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3949号 2024年12月17日

思い込みにとらわれた人間の3パターンと対処法 ~読書レビュー『Insight』その6~

(本日のお話 3191字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は、2件の組織分析インタビューの実施でした。
沖縄ウルトラマラソン100kmから一夜明けましたが、
その当日は興奮状態で眠れませんが、翌々日は泥のように眠ることができ、
体もだいぶ回復いたしました。

今週も研修が3本続くので、頑張りたいと思います!



さて、本日のお話です。

「自分を知る」ことをテーマにした、自己認識の世界の解像度を高めてくれる書籍『Insight』。本日も引き続き、紹介させていただきます。今回で最終回となります。

本日は、第10章「思い込みにとらわれた世界で生き抜き成長する」のレビューです。具体的で、たいへん勉強になりました。

それでは、早速まいりましょう!

■思い込みにとらわれた人間の3パターン

職場において、「自己認識に欠けた人」は存在するものです。

たとえば、本人と異なる意見を言うと、超攻撃的に反論をする人。
それによって同僚は萎縮し、口を紡いでしまい、誰もその人と仕事をしたくないと思っている。また、チーム全体の士気も下がっている。
しかし、本人は全く自分の行動の影響力を自覚していない・・・。

こんなな状況です(こういうの、ありますよね)。

では、こうした人に「耳の痛いフィードバック」を伝えること(=外的自己認識を高める介入をする)によって、本当に「他者の自己認識を高める」ことはできるのでしょうか?

・・・結論からすると「できる場合とできない場合がある」。
思い込みにとらわれた人間は3パターンいるとのことですが、特に2パターンでは必ずしもフィードバックが通用しないとのこと。

以下、3つのパターンを本書から引用しつつ、整理します。

◎パターン1:「無駄骨タイプ」

無駄骨タイプは、『変えられない人」の典型例です。
自己認識を向上させる意志はなく、自分自身を無意識に守っているような側面もあると言います。
よって、どんなフィードバックがあっても「そういうけど、自分はそうは思わない」で終わってしまうこともままあるよう。以下、特徴を引用します。

(ここから)
―――――――――――――――――――――――
自分こそ正しいのだという、怒りの混じった、揺るぎない熱い気持ちで思い込みにとらわれている。自分の考え以外の選択肢を考えられない(あるいは考えようとしない)(中略)。
無駄骨タイプは、自分が限りなく完璧に近いと思っているため、自分に改善の余地があるかも知れないと考えることはほとんどない。
無駄骨タイプの利益に訴えることで(「その行動はあなたの評判を落としているよ」などということ)でフィードバックに耳を貸してくれるときもあるだろうが、基本的に相手の自己像を揺るがす試みは無駄に終わる
P366
―――――――――――――――――――――――
(ここまで)

では、このタイプに出会った時にどうするとよいのでしょうか?

ひどいやつだと否定するのは簡単ですが、自分自身の気持ちの上でも、対処方法を考えたいところです。本書では3つの方法を提案しています。
―――
<『無駄骨タイプ」への対策方法>
1)「断罪することなき思いやりの精神」を持つ:
その人は、自分と別の道を走っているのだと思う。それぞれの人生の旅路、テーマが違うと思うことで、溜飲を下げます。

2)「無抵抗に流されるように切り抜ける」こと:
あまりに強大な流れの中では、抵抗しても沈むだけです。急流から水面に出るには、流れに身を任せること。流れの渦が過ぎ去るのを待ちましょう。

3)「リフレーミング」を行う:
リフレーミングとは、マインドフルネスの方法で「この人から学ぶことはないか」と思考を捉え直す方法です。(例:もしかしたら・・・は、~~~なことを教えてくれていたのかもしれない)
―――
ある意味、「あきらめる」ということかもしれません。仏教用語でのあきらめるは「明らかにそういうものであると認める」と意味すると聞いたことがありますが、そんなイメージなのかもしれませんね。



◎パターン2:「わかっているが気にしないタイプ」

次のこのパターンも「変えられない人」の例です。

本書では事例としてあるCEOが紹介されていました。「恐怖政治」的なものでメンバーを抑圧しており、本人はそれがもたらすメリットもデメリットもわかっている。

しかし、彼の経験から、その方法が一番成果が出る(=恐れられれば人は動く)と確信しているため、なんと言われようが変えるつもりはない、というパターンです。(本書の事例を見ると、個人的に一定の社会的成功を収めた人に少なくないような印象を持ちました)

―――
<「わかっているが気にしないタイプ」への対策>
1)「ラフトラック」をイメージする:
自分自身のリアクションをコントロールすることで、状況を(内的に)コントロールすること。(※ラフトラックとは「録音された笑い」のこと。アメリカのコメディで、あのパターンね!という時に再生されて笑いを誘うものです。ひどいことを言われた後に再生されるようなことをイメージせよ、といっています)

2)「明確な境界線」を設ける:
お互いに譲れないことなどをガイドラインして設けること。
特に自己認識に欠けたクライアントに有効です(自分が正しいと思っているため、無茶な要望を通すことがあるため)。それでも改善されない場合は「撤退する」ことも有効です。
―――

◎パターン3:「誘導可能」な人々

パターン1と2は「変えることができない人」です。(本書では「救いようがない人」といっていました)その場合は、変えられるのは自分となりますので、自分の受け止め方(認知を変える、受け流すなど)が中心になります。実に、現実的です。

ただし、パターン3は「誘導可能(ナッジブル)」と言われるように、他者が変化を与えられる可能性があります。何が前者と違うかというと「心からよりよい自分を目指している点」です。そして多くの場合、多少なりともこのパターンに当てはまる事が多いと考えられます。

ただ「自己認識が必要な当人こそ、その必要性を認識していない」ものですから、耳が痛いことを伝え、受け取ってもらえるために工夫が必要になります。

――――
<パターン3の人を「誘導する」方法>
1)思いやりを持って、入念な準備をする
→フィードバック前に、具体的に以下のような問いを考えます。

1.この話を持ち出すメリットは、潜在的なリスクに勝るものだろうか?
2.彼/彼女は問題が生じているとわかっているだろうか?
3.彼/彼女の行動は、彼/彼女の最善の利益に反するものだろうか?
4.彼/彼女はこちらに耳を傾けてくれるだろうか?

上記に当てはまるようであれば、相手に思いやりを持って向き合うことで、相手の人生の幸福度と、それに関わる自分自身の人生の幸福度も高めることができます。
――――

■「自己認識」の旅に向き合う

本書の中で、自己認識の旅の難しさについて、象徴的な話が紹介されていました。

それは、「ピカピカな斧」が本当はほしかったのに、磨くのが大変だから「ところどころ光っているくらいの斧がいいんだ」と自分に言い聞かせて、中途半端に磨かれた斧を、磨かずに持っている男の話です。

ここから言えることは「『磨き続ける』ことより『現状で満足と自分に言い聞かせる』ことのほうが、遥かに簡単である」という事実です。

自己認識とは、「斧を磨き続ける」ように終わりがない旅路です。
ただ、そんな新たな自分を見つけ続けるのが自己認識の旅とも言えそうです。

「人生に目的はなにか?」と哲学的な問いに対して「新しい自分を経験し続ける、学び続ける」というプロセスそのものに一つの答えが含まれていると私は感じることがあります。まさに、自己認識です。

自己認識の旅は、人生の旅。ずっと続いていくのでしょう。

■まとめと感想

合計6回にわたって本書を紹介させていただきました『Insight』、まさに自己認識のガイドブックのような本でした。

今回は紹介できませんでしたが、巻末には「自己認識7日間チャレンジ」とそのステップが明確化されています。さらに外的自己認識を高めるために、自分へのフィードバックが貰える特設サイトがあったり(英語のみ)、その実践への心遣いも感銘を受けました。

とても素晴らしき本と出会えたことに感謝です。
皆様も良ければ、ぜひ読んでみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

※本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。よろしければぜひご覧ください。

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