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3979号 2025年1月16日

ビックファイブを超える!?新しい性格モデル「HEXACO」のご紹介

(本日のお話 2217文字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は友人の経営する会社への、強みのVIA研修の実施でした。
また、その他1件のアポイント。



さて、本日のお話です。

以前の記事で、超有名な性格モデルの「ビックファイブ」なるものをご紹介させていただきました。

しかし、2000年代にはいってから、このビックファイブに変わる新たな性格モデルが登場しています。その名も『HEXACO(ヘキサコ)』と言います。

ちなみに、HEXAGON(ヘキサゴン)=六角形という意味。

ビックファイブは5つの性格次元でしたが、HEXACO(ヘキサコ)は6つの性格次元なのでこの名前だと思われます。
すごく乱暴に言えば、「1つ要素が加わった」という話なのですが、このことによりビックファイブでは説明できなかった現象を説明可能になった、ということで、注目されてきています。

今日は、このHEXACOモデルの全体像について説明した論文をご紹介いたします。

それでは、早速まいりましょう!

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<今回の論文>
タイトル:『Empirical, Theoretical, and Practical Advantages of the HEXACO Model of Personality Structure』(HEXACOモデルの経験的、理論的、実践的な利点)
著者:Michael C. Ashton、Kibeom Lee
ジャーナル:Personality and Social Psychology Review、2007年
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■HEXACO(ヘキサコ)とはなにか

HEXACOモデルは、6つの性格次元で人間の性格を表現する新しい枠組みであり、従来のビッグファイブモデルを補完または代替できるとされています。以下の6つの性格次元です。

<HEXACOの6つの性格次元>
1.正直さ・謙虚 (Honesty-Humility)
2.情緒性 (Emotionality)
3.外向性 (Extraversion)
4.協調性 (Agreeableness)
5.誠実性 (Conscientiousness)
6.開放性 (Openness to Experience)

ビッグファイブと変わらない性格次元は、「外向性 (Extraversion)、協調性 (Agreeableness)、開放性 (Openness to Experience)、誠実性(Conscientiousness)」の4つです。

また、ビッグファイブでは「神経症的傾向 (Neuroticism)」がありましたが、これは「情緒性 (Emotionality)」という否定的なニュアンスを感じさせない表現になっています。そして一番の違いは「正直-謙虚性(Honesty-Humility)」が加わりました。これが最も大きなポイントです。

■HEXACOができた背景

さて、パーソナリティの研究は1930年代から始まり、膨大な性格を表す言葉を研究者たちが調査し、涙ぐましい研究が重ねられてきました。
その結果、1990年代にビックファイブという5つの性格次元へと合意に至り、性格モデルの主流となってきています。

しかし、いくつかの文化や状況において、ビックファイブの説明能力が不十分とされる現象が起こってきました。特に、「道徳的行動」などを説明する上で限界がありました。(「なぜ人は利他的行動をするのか?」など)

その中でLeeらが(2004)英語以外の言語(オランダ語、フランス語、ドイツ語、ハンガリー語、イタリア語、韓国語、ポーランド語)で研究をした結果、5つではなく「6つの性格次元」となることがわかり、「正直さ-謙虚」の性格次元が加わったのでした。

■研究でわかったこと

さて、本論文ではこのように、世界12言語において6つの性格次元になることを特定しました。またHEXACOモデルの性格を測定する質問紙(HEXACO-PI)を開発し、その妥当性と信頼性を確認しています。

そしてこのHEXACOモデルを、ビッグファイブと比較した結果、以下のことがわかったとします。

(1)HEXACOモデルは再現性がある
・HEXACOモデルは、多文化研究において安定的に再現される6次元の性格構造を示しました。
・特に「正直さ-謙虚(H)」は、道徳的行動や倫理的な判断を説明する上で重要な役割を果たします。

(2)HEXACOモデルは理論的に優位である
・進化心理学における「利他的行動」と「競争的行動」の二重性に基づき、HEXACOモデルは性格特性を、ビックファイブより、より合理的に説明しまています。
・例えば、「正直さ-謙虚(H)」や「情緒性(E)」は、資源分配や他者との協力に関する進化的選択圧を反映しているとされます。

(3)HEXACOモデルは実践的に優位である
・HEXACOモデルは、職場での不正行動、犯罪傾向、社会的行動の予測において高い実用性を持っています。
・例えば、正直-謙虚性(H)の低スコアは、詐欺や操作的行動のリスクを予測することができます。

■まとめと感想

これまで説明できない「利他主義」のような道徳的行動が、このHEXACOモデルで説明できるようになったこと、これはコンプライアンス的なもの(不正行動)を予測するモデルとしても、時代に合った有用なモデルであることを理解しました。

他の研究では、このHEXACOモデルと収入の関係なども研究されているようです。どういった性格特性が望ましいのか、より深い話がありそうで、益々興味が湧いてきました。

パーソナリティ(性格)の研究も、こうしてバトンが渡されて、より洗練されていくことに研究の歴史と奥深さを感じた次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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