メールマガジン バックナンバー

3940号 2024年12月8日

おすすめの一冊『insight(インサイト)――いまの自分を正しく知り、仕事と人生を劇的に変える自己認識の力』その1~

(本日のお話 3954字/読了時間5分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日土曜日は、「意図的変革理論」というケースウェスタン大学でも教えられている、コーチングの勉強会の最終回でした。

コーチングにも様々な流派がありますが、自分の中で最もフィット感がありました。
個人向けのコーチングでは、あまり価値を提供できない、と思っていたこの頃でしたが、この内容であれば、きちんと費用対効果に見合うものを提供できそう・・・!と思った内容でした。



さて、本日のお話です。

毎週日曜日は、おすすめの1冊をご紹介する「今週の一冊」のコーナーです。今回ご紹介するのは「自己認識」をテーマにしたこちらの書籍です。

「自分を知る」という、自己認識の世界の解像度を高めてくれるすばらしい本です。骨太の本なので、第1~4部で分割してお伝えしたいと思います。

それでは、早速みてまいりましょう。

==========================
<今週の一冊>
『insight(インサイト)――いまの自分を正しく知り、仕事と人生を劇的に変える自己認識の力』
ターシャ・ユーリック (著), 中竹竜二 (著), 樋口武志 (翻訳)/英知出版
==========================

■「自己認識」の世界を旅する一冊

「自己認識は重要である」。

こんな話を耳にしたことがある人は、少なくないと思います。私が学んだ大学院でも、何度も繰り返し言われてきました。しかし、深く広く、とらえどころがなく、誤解も生まれやすい。

この自己認識の世界について長年研究してきたのが、本書の著者であるターシャ・ユーリック氏です。

組織心理学者であり、研究者である彼女は、自己認識にまつわる膨大な論文・文献を読み、多くの研究に精通をしています。
かつ、世界の著名な人々の中で、「この人たちは自己認識がすごい!」と思う人を、数千人の中から50人をピックアップしました。そして彼/彼女らを『自己認識ユニコーン」と名付けインタビューしました。

こうして「自己認識」の世界を、現時点でわかっている研究データと、数多くの著名人のインタビュー調査をもとに、解き明かしたのが本書です。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
本書は、自分を知らない状態から一歩抜け出し、自分に対するインサイトを得て、より賢明な選択をし、より強固な関係を育み、そしてより良い人生にしたいと願うすべての人に向けた本だ。
P31
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

自己認識にまつわるありがちな誤解を解き、どのようにすれば正しく自己認識ができるのかを、紐解いており、読む中で多くの発見があります。実に、興奮します。

まさに、「自己認識の世界」を旅する一冊、と言えるでしょう。

■本書の構成 ー目次のご紹介ー

さて、本書は4部構成となっています。

第1部:「自己認識にとっての必須要素や妨害要素」について

第2部:「内的自己認識」に焦点を当て、自己認識にまつわる迷信や誤解を解き明かし、何が内的自己認識を高めるのかを語る

第3部:「外的自己認識」に焦点を当て、最大の誤解やフィードバックにおける忖度の難しさと、それに対する対処法を説明

第4部:「優れたリーダーがどのように自己認識を成長させているか」という視点で自己認識を見ていく

という形です。以下、目次の全文をご紹します。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<目次>
第1章 二一世紀のメタスキル

<第1部 基礎と障壁>
第2章 自己認識の解剖学―インサイトを支える七つの柱
・インサイトの七つの柱
・内から外、外から内へ―外的自己認識の重要性
第3章 ブラインドスポット―インサイトを妨げる目に見えない心の中の障壁
・スティーヴ病の蔓延
・三つの盲点
・勇敢かつ賢く―見えない状態から見える状態(インサイト)へ
第4章 自分教というカルト―インサイトを阻む恐ろしい社会的障壁
・潮流の変化―努力から自尊へ
・私、ワタシ、わたし(のセルフィー)
・自己陶酔から自己認識へ―自分教に抗う
・リーダーシップ・コーチング

<第2部 内的自己認識―迷信と真実>
第5章 「考える」=「知る」ではない―内省をめぐる四つの間違った考え
・間違った考え1―南京錠のかかった地下室という迷信
・間違った考え2―なぜか「なぜ」を考える
・間違った考え3―日記をつける
・間違った考え4―内省の双子の悪魔
第6章 本当に活用可能な内的自己認識ツール
・瞑想抜きのマインドフルネス
・人生の物語―星を眺めるだけではなく、星座表を作る
・ソリューション・マイニング―問題から成長へ

<第3部 外的自己認識―迷信と真実>
第7章 めったに耳にしない真実―鏡からプリズムへ
・マム効果(あるいはグレン・レスターに何も知らせない理由)
・現実逃避の三本柱
・360度評価
・適切なフィードバック
・真実のディナー
第8章 予想外の厳しいフィードバックを受け止め、向き合い、行動に移す
・自己肯定―スチュアート・スモーリーを越えて
・人の一部としての欠陥―変化が必要でないとき

<第4部 より広い視点>
第9章 リーダーがチームと組織の自己認識を高める方法
・要素1―手本を示すリーダー
・手本を示す―リーダー・フィードバック・プロセス
・要素2―真実を告げる安全性(および期待)
・要素3―継続的な努力と自己認識を持ち続けるプロセス
・継続的なチームの自己認識に向けた取り組み―率直チャレンジ
・自己認識を持つチームから、自己認識を持つ組織へ
第10章 思い込みにとらわれた世界で生き抜き成長する
・変えられない部分を受け入れ、変えられる部分を変える(あるいはマリアのような問題を解決する方法)
・少しの自己認識では足りないとき
・思い込みにとらわれた人間がハイビームの合図を読み取るサポートをする
・生涯をかけての旅と、所々しか光っていない斧
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

■第一部 自己認識の基礎

ちなみに、「自己認識」とは、”自分自身と、他人からどう見られているかを理解しようとする意志とスキル”、と本書では定義されていますす。

では、ここから「第一部 自己認識の基礎」から、ポイントをご紹介したいと思います。

◎インサイトの7つの柱

ではそんな「自己認識(インサイト)」を高めるために、どのような方法があるのか?
「自己認識」を解剖したときに、どのような要素にわけられるのかを「インサイトの7つの柱」として紹介しています。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<インサイトの7つの柱>
1.価値観:
自分が送りたい人生のガイドとなる行動指針を育むこと。価値観は、なりたい自分を形作り、自身の行動を測るものさしとなる。
2.情熱:
自分が”愛を持って行うもの”を理解すること。永遠に噛み続けられる骨はなにか。(例:物が動く仕組みに対する好奇心を持っているなど)
3.願望:
「本当は人生に何を求めている?」という問いから見えるように、自らをやる気で満たしてくれるもの。何を経験し、成し遂げたいかを理解することで、よりよい生活を送ることができる。
4.環境:
自分がフィットする場所、自分が幸せで存分に力を尽くせる環境を見つけること。「自分のエネルギー」を生む環境が何かを知ること。
5.パターン:
あらゆる状況で見られる思考や、感情や、行動の一貫したパターンのこと。大半のシチュエーションで自分は何を考え、どう感じ、何をしがちなのかを知ること。(例:慎重になりやすい、など)
6.リアクション:
自分自身のリアクション(自分の力量を測る思考・感情・行動)を知ること。(例:感情をコントロールする力があるorない)
7.インパクト:
自分の行動が周りへどう影響を与えるかを知ること。周りへのインパクトについて、他人の「視点取得」をすること。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

◎内的自己認識と外的自己認識

自己認識には、2つの側面があります。それが、「内的自己認識(自分から見た自分像)」と「外的自己認識(他者から見た自分像)」です。そして、両者をバランスよく捉えることが、自己認識において重要と述べます。

ただし、自己認識をめぐる大きな間違いは「ひたすら自分の内側を見つめればいい」という考えであると述べます。

「内的自己認識」では、自分の「価値観」「情熱」「願望」「フィット」など”周りから見えないもの”を見つけることができ、「外的自己認識」では、自分の「パターン」「リアクション」『インパクト」など”周りから見えやすい”ものを見つけることができます。

重要なのは、「内側と外側の両方の視点を持つ」ことなのです。

◎自分のことは自分で見えない

しかし、実際に頭でわかっていても、「自分のことは自分で見えない」ものです。行動経済学者でノーベル賞受賞者のダニエル・カーネマンは「自分の無知を棚に上げることにかけて、私たちは、ほとんど無限の能力を持つ」と言いました。

ゆえに、”自分を実際の能力以上に考えてしまう”ことを「ダニング・クルーガー効果」と呼びますし、逆に”自分は取るに足らない”と謙虚すぎる視点で捉えることを「インポスター症候群」と呼ぶ、など、自己認識は多くの錯覚が生まれるそうです。

しかし、職場で従業員が自己認識を欠いていると、チームのパフォーマンスが下がり、平均36%の判断の質が低下し、46%協調性が低くなり、30%衝突が増す(P79)という研究があるそうです。

▽▽▽

そして、自分が見えなくなる理由として3つの盲点として、イ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<自分が見なくなる3つの盲点>
1.「認識」の盲点
本当は知らないのに「知っている」と思ってしまうこと。自分の技術や才能に対して、自信過剰になることがある。
2.「感情」の盲点
自分自身の「感じ方」を捻じ曲げてしまうこと。(例:「人生の幸福度はどれくらい高いですか?」という質問も、複雑なので「今の気分」で答えるなどをしがちである)
3.「行動」の盲点
自分自身がどのように「ふるまっているか」を観察できない。スピーチでのノンバーバルコミュニケーション、喋り方など、他人のように見つめることができない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

■まとめと感想

インサイトの7つの柱、が特に興味深かったです。

たしかに、価値観、情熱、願望などは、自分でしかわからず、リアクションやパターンは他者からの視点が必要。この7つの柱のそれぞれを深めるだけでも、かなり自分のことを理解できるようになりそう・・・!と思いました。

また、「インサイトの7つの柱」を探求するための質問である「巻末付録」なども用意されており、これは使えそう・・・!(研修などでも)と嬉しくなりました。

それでは、また続きは明日以降に続けたいと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました!

※本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。よろしければぜひご覧ください。

<noteの記事はこちら>

365日日刊。学びと挑戦をするみなさまに、背中を押すメルマガお届け中。

  • 人材育成に関する情報
  • 参考になる本のご紹介
  • 人事交流会などのイベント案内

メルマガを登録する

キーワードから探す
カテゴリーから探す
配信月から探す