感情を賢く活用する力「情動知能」の高め方 ー読書レビュー『非認知能力』#9
(本日のお話 2648字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は、2件のアポイント。
ならびに、仕事終わりに歯医者へ行き(詰め物が取れた)、
そのついでに16kmのランニングでした。
100kmマラソンまであと60日なので、体重を落としたり、
体幹を鍛えたりなどしていかないと、完走が危うそうだと思う今日このごろです。
がんばります・・・!
*
さて、本日のお話です。
先日より「非認知能力」について学べる専門書をご紹介しています。
引き続き、本日も読み解いてまいります。
本日取り上げる非認知能力は、”情動を賢く活用する力”である『情動知能』です。
いわゆる、EQ(Emotional Intelligence)とも呼ばれるこの概念、多くの人が耳にしたことはある人も少なくないでしょう。
しかし、この情動知能が、どんな能力でどんなメリットがあるのか、など考えてみると、意外と理解できていないようにも思います。
本日はこの『情動知能』の概念について、詳しく読み解いていきたいと思います。
それでは、まいりましょう!
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<目次>
「情動知能」とはなにか
「感情」と「情動」の違い
「情動知能」の4つの要素
情動知能が「もたらす成果」
情動知能を伸ばすための「介入方法」
(1)RULLER
(2)成人に対する「情動知能のトレーニング」
まとめと感想
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■「情動知能」とはなにか
さて、まずはこの「情動知能」がどのようなものなのか、その概念を紐解いていきたいと思います。
◎「感情」と「情動」の違い
私たちは、生きる中で「喜び」「悲しみ」「怒り」などの様々な『感情(Feeleing)』を感じながら生きています。感情には強いものもあれば、微弱なゆらぎのようなものもあります。その中で、特定の出来事による比較的強い感情反応のことは『情動(emotion)』と呼ばれます。
こうした「情動」は役に立つこともあれば、そうでないこともあります。
「怒り」は相手に望ましくない行動を抑制する行動がありますが、使い方を間違えると信頼関係にマイナスの影響があったりします。「喜び」も、社会的な文脈に合わないところで、強く表出させてしまうと、反感を買ってしまうことも・・・。
こうした人間を人間たらしめている「情動」は、古来の哲学から現代の心理学まで数多くの研究が積み重ねられてきました。
◎「情動知能」の4つの要素
さて、そんな情動を賢く活用する力が「情動知能」です。
しかし、”賢く活用する”といいつつ、そもそもこの「情動知能」とは、何を表すのかがよくわかりません。
これは「英語力」といっても、その中にある「書く」「読む」「話す」「聞く」などの要素が分解されていないと、適切に磨けないことと同様です。
その中で、情動知能の提案者のメイヤーが、「情動の知能の四肢モデル」と呼ぶものを提案しています。以下のようなものになります。
<情動知能の四肢モデル>
1.情動の知覚:自他の情動を同定し、正確に表現する能力
2.情動の利用による思考の促進:判断や記憶の助けとなるような情動を生み出す能力
3.情動の理解:情動がもつ特性や、情動と状況との結びつき、混合情動などの複雑な情動を理解する能力
4.情動の管理:望ましい結果に向けて、自他の情動を効果的に調整する能力
P135
そして、情動知能を測定する方法も開発されています。3つの方法があり、主流は、自分でどう思うか答える「自己報告式の尺度」、そして、パフォーマンステストなどで調査する「能力モデル」、最後に自己報告式のモデルと能力モデルらを混ぜた「混合モデル」などです。
■情動知能が「もたらす成果」
情動知能ですが、これまでの心理学研究から、様々な成果につながることがわかっています。結論をお伝えすると、「主観的幸福感」「健康」「学業成績」「勤務成績」「職務満足度」の高さに関係していることがわかっています。
まず、「主観的幸福度」は、”自分の人生に満足している度合い、ポジティブ感情と高さ、ネガティブ感情の低さ”の3要素で測った尺度です。
なぜ幸福度に情動知能が結びつくかと言うと、望ましくない情動を引き起こす原因を解決する「問題解決行動」、他者に援助を求める「援助要請」などの情動調整方略を多く用いることができるからです。
また、「学業成績」は相関が高いものは「1位:IQ 2位:誠実性(パーソナリティ特性)、3位:情動知能」という結果になっています。3番目に情動知能が来ている理由として、学業でのネガティブな情動(不安、退屈、落胆など)を賢く調整できることや、学習環境(教師や友人、家族)での支援を受けやすいことが挙げられているそうです。
■情動知能を伸ばすための「介入方法」
情動知能は様々なポジティブな影響をもたらしますが、トレーニングによって情動知能を高めることはできるのでしょうか? この答えは「YES」です。
(1)RULLER
こちらは幼稚園児から高校生を主な対象とした情動知能の介入プログラムです。「社会性と情動の学習」と呼ばれます。その代表的なものがイエール大学で行われる、RULERという取り組みです。以下の頭文字からつけられました。
・Recognizing(認識)→情動を認識する
・Understanding(理解)→情動を理解する
・Labeling(ラベル付け)→情動にラベルをつける
・Expressing(表現)→情動を表現する
・Regulating(調整)→情動を調整する
そして上記に通ずる、いくつかのツールが用意されている、整備されたプログラムコンテンツとなっているとのこと。
(2)成人に対する「情動知能のトレーニング」
大学生以降を対象にした研究もあり、介入研究のメタ分析によると、トレーニングを通じて、成人でも情動知能が高められることが示されています。
たとえば、「情動知能のレクチャー」「ロールプレイ」「グループディスカッション」「ペアワーク」などで構成される合計18時間のセッションの参加と、個別の宿題に取り組む介入があります(Nelis et al. 2011)。
この介入を受けたトレーニング群と、そうではない統制群と比較すると、情動知能の3つの測定方法(自己評価、他者評価、能力テスト)のいずれでもスコアが向上し、また6ヶ月後も効果が持続することが示されました。
ちなみに、38歳以上を対象に同様のトレーニングを行ったそうですが、そちらも情動知能は高まり、1年後も効果が持続する結果となったそうです。
■まとめと感想
何となく使っていた「EQ」という概念が、どのような要素でできており、どのような介入をすれば高められるかなど、整理ができ、とても学びになりました。
また、私たちは社会の中で、人と関わりながら生きているので「情動知能」を用いることで、適切な支援を受け入れたり、上手に自分をコントロールできたり、幸福度、学業、職場満足度などなど、ポジティブな影響が多々あることもなるほどな、と思った次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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