『社会的排除』
(今日のお話 2386字/読了時間2分半)
■おはようございます。紀藤です。
この土日は、人事の方限定の
「7つの習慣」の週末セミナーの開催。
今日も引き続き、2日目です。
(週末にも関わらずお越しいただいている、
志高き人事の皆様、誠にありがとうございます!
たくさんのことをお持ち帰りくださいね)
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さて、本日のお話です。
毎週日曜日は、お勧めの一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナー。
今週の一冊は、
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『社会的排除―参加の欠如・不確かな帰属』(著:岩田正美)
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です。
■「光」を知るためには、
「闇」を知らなければいけない。
「理想」を語るには、
「現実」を知らねばならない。
「平和」を語るには、
「争い・混乱」を知らなければならない。
世の中は相対的にできています。
もちろん、“美しい側面”だけ見て、
実現できればそれに越したことはない。
しかしながら、そう出来ない現実があります。
思うに、本当の意味で、
「理想」を実現しようとするのであれば、
綺麗な部分や、理想的なことだけでなく、
「そうできない理由」を明確に知り、
課題意識を持つこと、
このことは不可欠ではなかろうか、
と、私は思います。
■今日の一冊は、
「社会の”闇”」の部分に焦点を当てた話です。
きっと、メルマガをお読みいただいている、
立派なお仕事をされている皆様には、
もしかしたら、縁遠い話かもしれません。
しかし、あるエリートサラリーマンなどが、
ふとしたきっかけで転落し、
「社会的排除」(社会から引き剥がされた状態)
をされてしまう人が存在している、
そんな社会問題を描いたノンフィクションの話です。
■さて、ではこの『社会的排除』の本、
どんなことが書かれているのでしょうか?
内容は、こんな風に紹介されています。
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◯『社会的排除』内容紹介◯
ホームレスやワーキングプア、
ネットカフェ難民、日雇い派遣、孤独死や自殺など、
福祉国家の制度からこぼれ落ち、呻吟する人々。
彼らはなぜ、どのようにその拠り所を失ったのか。
グローバリゼーションとポスト工業社会において、
深まるばかりの社会分裂を、どのように分析するか。
貧困研究の第一人者が、
曖昧に使われてきた「社会的排除」概念を、
社会参加と帰属に焦点を当てて、理論的にクリアに示し、
データとフィールドワークを駆使して、日本の今のリアリティに迫る。
(Amazon 内容紹介より引用)
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仕事があるのが当たり前、
ホームレス、ネットカフェ難民などは、
他の世界の出来事。
メルマガのお読みの皆様は、
もしかするとそのように感じられる方も、
いらっしゃるかもしれません。
しかし、それらの現実は確かに存在しており、
そうなった人も、自分がそうなるとは思っていなかった。
この本を読むと、
その事実・現実・真実を思い知らされます。
■例えば、こんな2つの
「リアルな転落事例」が紹介されています。
*
<職場に馴染めず、職を点々とし、そして落ちていった>
~Aさんの事例~
彼は飲食店で働いていたが、
年下の上司に使われることが嫌で、仕事を辞めた。
しかし、その後、転職するものの、同じような状況に遭遇する。
すなわち、また年下の上司に使われることになった。
しかし、彼はそれが耐えられない。
使われるのが嫌で、また仕事を辞める。
そんな理由で転職をする。すると、また同じ状況になる。
また、辞める。
転職をするたびに、どんどん条件の悪いところしか、見つからなくなってくる。
そんなことはわかっているのに、つい、そうしてしまう。
Aさんは、この状況を観察して、
一ヶ所にとどまれない自分をこのように言う。
「落ちるって言葉がありますけど、一度ツマづくと、本当に落ちていく。」
*
<配偶者との離婚。続くアクシデント。一気に転落し、ネット難民へ>
~Bさんの事例~
様々な理由で配偶者との離婚。(1つ目のアクシデント)
それがきっかけで生活の基盤が崩れ、支えるものがなくなる。
そして、心身ともに不安定になる。
そんな中、突然の会社からのリストラ。(2つ目のアクシデント)
離婚で精神的なバランスを欠いている中の追い討ち。
加えて、そこで次の職が
すぐ見つけられるようなキャリアを積んでこなかった。
仕事が見つからない。だから、とりあえず派遣として働く。
そんな状況に嫌気が差し、お酒におぼれ、アルコール依存症になる。
そして、仕事を休みがちになり、また退職を迫られることになる。
どんどん仕事の水準が下がり、日雇いのその日暮らしの生活が中心になる。
家賃が払えず、ネット難民になる。
■この2つのケースをみていると、
・自分がキャリアを積んでこなかったのが悪い。
・離婚した時の事を考えなかった人が悪い。
・リスクヘッジをしておかなかったのが悪い
そう思う方もいらっしゃるかもしれません。
そう言ってしまえば、
確かにそういった面もあるかもしれない。
しかし、
・配偶者との離婚・死別
・体を壊したことによる収入源の枯渇
・その他、身内の不幸、トラブル
など”思わぬ事態”で
普通の人、安定した仕事の人が、
一気に転落していくということが存在している、
ということ。
この事実が重要だと思うわけです。
つまり、言い換えれば、
【自分もそうなる可能性がありうる】
ということ。
これを“リアルな事例”として、
肌身で、リアルに知っておく必要がある、
このことが、私が思う、
この本の一つの価値である、
と思うのです。
■夢を語るのも、
自分のビジョンを追い求めることも、
とても大切なことです。
しかし、人生には、
“「攻め」と「守り」”
どちらも必要です。
そのためにも、
「こんなに恐ろしいリスクがある」
ということを知ること。
そして、そうならないために、
最大限の準備をしておくこと。
これらが、とても大事なのではなかろうか、
私はそのように思います。
日本社会の一つの闇を描いたこの作品、
明日は我が身かもしれません。
ぜひ一度お目通しいただくと、
また違った見方を手に入れられるかと思います。
読んで明るくなる本ではありませんが、
そんな視点を得たい方、ご一読をお勧めいたします。