育て上手なマネジャーは、一体何をしているのだろうか? ~読書レビュー『管理職コーチング論』#4~
(本日のお話 2668文字/読了時間5分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は1件のアポイント。
ならびに女性管理職向けのストレングス・ファインダー研修の実施でした。
夜は生成AIの勉強会への参加など。
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さて、本日のお話です。
先日より「管理職によるコーチング」の唯一無二の専門書である『管理職コーチング論』(永田正樹/著)をご紹介しております。本日も続けます。
本日は、「第3章 経験学習・リフレクション支援の成功事例・失敗事例」「第4章 部下育成能力の高いマネジャーの育成行動」からポイントをまとめていきたいと思います。
それでは、どうぞ!
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<目次>
上司✕部下の対話は、ブラックボックス
「育成上手なマネジャー」に、何してるのか聞いてみた
調査1:経験学習・リフレクション支援の成功例
調査2:部下育成能力の高いマネジャーの育成行動
まとめと感想
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■上司✕部下の対話は、ブラックボックス
「ブラックボックス」。中身がどうなっているか不明であること。
・・・
まさに、上司と部下の対話は、これに尽きるのではないか、と思います。
人は自分の見聞きした経験から、「自分なりの持論」を持っています。
その中で、自分の経験を超えたやり方を試すには、「優れた人がどのようにやっているのか?」を学ぶことが役に立ちます。
ちなみに「育成上手なマネジャー」は、きっとこういう事やっているんだろうな、と自分の経験から、想像できることはあるものです
たとえば、当時の上司から「自分にはムリ」と思う目標を任され、最後までやり切らされることで成長を感じた経験があります。ゆえに、「タフアサインメント(高い目標を与え、最後まで走りきらせること」が育成には大事、という感覚があります。
・・・
しかし、実際のところ、どうなのか?
自分の経験だけではなく、育成上手なマネジャーは、一体何をどのように行っているのか?
・・・
きっとそこには、仕事のアサインメントの工夫だけではなく、話の切り出し方の工夫や、褒め方の工夫、課題の整理の仕方、振り返りの工夫など・・・、様々なことをやっているはずです。
しかし、それは「ブラックボックス」。外から見ることができません。
■「育成上手なマネジャー」に、何してるのか聞いてみた
さて、ご紹介の本書の第3・4章では、「振り返り支援の成功例と失敗例をマネジャー43名に調査」し、「部下育成に定評があるマネジャー17名にインタビュー」を行い、何をしているのかを明らかにしています。
まさに、「ブラックボックス」の中身を見に行くことができるような研究。「めっちゃ勉強になる・・・!」と面白く感動しておりました。
では具体的にどんな調査だったのでしょうか。
◎調査1:経験学習・リフレクション支援の成功例
まず、第3章では「経験学習・リフレクション支援の成功事例と失敗事例」を紹介しています。
分析方法は、マネジャー43名に、特定の部下に対する育成行動を振り返ってもらう「リフレクションシート(200~500文字)」を記述してもらいました。そして、それが部下育成に成功したと感じたか(成功事例)、失敗したと感じたか(失敗事例)と判断してもらいます。
そして、記述された内容を、GTAという定性分析の手法を用いて、紐解きました。その結果、「経験学習・リフレクション支援の成功事例」は以下の3ステップとなっていました。
(ここから)
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<経験学習・リフレクション支援の「成功例」の3ステップ>
(STEP1)成長支援の開始
・部下の状況を把握する
・安心して仕事に取り組める環境を整備する
・仕事を明確に意味づける
・部下に対する期待を伝える
・やり方を示したり、一緒に仕事に取り組んだりする、など
(STEP2)リフレクションの促進
・部下がどのように出来事を理解しているのか本人の思いや考え、仕事の理解度を確認する
・部下の考える余地を確保しながら、ヒントを与え、出来事を分析する
・成功経験・失敗経験に対するフィードバックや褒めることにより部下が教訓を生成することを支援する
・学習された教訓を他の仕事に活かせるように促す
・定期的な個別ミーティングを実施し、本人の力で最後まで仕事をやり切らせる、など
(STEP3)成長支援の効果
・上記の結果、部下に自信がつき、経験を振り返る習慣がつき、主体的に行動するようになる
※P103を引用、一部著者で編集
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(ここまで)
◎調査2:部下育成能力の高いマネジャーの育成行動
続いて、第4章では、「部下育成能力の高いマネジャーがどのような育成行動を行っているのか」を分析しています。大手保険会社B社において、以下の条件を満たす17名の「育成上手なマネジャー」を選出し、インタビュー調査を行いました。
<育成上手なマネジャーの選抜基準>
1.組織・部署あるいは部門全体の業績に責任を持っている
2.複数の組織マネジメントを経験している
3.海外経験があり、その経験をマネジメントに活かしている
4.中高年部下や女性のマネジメントに定評がある
5.業績低迷者の業績を回復させた経験がある
そして、17名のインタビュー調査によってわかった、「部下育成能力の高いマネジャーの指導プロセス」を分析し、指導の時系列に沿って、まとめています。
調査1では、記述シートからの分析でしたが、こちらはインタビュー調査を行っており、また対象が上述の育成上手と評価された人であることが特徴です。調査1・2を合わせることで、より汎用性がある答えが見つかる可能性がある、と言えそうです。
その結果、育成上手なマネジャーの「経験学習・リフレクション支援」の流れが明らかになりました。調査1に比べて、新たな項目として、「協力しあえるチームを作る」「部下を観察する」「部下の特徴を把握し、強みを伸ばす」「キャリアビジョンをもとに動機づける」などが見られました。
■まとめと感想
本章の特に面白いと感じた点は、大きく2点です。
1つ目が、合計60名の経験から「部下支援の成功事例」共通ポイントをまとめ、体系化しているので、実践に使える内容と感じることが一つです。
2つ目が、「インタビューの生声」が記載されていることです。
今回の記事では、概念的なことのみでしたが、本書ではインタビュー対象者の生声としての、部下支援の工夫が多数収録されています。
「チーム内の関係の質を上げるためには、お互いの事をよく知る必要がある。そのため月に2回のランチで、過去の生い立ち、会社に入ってからやった仕事、仕事の中でやり遂げたいことを話し合っています。チームメンバー間でも、案外お互いのことを知らないものです」(A氏)
こうしたインタビューは「なるほど、そういうやり方あるのか」と即マネができる内容とも言えます。非常に濃厚な、リアルな実践例のようで、管理職の方には参考になることが多いように思いました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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