「親切を数える」と幸福度が高まる ー日本人117名への実証研究ー
(本日のお話 3143文字/読了時間5分)
■こんにちは。紀藤です。
本日で3900号です!
キリ番は何となく、嬉しいです。。。
あと100号で4000号、日々ちょっとずつ、ですね。
さて、昨日は、1件のアポイントでした。
またお昼は、以前からの友人であり、経営の専門として大学の先生をやっている方とのランチ。
自分では想像できないレベルの大学院を2つ卒業されており、また、これから経営の他に、教育も学ばれるとのことで、大いに刺激をいただきました。
自分も頑張ろう・・・!(毎回言っている気がします)
*
さて、本日のお話です。
本記事にお越しくださりありがとうございます。
本日は、「ポジティブ心理学」に関する論文のご紹介です。
VIAの強みの分類に『親切心』(kindness)なるものがあります。
親切心とは、
・他人に対して、親切で寛大である
・見知らぬ人に対しても、喜んで助けを提供し、善い行いを行う
・人の幸せに深い関心を持ち、困っている人を支えようとする
というものです。
そして、今回の論文は「親切を数えることで、幸福感は高まるか?」を調べたものです。そして、結論を申し上げると、「親切心は幸福度を高める」ということがわかりました。
ということで、早速内容を見てまいりましょう!
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<目次>
今回の論文
30秒でわかる本論文の概要
研究1:「親切心」と幸福感の関係
研究2:「親切を数え上げる」と幸福感の関係
考察
まとめと個人的感想
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<今回の論文>
Happy People Become Happier Through Kindness: A Counting Kindnesses Intervention(幸せな人々は親切によってさらに幸せになる:親切を数える介入)
Keiko Otake, Barbara L. Fredrickson
Journal of Happiness Studies, 2006
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■30秒でわかる本論文の概要
本研究は、2つの研究を行った。
研究1のテーマは、「親切という性格の強みと主観的幸福感の関係」である。日本の大学生175人を対象に親切行動が幸福度に関連するかを検討した。
結果、幸福な人々は親切行動の動機、認識、実行が高く、日常生活での幸せな記憶が多いことが示された。
研究2のテーマは「”親切行動の数え上げ”介入が主観的幸福感に与える影響」である。日本人女性119人を対象に、1週間の親切行動の数え上げが主観的幸福感を向上させるかを検証した。
結果、1週間の介入で主観的幸福感が向上し、幸福な人はさらに親切で感謝の気持ちを増すことが確認された(研究2)。
という内容です。
まさに論文のタイトルにあるように、「親切心は幸せにつながる」そして「幸せな人々は親切をすることで、さらに幸せになる」という結果が見られた、となります。
では、具体的にどのような研究だったのでしょうか。
研究1、研究2の順番で、詳しく見ていきたいと思います。
■研究1:「親切心」と幸福感の関係
○目的
研究1では、「親切という性格の強みと主観的幸福感の関係」を調べることを目的としています。
○方法
175名の日本人の大学生に対し、「親切心の強さ(動機、認識、行動の3要素)」を測定し、「主観的幸福感」と比較しました。
具体的には、参加者の主観的幸福感のスコアに基づいて、中央値分割法を使用して「幸福な人」と「それほど幸福でない人」の2つのグループに分類しました。
そして、日本版主観的幸福感尺度(JSHS)のスコアの中央値を基準として、スコアが高い参加者を「幸福な人」グループ(n=81、平均スコア5.77)、スコアが低い参加者を「それほど幸福でない人」グループ(n=94、平均スコア4.00)としました。
これにより、主観的幸福感が親切行動に与える影響を比較分析しました。
***
●測定項目1:「親切心」の強さ
・動機: 「私は日常生活の中で常に他人に親切でありたいと考えている」
・認識: 「私は日常生活で親切な行動をしていることを認識している」
・行動: 「私は毎日親切なことをし、他人を助けている」
※1 = 「全くそうではない」から5 = 「非常にそうである」で回答
●測定項目2:日本語版主観的幸福感尺度
・「私はとても幸福な人間だと思う」
・「自分の幸福度は同年代の人と比べてどうか」
・「一般的に幸福な人は人生を楽しみ、何事に対しても充実感を持っている」
・「一般的に不幸な人は、うつ病ではないが、幸福感が少ない」(逆転項目)
※ 1 = 「あまりそうではない」から7 = 「非常にそうである」で回答
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○結果
「幸福な人々」は、そうではない人に比べて、1)日常の幸せな体験がより多い、2)親切行動に対する動機、認識、行動が高いことが確認されました。
■研究2:「親切を数え上げる」と幸福感の関係
○目的
研究2では「親切行動の数え上げの介入が、「主観的幸福感に与える影響」を調べることを目的としています。
○方法
日本人女性119人を対象に、「1週間の親切行動の数え上げ」が「主観的幸福感」を向上させるかを検証しました。
具体的な研究のステップとしては、以下の通りです。
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1,参加者の分け方:
介入群(71名)と対照群(48名)に分け、介入群は「親切を数える」課題を行い、対照群は通常の生活を続けるよう指示しました。
学生が互いに課題内容を共有するのを避けるため、同じクラス内でランダムに割り当てず、異なるクラスに属する学生を介入群と対照群に割り当てました。
2,介入内容:
介入群の参加者には、毎日自分が行った親切な行動を意識するように指示し、その行動を1週間記録するよう求めました。
参加者は毎日「親切をした回数」を記録し、日々の振り返りとして、親切な行動を数えることで自分の行動への意識を高めることを目的としました。
3,主観的幸福感の測定タイミング:
主観的幸福感(JSHS)スコアは、「介入の1ヶ月前(ベースライン)」と「介入終了1ヶ月後(フォローアップ)」の2回にわたり測定されました。
4,追加測定項目:
また、介入終了後、介入群の参加者には以下の2点も評価しました。
*目標達成度: 介入中に親切行動の数え上げがどの程度達成できたか(1=「全く達成できなかった」〜5=「非常に達成できた」)。
*感謝の経験: 親切行動を通じてどの程度感謝の気持ちを経験したか(1=「全く経験しなかった」〜5=「非常に多く経験した」)。
***
○結果
「親切を数える介入」によって、介入群の参加者の主観的幸福感が向上したことがわかりました。
また、特に「幸福感の変化」が大きかったグループは、「親切行動の回数」と「感謝の経験」が多かったことも確認されました。
■考察
本論文の考察では、「なぜ親切が幸福感を増加させるのか?」についていくつか述べています。
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<考察:なぜ親切を数える行動が、幸福感を増加させるのか?>
1)ポジティブな感情の強化:
親切を数える行為がポジティブな感情を引き出し、拡張・構築理論に基づいてリソースの構築を促進する可能性がある。
2)感謝と幸福感の相互関係:
親切行動の認識が感謝を高め、幸福感向上のポジティブなスパイラルを生み出している。
3)モチベーションと自己認識の向上:
親切を数えることで自己認識と動機が高まり、「親切な人」としての自覚が幸福感を増加させる。
***
その詳細の因果やメカニズムは完全にはわからないものの、上記のような理由で、幸福感が高まったことが示唆されています。
■まとめと個人的感想
「親切を数える」というのは、実際になかなかそういった場面に遭遇しないこともあるもので、実はリアルにやってみようと思うと、ちょっとハードルが高いのかもしれません。
でも、たとえば「席を譲ってあげた」「扉をあけてあげた」「困っている人に声掛けをした」などを、日常的にやるようにして、親切行動の数を数えたとすると、「そんなことをしている自分のこと、スキ」と思えそうな気がします。
幸福感を数えるものには、「感謝日記(感謝をしたことを数える)」というものが有名ですが、それよりややハードルは高いものの、非常に有用なものの一つだと感じた次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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