と述べられていました。

また、もう一つの結果、「コロナ以前から在宅勤務が高い人は『社会的資源向上』が見られていた」とのことですが、「これも様々な理由で(育児等)職場との直接の接点が少なくなるからこそ、意図的にフィードバックやサポートを求める行動をしているのでは」という考察がされていました。

■まとめと感想

テレワーク下において、得られるリソース(自律性など)と、得づらいリソース(社会的支援など)を考えて、その上でどんなジョブ・クラフティングが行われるのか? を4つの要素から見ていくのは、興味深い試みでした。

また、ジョブ・クラフティングとひとまとめにいうのではなく、Timesらの4つの要素に分けた研究を見ることで、ジョブ・クラフティングのイメージがだんだんとついてきた感覚がしている次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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