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3913号 2024年11月11日

共感を示したいならゆっくり話そう ー論文レビュー「The Power of Speaking Slower」ー

(本日のお話 2070文字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は、終日、妻の実家の茨城でした。
午前中は自宅にてリモートワークで、お仕事をしつつ、午後からは子どもと公園で駆け回っておりました。
だいぶ寒くなって、冬の訪れを感じつつある今日この頃。
体調は十分気を付けてまいりましょう!



さて、本日のお話です。

今月号の「ハーバード・ビジネス・レビュー」の記事に、『共感を示したいならゆっくり話そう』という論文の紹介がありました。

タイトルの通り「話すスピードによって、相手が共感してもらえているかが変わる」といった論文です。共感だけでなく、顧客満足度や信頼も高まるという、興味深い内容です。

今日はその記事の元論文を読んでみたので、その内容についてご紹介さいたします。実用的で、面白い内容でした。

それでは早速まいりましょう!

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<目次>
今回の論文
30秒でわかる本論文の概要
研究の内容
参加者
分析方法
結果
わかったこと1:「ゆっくり話すことで顧客満足度が上がる」
わかったこと2:「共感を伝える手段としての話速」
わかったこと3:「他の要因との関係性」
まとめと感想
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<今回の論文>
『The Power of Speaking Slower』(話す速度をゆっくりにする力)
Jonah A. Berger University of Pennsylvania
SSRN, September 23, 2023(査読前論文)
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■30秒でわかる本論文の概要

言葉遣いを工夫することで、顧客は話し手の配慮や自信を感じることがこれまでの研究で示されている。たとえば、サービス担当者は「私たち→私」というと顧客満足度が高まり、「できません→しません」と言い換えると説得力が高まる。

本研究では「何を話すかだけではなく、どのように話すか(話す速度)が重要である」ことがわかった。

具体的には、ゆっくり話すことで、話し手の共感が顧客に伝わりやすくなることがわかった。顧客は、相手が自分に時間を割いてくれていると感じることで顧客満足度が高まり。特に丁寧な話し方が「尊重されている」という印象を与えた。

また、話速が遅いほど「理解されている」と感じ、満足度が上がった。調査データでは、話速を少し落とすだけで顧客の評価が向上する傾向が確認された。

これらのことから、適度な話速調整はカスタマーサービス、医療、教育などでのコミュニケーションに役立つと考えられる。話速を工夫するだけで、多様な分野でより良い関係性を築ける可能性が示唆された。顧客対応においても好意的な印象を作る要素となる。

***

との内容です。なるほど、「ゆっくり話すことが、顧客満足度を高め、共感も感じてもらえる」という非常にシンプルな話ですが、ゆえに実用的でもあると感じます。

■研究の内容
以下、論文についてより、詳しい研究の内容をご紹介いたします。

○参加者
研究では、「顧客対応データ」と「実験」の二つの視点からアプローチしました。
1)「顧客対応データ」の分析:
ある大手オンライン小売会社と協力し、約200件の顧客対応の電話録音を分析。話速や対応の評価は企業がもともと行っている顧客満足度評価を活用しました。
2)「実験」による調査:
参加者に異なる話速での対応の録音を聞いてもらい、それぞれの印象や満足度をスコアで評価してもらいました。

○分析方法
1)の顧客対応データ分析では、音声解析により、話速の検出と測定を行いました。録音内の発話を1秒間あたりの音節数に基づいて算出し、速いか遅いかの話速を数値で明らかにしました。
そして、得られた話速のデータと顧客満足度との関係を統計的に分析し、話速が満足度に与えるインパクトを検証しました。

2)の実験では、話速をわざと速めたり遅めたりし、参加者の満足度や共感度がどう変化するかを測定する方法をとりました。

■結果
上記研究から以下のことがわかりました。

○わかったこと1:「ゆっくり話すことで顧客満足度が上がる」
話速を落とすことで、話し手が顧客のニーズを理解しようとしていると感じてもらいやすくなります。データによると、話速が1標準偏差遅い場合、顧客満足度が約7.1%増加する傾向がありました。単に話速を調整するだけで、顧客に「自分が尊重されている」と感じさせるのは興味深いです。

○わかったこと2:「共感を伝える手段としての話速」
話速が、話し手の気持ちをどのくらい相手に伝えられるかに影響する要素であることが判明しました。
特に対話が必要な状況では、少しゆっくり話すことで「相手の話をしっかりと聞こうとしている」印象が伝わりやすくなることが確認されています。
早口すぎると焦りが伝わり、逆に信頼関係の形成が難しくなることもあるようです。

○わかったこと3:「他の要因との関係性」
この研究では、話速だけでなく、ピッチや声量、話の間の取り方も一緒に検証しましたが、話速の影響は独立して顧客満足に結びつくことがわかりました。
なお、話速が遅すぎると今度は「自信がない」と見なされることもあるため、適切なスピードで話すことが大切だということも分かりました。

話すスピードがゆっくりだと、顧客満足度・共感・説明の満足度・能力・信頼が高まる

■まとめと感想
本論文と関係ないのですが、ハーバードビジネスレビューのミニコラムのような論文は、でき立てホヤホヤ(?)の査読前の論文であることも少なくないと感じました。

実際に、正しさの検証がどれくらいされているか、も大事ですが、興味深い研究結果をいち早く世にお届けするというのも、有用なことなのだろうな、などと感じた次第です。日々色んな研究がされているんだなあ、と興味深く感じました。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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