強みで育てるリーダー育成アプローチとは? ~VIAとリーダーシップ能力の比較~
(本日のお話 3209文字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日月曜日は、朝の便で、沖縄から東京に移動。
その後、1件のアポイント、ならびに夜は、お食事会。
大学院の仲間とお世話になった先生の3名で、ゼミ生の社会人向けのプロジェクト修了のお疲れ様会で、池袋の街中華を楽しみました。
自分からすると雲の上のような先生なのですが、
1つ違いとのことで、立場を超えて勝手に親近感を覚えてしまうのが不思議でした。
数年ぶりに、終電を目の前で逃して、タクシーで帰りました。
いかんせん、大変楽しい時間でした。
Tさん、T先生、ありがとうございました!
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さて、本日のお話です。
本日も「強み」に関する論文を、ご紹介ご紹介させていただきます。
「リーダーシップ」について、これまで多くの研究がされてきました。
そして、その研究の中では、多くのリーダーシップのコンピテンシーも定義されてきています。
今回の論文は、「性格の強みをリーダー育成に繋げることを提唱した論文」となります。実証研究ではないですが、新しい視点を提供するものとして、興味深い内容でした。
ということで、早速見てまいりましょう!
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<目次>
今回の論文
30秒でわかる論文の概要
強みに基づくリーダー育成アプローチとは
「性格の強み」の13の基準
21世紀のリーダーシップ能力とVIA強みの比較
まとめと個人的感想
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<今回の論文>
From competencies to strengths: exploring the role of character strengths in developing twenty-first century-ready leaders: a strengths-based approach
(コンピテンシーから強みへ:21世紀に備えるリーダーを育成する際のキャラクター強み)
Alexandra Advani、 Jens Mergenthaler
Discover Psychology, 2024年
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■30秒でわかる論文の概要
・21世紀のリーダーシップ研究では、”リーダーシップ・コンピテンシー”という「聖杯」のようなものを探すために、多くの研究がされてきた。
・文献では、21世紀に通用するリーダーが「何を」体現すべきかは概説されているものの、「どのように」育成すべきかは依然として隔たりがある。
・今回の研究では、リーダーの機能として何が足りないかという「欠点に基づくコンピテンシーモデル」から、「性格な強みに基づく、リーダーシップの育成」を提唱する。
・具体的には、VIAに分類される「人間的」な特性を、重要な資源として考えることで、リーダーがすでに持っている強みを引き出すフレームを考えることを検討した。
という内容になっています。実証研究ではなく、文献研究となっているため、これまでのリーダーシップ論を振り返りつつ、性格の強みを活かすリーダーシップが何かを考察するような流れとなっていました。
■強みに基づくリーダー育成アプローチとは
さて、これまでのリーダーシップの研究は、初期の研究では「特性論」(生まれながらに決まっている)とされ、その次に「コンピテンシー」(行動やスキル)に注目された歴史が述べられています。
リーダーシップ開発の根底にあるのは、必要不可欠なリーダーシップの「欠陥ベースのアプローチ」であるとします。その中で、21世紀にポジティブ心理学の動きで、ウェルビーイングや成長への方向へ舵を切ってきた、とのこと。
なお本論文では、リーダー育成(Leader Development)とし「個々のリーダーに焦点を当てた育成」とし、リーダーシップ開発は(Leadership Development)は「グループやチーム全体のリーダーシップ能力の向上に関連した開発」とし、今回はリーダー育成を論じています。
強みに基づくアプローチは、「個人の生来の資質(特性理論)」と開発されたスキル(コンピテンシー理論)を認識し、活用した上で、特性理論とコンピテンシー理論のギャップを埋め。リーダー育成のフレームワークを低起用できる(かもしれない)と著者は述べています。
そして、強みに基づくリーダー育成アプローチは、「個人の成長と改善のために個人が強みを積極的に活用することを促進し、解決策を発見するためのエンパワーメントと自律性を育むことで、リーダー育成の取り組みを補完し、支援するものである」と述べました。
ベースの考えとして、「SFBTモデル(Solution-Focused Brief Therapy:ソリューション・フォーカスト・ブリーフ・セラピー)」、日本語では「解決志向ブリーフセラピー」とも呼ばれる心理療法の一種の考えを取り入れており、以下の考えを根底に置く、としています。
<SFBTモデルの考え方>
1)変化は不変である
2)変えられるもの、可能なものに重点を置くべきだ
3)リーダーは変化を望まなければならない
4)リーダーは自らの目標を立てなければならない
5)リーダーたちは、問題を解決するための資源と強みをすでに持っている
6)未来に焦点を当てなければならない
※強みに基づくリーダー育成アプローチに転用できると著者らが考えたもの
■「性格の強み」の13の基準
本論文の中で、「性格の強み」とは、どのような概念なのかを表したものがありました。13の基準として述べられているので、以下ご紹介いたします。
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<「性格の強み」の13の基準>
1,安定性と適応性がある:
一般的に性格の強みは、時間や状況に応じて安定しているが、人生の出来事によって影響を受け変化することがある。
2,実践により育成できる:
強みは実践を通じて培うことができ、介入やトレーニングによって強化される。
3,独自性がある:
各性格の強みは他と重複せず、独自性を持っている。
4,多面性とユニークさ:
個々人の性格は多面的でユニークであり、様々な強みが個々に表現される。
5,定量化が可能である:
VIA-ISの調査により、性格の強みは定量的に測定できる
6,徐々に表現される:
家庭や仕事など強みは状況に応じて表現され、相手の性格や状況がその強みに影響を与える。
7,過剰および不足使用のリスク:
強みは過剰使用や不足使用により、問題や対立を引き起こす可能性がある
8,相互接続性がある:
どの状況でも、複数の性格の強みが同時に表現されることが多い。
9,文化を超えた価値がある:
性格の強みは、文化や信念体系にかかわらず、普遍的に価値がある。
10、結果に基づく:
特徴的な強みを表現することは、幸福感や健康促進などの結果に寄与する。
11、自己強化的サイクル:
性格の強みを育むことで、自己強化的なポジティブサイクルが生まれる。
12、持続可能性がある:
性格の強みは持続可能であり、アリストテレス哲学などの長い歴史的背景を持ち、その重要性が強調されてきている。
13、美徳的な側面:
性格の強みは美徳的であり、倫理的な行動に寄与する要素を含んでいる。
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こうして「強みの基準」が整理されると、明確になるように感じますね。
■21世紀のリーダーシップ能力とVIA強みの比較
さて、本研究では、系統的レビュー論文を複数検討し、リーダーシップコンピテンシーモデルを整理しました。そして、それらのリーダーシップ・コンピテンシーを、VIAの24の強みと比較したところ、両者は非常に似通っている事がわかった、と述べています。(例、チームワークや、誠実さ、公正さ、自律性、創造性など)
それらを一覧にまとめたものについて、以下引用いたします。
(※こちらはnote記事をご参考ください)
https://note.com/courage_sapuri/n/n8a203f7376a1
■まとめと個人的感想
以前からストレングス・ベースド・リーダーシップというキーワードの論文はいくつかあるように感じていたものの、明確に言及されていたものは、知りませんでした。
その中で、本論文は、リーダーシップ・コンピテンシーを概観し、VIAの性格の強みでそれを補うことを提案した、2024年の査読論文として、非常に興味深いものだと感じました。
「リーダーの特性」「リーダーとして磨くべきコンピテンシー」、そこを接続するものとして「リーダーの強みをベースとしたアプローチ」が有効とのことですが、それを示す実証研究とはどんなものになるんだろうと、考えてみた次第です。今後、注目したいと思います。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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