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4035号 2025年3月13日

非難と批判は違う!?「批判的思考力」を解き明かす ー読書レビュー『非認知能力』#6

(本日のお話 2713字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は2件のアポイント。
また研修プログラムの作成などでした。
その他、10kmのランニング。
5月のウルトラマラソンに向けて体を作り始めないと、と思う今日このごろです。



さて、本日のお話です。

先日より「非認知能力」について学べる専門書をご紹介しています。
引き続き、本日も読み解いてまいります。

本日取り上げる非認知能力は「批判的思考力」です。
”情報を適切に読み解き、活用する思考力”とされ、世の中ではクリティカル・シンキングともいわれます。
ビジネススキルの一つともいわれ、よく耳にすると感じていましたが、私はこの章を読んで、「批判的思考力ってこういうことだったのか・・・!」という新たな発見と、ある種の”誤解”が解けたように思ったのでした。
そして、批判的思考力をもっと身につけたいとも感じたのでした。

ということで、早速、批判的思考力の奥深き世界を見てまいりましょう。

それでは、どうぞ!

―――――――――――――――――――――
<目次>
「批判」と「非難」は違う
批判的思考力のプロセス
批判的思考力が「求められる理由」
批判的思考力の「4つのプロセス」
批判的思考力を「測定する尺度」
批判的思考力の伸ばし方
まとめと感想
――――――――――――――――――――――

■「批判」と「非難」は違う

「批判的思考」の定義の中で、最も一般的に用いられているものが、エリスの「何を信じ、何を行うかの決定に焦点を当てた合理的で反省的な思考」だそう。正しい判断をし、問題を適切に解決するために重要な思考です。

一方、「批判」というと、なんだか否定されているような、そんなちょっとコワいイメージも持たれるようです。これは、「批判」と「非難」を混同していることによるもののようです。デジタル大辞泉によると、以下のように示されるそう。

――――――――――――――――――――――――――
〈批判と非難の違い〉
・「批判」:物事に検討を加えて、判定・評価すること(対象が”物事”)
・「非難」:人の欠点や過失などを取り上げて責めること(対象が”人”)
――――――――――――――――――――――――――

つまり、人ではなく、物事に対して、客観的で偏りなく思考し、正しい判断に近づけようとすることが目的である、ということ。
なるほど・・・たしかに、何となくごっちゃにしていたかもしれません。

■批判的思考力のプロセス

◎批判的思考力が「求められる理由」
そんな「批判的思考」ですが、なぜ必要とされるのでしょうか?
一番の理由は、私たちには「『確証バイアス』があるから」です。

人は無意識に、”見たいものを見て、思いたいように思う”傾向があるようです。自分の考えや態度と一致した情報につい目がいってしまい、正確な判断ができなくなってしまう・・・、これが”バイアス”の存在です。
世の中を「自分のメガネ」をかけて見ているわけです。

そこで、批判的思考力を持てば、客観的・多面的に見ることができ、自分の前提すらも疑うことにつながります。そうすれば、より正しい判断に近づき、また異なる価値観の相手とも合意形成を取りやすくなるでしょう。ゆえに、批判的思考力が求められるのです。

◎批判的思考力の「4つのプロセス」
さて、批判的思考のプロセスは、以下の4つのステップがあるといいます。

<批判的思考の4つのプロセス>
STEP1:情報の明確化
STEP2:推論の土台の検討
STEP3:推論
STEP4:行動決定・問題解決

そして、上記の思考をする上では、熟慮的な思考が求められます。

人が思考をする際の前提の話として、「思考の処理システム」の話があります。人は、思考をするときに、以下の2つの思考の処理システムが働くことがわかっています。

<2つの思考の処理プロセス>
システム1:”素早い自動的で直感的な処理”をする思考システム
システム2:”熟慮的でアルゴリズム的な処理”をする思考システム

そして批判的思考力で働くのは「システム2」です。このシステム2に含まれる、熟慮的(内省的精神)で、アルゴリズム的(アルゴリズム的精神)の要素で、批判的思考を行っている、とされます。

◎批判的思考力を「測定する尺度」
また、こちらは本書の中では紹介されていないのですが、批判的思考力の要素を因子分析した「クリティカルシンキング志向性尺度」(廣岡,2001)というものがあります。

この研究によると、批判的思考力は、「探究心」「証拠の重視」「不偏性(多様性の許容)」「決断力」「脱軽信」という5つの要素で形成されていることが示されました。

■批判的思考力の伸ばし方

では、批判的思考力は、どのように伸ばすことができるのでしょうか?
以下の4つのアプローチが代表的だそうです。

――――――――――――――――――――――――――
<批判的思考力の伸ばし方の4つのアプローチ>
1.普遍アプローチ:批判的思考のスキルや態度を学ぶこと自体が学習目標になっているもの
2.導入アプローチ:ある教科やテーマの学習を目的とする中で、批判的思考のスキルや態度についても明示的に教えるもの
3.没入アプローチ:批判的思考力については明示的に教えることはないが、ある教科に専門的に没入して学ぶことで、批判的思考力も学習するもの
4.混合アプローチ:特定の教育の中で、批判的思考力そのものを学ぶ回を設けるもの
P91-92
――――――――――――――――――――――――――

介入研究の対象となったある小中学校では、「自分の思考を思考する」として、ある課題に対して「考える→書く→気付きと解説→考える→書く→発表する→気付きと解説→振り返り」というステップで、自分の思考を思考することで、上述のクリティカルシンジング志向性尺度の「探究心」をはじめとした要素に影響を与えることがわかりました。

他にも、高校では、批判的思考力の基礎である「問いを発する力=質問力」の育成をする上で、テーマに関連した「重要な質問を8個選ぶ」ということを行うことで、質問態度や質問力の向上(つまり批判的思考力の基礎力の向上)が見られたそうです。

■まとめと感想

また興味深かったのが、「批判的思考力の発現は、環境によって左右される」という話です。

「正しい判断をする」が目標のときは批判的発言が選ばれやすかった一方、「楽しい雰囲気にする」という目標では批判的発言は選ばれませんでした。  つまり、授業などで批判的思考や態度を求める場合,その場の文脈設定が重要になる、ということは認識が必要です。

そして、批判的思考を育てるためには、教育者が「批判と非難」を混合して用いられることを理解し、その違いを区別して伝える必要があるでしょうし、それを模範者として体現することも求められそうです。

さらには、批判的思考力は、こと”生まれつき決まっている”という遺伝優位の思考になりがちなことについても、「学習によって鍛えることができる」ことも教育が求められる、とも触れられていました。

「人」ではなく「物事」に対して伝えるのが「批判」であること。

そして、客観的、多面的に様々な意見を伝えていくことは、正しい判断につながり、多様性の中での合意の上でも、重要な思考であること。こうしたことをより理解することが必要なのだろうな、と考えさせられた次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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