おすすめの一冊『50代からの幸せな働き方――働きがいを自ら高める「ジョブ・クラフティング」という技法』
(本日のお話 3750文字/読了時間5分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日土曜日は7kmのランニング。
また昼からは茨城の妻の実家に移動して、お仕事など。
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さて、本日のお話です。
毎週日曜日は、おすすめの一冊をご紹介するコーナー。
本日の一冊は、”仕事にひと匙加えて、仕事を前向きで楽しいものにする”という概念を示した「ジョブ・クラフティング」の本です。
著書の高尾先生は、この道の第一人者の研究者ですが、本書はその概念を「50代のミドル・シニア層」を主に対象として書かれた実用書です。
「そもそもジョブ・クラフティングとはなにか」という理論的な説明から、「具体的にどうすればジョブ・クラフティングができるのか」という実践まで、とてもわかりやすく書かれている名著だと感じました。
ということで、早速見てまいりましょう!
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<今週の一冊>
『50代からの幸せな働き方――働きがいを自ら高める「ジョブ・クラフティング」という技法』
高尾 義明 (著)/ダイヤモンド社
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<目次>
ミドル・シニア層の「ジョブ・クラフティング」の実践書
理論と実践のバランスが魅力
学びになったポイント
やりやすいジョブ・クラフティング
目標テンプレート・フォーマット
ジョブ・クラフティング・エクササイズ
まとめと感想
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■ミドル・シニア層の「ジョブ・クラフティング」の実践書
50代のミドル・シニア層は、多くの変化があります。役職定年を迎え、元部下だった人が上司となる、ほとんどの人がキャリアに先が見えた状態となる、仕事の範囲がぐっと狭まり、また給与も下がる・・・などなど。
これらの要因は、「仕事のやりがい(エンゲージメント)」や「モチベーション」などを下げる要因となるものです。当事者も、それらの状況を受け止めて、前向きに働きたいと思いつつも、どう対応すればよいのかという処方箋は見つからない・・・。
そんな中で示される一つの解決策が、「ジョブ・クラフティング」です。そして、これは”働きがいを自ら高める技法"として、あらゆる人に適用できる概念として、これまで研究されてきました。
そして本書は、この研究領域の第一人者が、「50代のミドル・シニア層」を取り巻く状況を想定した上で、具体的な実践書として記述した書籍となります。本書の説明として、以下のように記述されています。
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役職定年や本意ではない異動、仕事へのやらされ感に悩むミドル・シニア。幸せな仕事人生を過ごすために有効な仕事術が「ジョブ・クラフティング」だ。第一人者による入門書の決定版。ミドル・シニア向け研修用テキストとしても最適。
※Amazon本の紹介より
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■理論と実践のバランスが魅力
では、具体的に本書の内容は、どのようになっているのでしょうか。
前半の第1章で「ジョブ・クラフティングとはなにか」をその定義を含めて説明し、第2章ではジョブ・クラフティングを実践するために重要なマインドセットについて述べています。
第3章、第4章では、「具体的な実践方法」が紹介されます。実際の職場では、どのようにジョブ・クラフティングを行うのか、そのおすすめの事例も含めて紹介されています。概念的な内容が、ミドル・シニアの現状に即した具体案として、ぐっとイメージがしやすくなります。
第5章は、「ジョブ・クラフティングを行う際の注意点」について説明されます。何事も適量が重要であるため、”やりすぎ”になると周りが困惑する可能性や、職場の一員として、どのように周りと関わりながら、ジョブ・クラフティングを行うのか説明されます。
第6章では、定年も見据えたジョブ・クラフティングとして、加齢による変化や、定年後のためにどのように人生全体を幸福にするために、”どうひと匙加える”のかを提案します。第7章では、ジョブ・クラフティングを促進するために、上司や職場がどのように支援をするのかが語られています。
以下、本書の章立てについて、ご紹介いたします。
(ここから)
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第1章 ジョブ・クラフティングの基礎
1,ジョブ・クラフティングとは
2,ジョブ・クラフティングの形成
(業務・関係性・認知的クラフティング)
3,ジョブ・クラフティングが注目されるのはなぜか
(エンゲージメントの向上、仕事のミスフィット感を小さくする)
第2章 ジョブ・クラフティング・マインドセット
1,ジョブ・クラフティング・マインドセットの重要性
(しなやかマインドセットが重要)
2,自分のひと匙の探し方
第3章 最初の一歩を踏み出し、習慣化を図る
1,ジョブ・クラフティングの第一歩を踏み出す
(ジョブ・クラフティングのおすすめ方法)
2、拡張と縮小を組み合わせる
3,習慣化を図る
第4章 業務全体を俯瞰する
1,ジョブ・クラフティング・エクササイズとエネルギー・マッピング
2,「ジョブ・エナジー」エクササイズ
第5章 ジョブ・クラフティングを継続・発展させる
1,変化のときこそジョブ・クラフティング
2,やりすぎに注意する
3,周りの理解を得る
4,ジョブ・クラフティングの発展のための方策
第6章 定年も見据えたジョブ・クラフティングの方策
1,加齢による変化
2,定年後を見据える
3,仕事以外でクラフティングする
4,対談
第7章 職場や組織からのサポート
1,組織にとってジョブ・クラフティングを支援する意義
2,ジョブ・クラフティングの実践を左右する要因
3,ミドル・シニア層への上司の支援
4,組織による支援
※本書の目次欄より引用。( )内は著者より補足
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(ここまで)
■学びになったポイント
以下、特に私が印象に残った学びポイントをまとめてみたいと思います。
○やりやすいジョブ・クラフティング
第3章の「ジョブ・クラフティングの第一歩を踏み出す」では、業務クラフティング、関係性クラフティング、認知的クラフティングのそれぞれについて、事例が紹介されていました。たとえば、以下のようなものです。
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●業務クラフティング:自分で決められる事から始める
・業務の順番を変える(朝の仕事で、何から始めるかを変える)
・雑用を積極的に引き受ける(信頼を獲得できる)
●関係性クラフティング:近くからでも遠くからでも
・周りの人の「呼称」を変える(○○くん→○○さん)
・誰に対しても感謝を示す(部下には、やってもらって当たり前だったと思ったことも「ありがとう」と伝える)
●認知的クラフティング:ミクロとマクロの視点から手がかりを探す
・ミクロ視点(「半径3メートルの世界」で、自分の仕事が誰の役に立っているかを考える)
・マクロ視点(経営理念との関わりから仕事を俯瞰する)
・注意点:過去の自分や他の人の仕事と比較しないこと(以前の職場のほうが、同期のほうが・・・とは考えないように視点を変える)
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これらは、決して50代のミドル・シニア層だけではなく、新入社員でも中堅でも、同じように言えることだと思います。
ジョブ・クラフティングで大事なのは、「自分が変化を与えた」ということです。この認知的な変化があることで、エンゲージメントやミスフィット感を減らすことができるので、どんな小さなことでもOKとしています。
○目標テンプレート・フォーマット
また、本書では、ものすごく実践的なワークが魅力です。この書籍通り行ったら、一つの研修プログラムになるような濃厚なものだと感じます。
例えば、第3章の「目標テンプレート・フォーマット」では、自分がジョブ・クラフティングをやるべき理由を整理したり、始めるためのトリガーを具体的に考えるための方法を、心理学・行動画角の知見を踏まえて作成したものが紹介されています。
また習慣化のためのテクニックとして、「始めるタイミングを選ぶ」(『フレッシュスタート効果』=過去と決別を象徴するような日{年初、誕生日、週始めなど}に始める)や、
「記録を取る」(例:レコーディングダイエット)や、「他者を巻き込む」(事前コミットメントで自分を縛る)などの方法も紹介されています。
○ジョブ・クラフティング・エクササイズ
第4章では、「ジョブ・クラフティング・エクササイズ」という、自分の持ち味(強み・興味・価値観)と業務を関連付け、業務にかけるエネルギーを可視化し、ジョブ・クラフティングの方向性を探る方法が紹介されています。
これも論文を元にした方法で、理論的背景もありつつ、実践イメージができる魅力的なワークだと感じさせられました。
その他にも、「エネルギー・マッピング」でジョブ・クラフティングを自分のエネルギーが高まるものにしていく方法や、
お互いに強みのフィードバックを伝え合う「強み発見ワーク」、また価値観を発見する「価値観カードを用いた自分の価値観の内省」など、
魅力的なワークがたくさん紹介されており、読んでいてワクワクしてしまいました。どれも、使ってみたい・・・。
■まとめと感想
以前、高尾先生による専門書である『ジョブ・クラフティング』を読ませていただき、概念を精緻に理解することができました。
その上で、本書の「実践的な内容」に触れて、ジョブ・クラフティングの理解が更に深まったように感じます。入門書とありますが、ジョブ・クラフティングの理論や考え方を、シンプルかつわかりやすく理解でき、また職場に落とし込むことができる、文章量以上に濃厚な一冊だと感じた次第です。
50代だけではなく、多くの方におすすめしたい一冊だと感じました。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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