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3902号 2024年10月31日

8週間で幸福度を高めるプログラム ーマインドフルネス×強みの実証研究ー

(本日のお話 2643文字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は、午前中に1件のアポイント。
午後からは、外部人事顧問として関わらせていただいている会社の、
コンサルティング&コーチングと勉強会が4件でした。

また、夜からは、仕事仲間との「グラフィックレコーディング」の勉強会など。
絵の力、楽しさを感じた次第です。

最近、子どもにルンバ(お掃除ロボット)の絵を書かされ続けているので、
なんとなく画力が上がった気がします(たぶん・・・)。



さて、本日のお話です。

本日は「ポジティブ心理学」×「強み」の論文の紹介です。

「マインドフルネス」という言葉は、よく知られるようになりましたが、ここに「性格の強み」をかけ合わせたプログラムを「Mindfulness-Based Strengths Practice (MBSP)」と呼びます。

このMBSP、つまり「性格の強みを強化する8週間のプログラム」が幸福度を高める事ができるのかを検証した初めての研究となります。
そして介入の結果、「MBSPにより、幸福度は高まった」となりました。

ということで、詳しい内容を見ていきたいと思います。それでは、まいりましょう!

――――――――――――――――――――――――――
<目次>
今回の論文
30秒でわかる本論文の概要
研究の方法
対象者
調査尺度
8週間のMBSPプログラム(介入方法)
結果わかったこと
まとめと個人的感想
――――――――――――――――――――――――――

==========================
<今回の論文>
A study investigating the effects of Mindfulness-Based Strengths Practice (MBSP) on wellbeing(マインドフルネスベースのストレングス実践(MBSP)が幸福感に与える影響に関する研究)
Itai Ivtzan, Charlie Briscoe
International Journal of Wellbeing, 2016年
==========================

■30秒でわかる本論文の概要
・この研究は、ポジティブ心理学の分野で新たに提唱された「Mindfulness-Based Strengths Practice (MBSP)」が、参加者の幸福感に及ぼす影響を検証することを目的としています。

・MBSPは、マインドフルネスとキャラクター強化(Character Strengths)という2つのポジティブ心理学のアプローチを統合した8週間のオンラインプログラムです。

・本研究では、一般成人の参加者がMBSPプログラムを通じて「幸福感」にどのような変化が見られるかを調査しました。参加者は実験群とコントロール群に分けられ、実施されました。

・結果として、実験群では「幸福度」に関連する全ての尺度で有意な向上が見られました。

という内容です。
一般向けに実施された初めての「Mindfulness-Based Strengths Practice (MBSP)」の実証研究であるというのが強調されており、興味深いところです。

■研究の方法
では、どのような方法で、どんな研究を実施したのか。
以下詳細を見ていきたいと思います。

○対象者
・18歳以上の成人(平均年齢 約50歳)、イギリス国内
・実験群:19名(MBSP(Mindfulness-Based Strengths Practice)を実施)
・コントロール群:20名(何も行わない)

○調査尺度
以下の4項目を介入前後で実施を行い、実験群・コントロール群で統計比較をしました。

1)Satisfaction With Life Scale (SWLS){Diener et al. (1985)}
・ 人生満足度尺度、生活全般の満足度を測定する5項目
2)Flourishing Scale (FS){Diener et al. (2009)}
・自己成長、関係性、生活の意義といった心理的な充実度を測定する8項目
3)Positive Psychotherapy Inventory (PPI){ Rashid (2008)}
・没頭感や充実感を含むエンゲージメントの度合いを測定する7項目
4)Signature Strengths Inventory (SSI){オリジナル尺度}
・シグネチャーストレングス(最も自己を表す強み)の日常での活用度を測定する4項目

○8週間のMBSPプログラム(介入方法)
そして、実験群に「Mindfulness-Based Strengths Practice (MBSP)」を行いました。その内容について、論文より以下まとめてみます。

(ここから)
―――――――――――――――――――――――――――――
<8週間のMBSPプログラム> 各2時間のセッション
●第1週 「初心者の心を学ぶ」:
・最初に「レーズン瞑想」(生まれて初めてレーズンを見るように興味深く観察し、五感に集中すること)でマインドフルネスの基礎を学びます。

●第2週 「性格の強みの理解」:
・VIAの性格の強みを使い、自己の強みを特定するワークを行い、個々の特性を発見します。

●第3週「彫像の瞑想」:
・障害を克服し、性格の強みを通して深い瞑想体験を得ることを目的とした「彫像の瞑想」を実施します。

●第4週「マインドフルウォーキング」:
・マインドフルネスを日常生活に取り入れ、強みを意識して歩く「マインドフルウォーキング」により、実生活での実践を学びました。

●第5週 「慈悲の瞑想」:
・慈悲の瞑想と強みの探求瞑想を通して、特定の「性格の強み」を瞑想に取り入れる方法を学びました。

●第6週 「強みの360度レビュー」:
・自己のシグネチャーストレングスを確認し、未発見の強みや改良すべき領域を明確化し、再構築の方法を学びました。

●第7週 「ベストな自己」:
・「最良の自己」」を想像するワークを行い、今後の目標設定にMBSPプログラムがどのように役立つかを確認しました。

●第8週「振り返りとシェア」:
プログラム全体の振り返りと自己成長の分かち合いを行い、学びを深めました。
―――――――――――――――――――――――――――――
(ここまで)

■結果わかったこと

さて、介入の結果、MBSP群の「幸福度」のすべての尺度に向上が見られました。より具体的には、

・人生満足度尺度(SWLS)は(中央値 28→30)と有意に向上
・Flourishing Scale (FS)は(中央値 49→51.5)と有意に向上
・Positive Psychotherapy Inventory (PPI)は(中央値 17→18)と有意に向上
・シグニチャーストレングス(SSI)は(中央値 17→18)と有意に向上

となりました。(コントロール群は、SWLS以外は変化が見られませんでした)。

■まとめと個人的感想

サンプルが小規模であること、長期的なデータが不足していることが本論文の限界ではありますが、MBSPの効果が実証された初めての研究ということで、興味深いものでした。

特に、これまでの論文でも紹介されていた「ベストな自己」「性格の強み」などのワークは想像がつきますが、「マインドフルウォーキング」や「彫像の瞑想」など興味深いものもあり、より具体的に調べてみたくなりました。

8週間×2時間でワークを行うことで、幸福度が高まるなら、悪くなさそうな気も個人的にはします。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

※本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。よろしければぜひご覧ください。

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