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3950号 2024年12月18日

「好奇心」を育てる方程式

(本日のお話 2465字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は2件のアポイント。
夕方は100kmマラソンのリハビリがてら、5kmのバイク(自転車)でした、
また、私の誕生日だったため、沖縄で一緒に暮らしているシェアハウスの仲間がお祝いをしてくれました。
生まれてはじめて「パイ投げ」というものを喰らいました。
こうした遊びも、嬉しく、ありがたい限りです。



さて、本日のお話です。

本日は「性格の強み」に関連する論文をご紹介いたします。「性格の強み」の分類の中で『好奇心(Curiosity)』というものがあります。

今日はこの「好奇心」について、論文から探求してみたいと思います。好奇心を持つと何がよいのか?どうすれば好奇心を活かすことができるのか? について見ていきたいと思います。

それでは、まいりましょう!

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<今回の論文>
タイトル:Interesting Things and Curious People: Exploration and Engagement as Transient States and Enduring Strengths(興味深い物事と好奇心旺盛な人々:一時的状態と持続的強みとしての探求と関与)
著者:Paul J. Silvia, Todd B. Kashdan
ジャーナル:Social and Personality Psychology Compass, 2009年
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■1分でわかる本論文のポイント

・人間は、進化の中で「不安」と「好奇心」の両方を持つように遺伝的に仕組みまれてきた。
・「不安」は危険を避け、生存を確保する役割を果たす。一方、「好奇心」は新しい知識や経験を得る動機となり、成長や発展を促す。

・心理学的には不安や回避行動についての研究が進んでいるが、探求や興味を促す「好奇心」の側面は依然として十分に理解されていない。

・本論文は、これまでの「興味や好奇心」に関連するこれまでの理論や実証研究をレビューし、興味や好奇心の発生のメカニズムを探求した。

という内容です。

興味(interest)や好奇心(Curiosity)に関する、研究全体を整理した論文のため、広い内容になっています。ただ「へー、好奇心ってそんな風にわけられるんだ」と、純粋に勉強になりました。

■「好奇心」と「興味」の違い

さて、はじめに整理をしたいのが、「好奇心(Curiosity)」と「興味(interest)」の違いについてです。一見似ているこの2つのキーワード、何が違うのでしょうか。論文によると、以下のように整理ができます。

<興味(interest)>
・「瞬間的な状態(transient state)」 として捉えられる。
・何か新しい物事や出来事に対して感じる瞬間的な感情であり、認知評価(新奇性・複雑性と理解可能性)によって引き起こされるもの。
・興味が湧く瞬間には「新しいけれど理解可能」と評価されることが重要。
(例:「初めて見る絵画が複雑だが理解できると感じ、興味が湧く」)

<好奇心(curiosity)>
・「持続的な特性(enduring strength)」 として捉えられる。
・人の性格や気質の一部として、長期的・一貫して新しい知識や経験を求める傾向を指す。(VIAの強みにも分類されている)
・好奇心が強い人は、多様な物事や状況に対して頻繁に興味を抱き、探求を続ける行動が習慣化している。
(例:「日常的に新しい趣味やアイデアを探し、長期間にわたって学びや挑戦を続ける」)

そして、「状態としての興味(瞬間的経験)」が繰り返されることで、「特性としての好奇心」が強化されるという双方向の関係が存在するとのこと。

まずは「興味」を連続して持ち続けることが、「好奇心」を育てることに繋がるようです。

■「好奇心」があると何が良いのか?

というか、そもそも「好奇心」が強いと、どんないいことがあるのでしょうか?
本論文によると、好奇心が強い人には、以下のようなポジティブな影響があると述べています。

―――――――――――――――――――――――――――――
<好奇心を持つことによるポジティブな影響>

・知的成長:幼少期の好奇心は、後の知能の向上に関連する。
・身体的健康:高齢者において、好奇心は寿命の延長と関連している。
・幸福度:好奇心は人生の満足度、仕事の満足度、意義ある生活と深く関連している。
・社会的関係:好奇心が強い人は他者に対する関心が高く、関係構築に積極的である。また、関係の維持や問題解決において柔軟であることが示された。
―――――――――――――――――――――――――――――

ちなみに、興味深かったのが「ラットを対象にした実験」です。

好奇心が強いラット(色んなところを冒険するようなラット)は、他のラットと比べて寿命が25%長かったそうです。好奇心のポジティブな影響は、人間だけではないのですね。

■「好奇心」を育てる方程式

次に考えたいのが、どのようにして「好奇心」が生まれるのでしょうか?

ここでは好奇心の種イモ的な「興味」の発生メカニズムから考えたいと思います。公式っぽくするとこんな感じ。

====================
興味 = 新規性&複雑性 ✕ 理解可能性
====================

興味は「新奇性・複雑性」と「理解可能性」という2つの認知評価が組み合わさることで生じるとされます。(認知評価理論といいます)

新奇な物事は「興味」を引き起こします。
しかし、それが「理解困難」である場合、不安や混乱といった否定的感情を生じさせることがあります。そうすると、しなしなと興味の感情が萎えてしまいます。

▽▽▽

ここで、個人特性として「好奇心の特性」が影響するようです。好奇心が強い人は、新規性や複雑性に対して前向きに捉える可能性があるようです。

1,「好奇心」が強い人は、新規性&複雑性に対して前向きに捉える。
2,すると、「興味(瞬間的状態)」が強くなり、かつ連続しやすくなる。
3,その結果、「好奇心(持続した特性)」が更に強化される。

そんな流れなのかな、と思いました。

■まとめと感想

「好奇心」を持つといいことが色々あります。そして、「好奇心」を育てるには、好奇心の種イモである「興味」を持つことがポイントです。
そのためには、まず「新しいこと」に対してアンテナを立てることがよいのでしょう。
ただし、「新しいこと」でも、「難すぎる」と思うと興味が萎えてしまうので、バランスを持つことも大事です。

好奇心の方程式を理解して、「理解可能な範囲」で「新しいことに飛び込むこと」、そんな風に上手に好奇心を育てていきたいものだ、そんなことを思った次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

※本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。よろしければぜひご覧ください。

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