『泣き虫しょったんの奇跡 <サラリーマンから将棋のプロへ>』
(今日のお話 2113字/読了時間2分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日土曜日は、8月に初めて参加する、
トライアスロンのレースに出る仲間とともに、
朝からバイク(自転車)の練習でした。
7時に私の家のそばの王子に集合し、
そしてひたすら北上。
埼玉の川越まで行って返ってくるという
約60キロのコースでした。
暑いけど、爽やか土曜の午前でした。
*
さて、日曜日は、
私のお勧めの一冊をご紹介させていただく、
「今週の一冊」のコーナー。
本日は、
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<今週の一冊>
『泣き虫しょったんの奇跡 <サラリーマンから将棋のプロへ>』
瀬川 晶司 (著)
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をご紹介させていただきます。
最近、将棋界では大きなニュースがありました。
若干14歳にて歴代単独トップの29連勝を成し遂げた、
藤井棋士四段。
今日はこのお話にも通じる、
「将棋界の実話」
に基づいた小説のお話です。
■最初に言いたいのが、
この本、あまり知られていませんが、
むちゃくちゃいい本です。
そして、私が、
人生で一番泣いた本です。
ですので、有無を言わさず、
ぜひ読んでいただきたい、
と声高に叫びたいほど。
その理由をお伝えするにあたって、
「将棋の世界」について、
少し説明させてください。
■「将棋界」というのは、
想像以上に厳しい世界です。
(私はこの本を読んでそのことを知りました)
まず、”プロ棋士”になるためには、
とんでもなく狭き門をくぐらなければなりません。
プロ棋士になるためには、
まず「奨励会」という日本将棋連盟が主催する会に、
所属します。
そもそも「奨励会」に入る時点で、
とんでもない猛者達の集まりなのです。
だから、中学を卒業と同時に、
高校もいかず、文字通り
「将棋」に全てをかけて、青春を全てぶつける。
そんな若者もたくさんいる。
では、そこまでして
「奨励会」に入り、時間と人生を捧げたら、
その後、どうなるのか。
入った後、23歳の誕生日までに初段、
そして26歳の誕生日までに四段に昇格できれば、
晴れて”プロ棋士”になれます。
が、実際は、プロになれるのは、
毎年”四人だけ(!)なのです。
奨励会には、毎年毎年入ってくる、
たくさんの棋士の卵が増えていく。
その中で、1位か2位にならなければ、プロになれない。
もし、なれなければ、
「退会処分」となるのです。
退会となれば、プロへの道は金輪際絶たれてしまう、
”プロ棋士”になることは、二度とできない、
それが将棋界の鉄の掟なのでした。
10代の青春、
20代の青春、
すべてを捧げて、退路を絶って、
将棋だけに全ての人生を捧げてきた若者たち。
彼らの中には、
「将棋」しか知らない人もいる。
だから、「将棋の道が閉ざされる」ということは、
すなわち、「人生の道が閉ざされる」と同義になる。
将棋がなくなったら、
何をすればいいのかわからない、
そんな重みがある世界が、
「将棋界」の現実なのです。
■そんな背景を踏まえて、
この『泣き虫しょったんの奇跡』の話。
この物語の主人公であり、
実在の人物、瀬川晶司さんは、
中学選抜選手権で優勝し、奨励会に入ったものの、
26歳になったその時、
プロになることができませんでした。
全ての青春を捧げてきたのに、
プロになれなかった。
彼は抜け殻のようになり、
「死ぬしかない」とまで思ったと言います。
*
しかし、その後、
縁あって、エンジニアとして働くようになります。
もう将棋と関わることはない、
そう思って将棋と縁を切ったはずの彼。
ですが、プロ棋士への道が絶たれたことがきっかけとなり、
辛くて仕方なかった”将棋”が、違ったものに見えるようになるのです。
中学の時にのめり込んだ
”将棋の純粋な面白さ”に再度惹かれ、
そして、アマチュアとして将棋を始めるのです。
■将棋の魅力に目覚め、
そして息を吹き返した彼。
そして、夢を諦めてからも、
力をつけ続け、そしてアマチュア名人戦に優勝するのです。
「もう一度プロを目指したい」
そう思い、願った瀬川氏。
しかし、将棋界には、
「奨励会からプロになる」という選択しかなく、
いわゆる”中途”でプロになるということは、
認められていなかった。
だから彼は、「将棋界」に
挑戦状を叩きつけたのです。
”プロ棋士を実力で倒したら、自分をプロ棋士にしてほしい”
そう、周りの人の協力やサポートの下、
日本将棋連盟の合意を得て、
そして、決戦の日を迎えるのです。
そして彼は、彼と、
将棋界と、世の中に奇跡を起こすのです。
■このストーリーは、
紛れもない、実話です。
世の中には、大きな力があり、
抗えないこともあります。
これまでの自分の人生を振り返り、
「今さら、もう遅い」と諦めたくなることだって
あると思います。
でも、本当の本当に、
心から願い、進み続ければ、何かが起こる。
そんな「奇跡」の存在を、
私たちに感じさせてくれる、
そんな本なのです。
『あきらめなければ、夢は叶う』。
言葉にすると、
安っぽく聞こえてしまうこの言葉。
でも、この本を読むと、
そんなよく言われる、でもにわか信じがたい、
純粋すぎるこの言葉を、信じてみたくなる、
そんな思いにさせられます。
夢を持つすべての人へ、
前へ進みたいと願うすべての人へ、
勇気をくれる一冊として、
ぜひ、一読頂きたい本です。
本当に、むちゃくちゃいい本です。