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3906号 2024年11月4日

ポジティブな共有とリアクションで結婚満足度アップ! ー550名を対象とした4つの実証研究ー

(本日のお話 4544文字/読了時間5分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日土曜日は、朝から22kmのランニング。
途中、大学院の仲間と一緒に走り、楽しい時間でした。
来月のフルマラソンに向けて、体重をあと4kg落としたいのですが、
甘いものが美味しすぎてなかなかできません・・・汗

また午後からは、家族で「花やしき」の遊園地でした。
入園料1200円と懐に優しい(4歳までは乗り物も無料!)であるのが嬉しかったです



さて、本日のお話です。

本日は「ポジティブ心理学」に関する論文のご紹介です。
「ポジティブな出来事を共有すること」が、関係性や幸福感において様々なメリットがあることを示した2004年の論文となります。

この論文を読んで、「もっとパートナー(妻)の話にも、意識して良いリアクションをしないといけないなあ・・・」と、反省させられた、非常に示唆に富む論文でした。

ということで、早速内容をみてまいりましょう!

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<目次>
今回の論文
30秒でわかる本論文の概要
「資本化」とは、ポジティブな出来事を共有すること
研究の概要
研究1:大学生に対する日記調査
研究2:カップルの関係性の質
研究3:既婚者への結婚満足度
研究4:大学生へのポジティブな出来事の記憶テスト
まとめと感想
――――――――――――――――――――――――

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<今回の論文>
What Do You Do When Things Go Right? The Intrapersonal and Interpersonal Benefits of Sharing Positive Events(良いことが起きたとき、あなたはどうするか?ポジティブな出来事を共有することによる個人内および対人のメリット)
Shelly L. Gable, Evan R. Asher
Journal of Personality and Social Psychology, 2004年
==========================

■30秒でわかる本論文の概要

・この研究は、「ポジティブな出来事を他者と共有すること(=資本化)」が個人内および対人関係に与える影響を調査しました。

・研究1では、ポジティブな出来事を共有することで、日常のポジティブな感情と幸福感が向上することが明らかになりました。

・研究2と3では、パートナーが「資本化」の試みに対して積極的・建設的に反応する場合、関係の質(親密さ、信頼感、満足度)が高まることが示されました。

・研究4では、ポジティブな出来事の共有が、ポジティブな出来事の記憶を強化し、幸福感の増加に貢献する可能性を確認しました。

・まとめると、「資本化」はポジティブな感情を活用し、人間関係を深める重要なプロセスであることが示されました。また、ポジティブな出来事を共有すること自体が幸福感を高めるだけでなく、相手の応答がその効果を決定的にすることも明らかになりました、

という内容です。

なるほど、4つの研究すべてにおいて、ポジティブな感情を共有することが重要だと示されたとのこと、実に説得力があります。

■「資本化」とは、ポジティブな出来事を共有すること

さて、本論文でのキーワードが「資本化」(capitalization)です。

「資本化」とは、”個人が自身のポジティブな出来事を他者に伝えることで、その出来事からさらなる利益を引き出すプロセス”のことです。

資本化行動は、ポジティブな出来事が単に起こっただけで終わるのではなく、他者との共有を通じて感情的・社会的な利益を拡大するとします。
そして、この行動により、ポジティブな出来事が再確認され、ポジティブ感情が増幅され、共有者自身の幸福感が高まる結果につながる、とされています。

本論文では、PRCA (Perceived Responses to Capitalization Attempts) Scaleという資本化行動の応答を測定するためにオリジナルで尺度を開発しました。そして、「ポジティブな出来事を共有する際の相手の反応の質」を以下の4つのタイプに分類しました。

――――――――――――――――――――――――――
<ポジティブな出来事を共有する際の相手の反応の質の4分類>
1,積極的・建設的応答:
共有者のポジティブな出来事に対して、熱心かつ好意的に反応し、興味を示し、共有者の気持ちを深めるような質問をしたり、共感的な態度を示したりします。
(妻例: 「素晴らしい!その結果を得るためにあなたはたくさん努力したんだね!」)
2,受動的・建設的応答:
積極的ではないが肯定的な反応を示す。反応が控えめであっても、ポジティブな関心を示し、共有者を支持します。
(例: 「いいね、それはすごい。」)
3,積極的・破壊的応答:
表面的には熱心に見えるが、ポジティブな出来事に対して否定的な視点や潜在的な問題を指摘するなど、共有者の気持ちを損なうような反応。
(例: 「でも、その成功が次の責任を重くしないといいけどね。」)
4,受動的・破壊的応答:
共有された出来事に対して無関心、もしくは話題を変えるような反応で、共有者の幸福感を損ないます。
(例: 「へえ、そうなんだ。」(すぐに別の話題に移る))
――――――――――――――――――――――――――

後述しますが、研究結果では、「1、積極的・建設的応答」が、個人の幸福感と関係性を高めることを示しました。

■研究の概要
さて、ではこれらの「ポジティブな出来事を共有する効果」をどのように調査をしたのでしょうか。本論文では、合計約550名を対象とした、4つの研究が示されています。
以下、それぞれの研究の内容と結果をまとめます。

***
○研究1:大学生に対する日記調査
●対象者:
154名の大学生(男性56名、女性98名、年齢17〜26歳、平均19.7歳)

●研究モデル:
被験者は1週間の日記調査を行い、毎日その日の最も重要なポジティブおよびネガティブな出来事を記録し、他者とポジティブな出来事を共有したかどうかを報告。

●測定尺度
*感情測定: Positive and Negative Affect Schedule (PANAS)を使用し、日々のポジティブ感情(PA)とネガティブ感情(NA)を測定。
*生活満足度: Dienerの5項目のSatisfaction With Life Scaleを使用。

●ポジティブな出来事の共有方法:
参加者は、友人や家族、恋人などの身近な人にポジティブな出来事を共有し、それが感情に与える影響を評価しました。

●結果:
・ポジティブな出来事を共有した日は、PA(ポジティブ感情)と生活満足度が有意に高くなり、NA(ネガティブ感情)には影響が見られなかった。
・資本化は、ポジティブな出来事自体の重要性やネガティブな出来事のストレスレベルを制御した後も、独立した予測因子であることが示された。

***
○研究2:カップルの関係性の質
●対象者:
最低3か月以上交際している59組の異性愛者カップル

●研究モデル:
カップルは独立してアンケートに回答し、パートナーがポジティブな出来事の共有に対してどのように反応するかを評価。

●測定尺度:
*ポジティブな出来事を共有する際の相手の反応の質:Perceived Responses to Capitalization Attempts (PRCA) Scaleを使用し、積極的・建設的、受動的・建設的、積極的・破壊的、受動的・破壊的な反応を評価。
*関係の質(Commitment Scale): 7項目で構成され、関係へのコミットメントを測定。
*Relationship Assessment Scale (RAS): パートナーがニーズを満たしているかなどを評価する7項目の尺度。
*Trust Scale: 26項目で、信頼(信念、信頼性、予測可能性)を評価。
*PAIR Intimacy Scale: 社会的、感情的、知的、レクリエーションの4つの親密度を測定する24項目。

●ポジティブな出来事の共有方法:
参加者はパートナーにポジティブな出来事を伝えることで「資本化」を行い、その反応を観察した。

●結果:
・積極的・建設的な反応は「関係の質」と正の相関を持ち、受動的・破壊的な反応は関係に負の影響を与えた。

***
○研究3:既婚者への結婚満足度
●対象者:
ロチェスター在住の89組の既婚カップル(年齢平均38.1歳、結婚期間平均10.1年)

●研究モデル:
被験者は2週間にわたり日記形式で日々のポジティブな出来事、パートナーとの活動、葛藤の有無を記録。初回のアンケートで関係満足度を測定し、資本化の応答と関係の質の関連を評価。

●測定尺度:
*ポジティブな出来事を共有する際の相手の反応の質:研究2と同様。
*全体的な結婚満足度: 5項目のQuality Marriage Index (QMI)を使用し、関係全体の満足度を評価。
*親密度: PAIR Intimacy Scaleを使用。
*日次測定: 日次の結婚満足度を1項目で測定。

●ポジティブな出来事の共有方法:
結婚相手との日常会話を通じてポジティブな出来事を共有し、パートナーがどのように反応したかを分析した。

●結果:
・積極的な応答が関係満足度を高め、受動的・破壊的な応答は関係に負の影響を与えることが確認された。
・パートナーが積極的・建設的な応答を示す場合、結婚満足度(QMI)での全体的な満足度と、日次満足度の両方で「資本化」の影響が確認された。具体的には、こうした応答がパートナー間の関係にポジティブな感情を生み出し、親密さや信頼感が向上することを示した。

***
○研究4:大学生へのポジティブな出来事の記憶テスト
●対象者:
99名の大学生(男性19名、女性75名、年齢17〜49歳)

●研究モデル:
参加者は10日間の間、毎日最も重要なポジティブな出来事を記録し、誰に共有したかを報告。最後にポジティブな出来事とネガティブな出来事の記憶テストを実施。

●測定尺度:
*感情測定: PANASを使用してPAとNAを測定。
*生活満足度: DienerのSatisfaction With Life Scaleを使用。
*記憶テスト: ポジティブおよびネガティブな出来事のリストアップによる記憶評価。

●ポジティブな出来事の共有方法:
参加者は、友人や家族、恋人などに日々のポジティブな出来事を共有し、その中で最初に話した相手の反応が分析された。

●結果:
・ポジティブな出来事を共有した日は、PAと生活満足度が高かった。
・積極的な応答を受けた場合、さらに幸福感が増加した。また、共有された出来事は記憶に残りやすいことが示された。

■まとめと感想

「ポジティブな話を共有して何かいいことあるの?」ということについて、個人の幸福感の向上があることはある意味想像していましたが、「共有された時の相手のリアクションが重要」というのは、非常にハッとさせられました。

強みの研修でも、相手の強みやポジティブストーリーに対して、「素晴らしいですね!」という対応で接すると、両者の関係にあたたかい雰囲気が生まれることは感じていましたが、そのことが証明されるような研究だと感じました。

また、夫婦関係でも、ポジティブなストーリーの共有があったときに「へー、そうなんだ・・・(受動的反応)」をすると、「日々の満足度」や「親密度」が有意に低下することは、胸に刻まねば・・・と思ったのでした(反省)。
ちなみに、この結果は、女性のみ有意差があり,男性はそうでもないというところにすれ違う理由があるとも感じます。

ポジティブな共有をすること、そしてその共有に対して、「よかったね!」と積極的・建設的な反応をすること。
シンプルですが、結婚満足度はじめ、関係性や親密度を高めるために,大事なのでポイントだと感じた次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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