「プラトン」の『パイドロス』から学ぶ、"真実の愛"のあり方(後編)
(本日のお話 3306字/読了時間4分)
■おはようございます。紀藤です。
昨日は、3件のアポイント。
ならびに夜は、今週末に実施の研修プログラムの準備など。
企業向け『リベラルアーツを探求するワークショップ』の開催で、
私の尊敬する友人であり、英語の先生でもある藤田勝利氏とのコラボレーション。
彼はこんな本を出していますが、本当に勉強になります。
『ドラッカー・スクールで学んだ本当のマネジメント』(著:藤田勝利氏)
https://www.amazon.co.jp/dp/4534050984/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_tA7rCb0NZ37
今の世の中、テクノロジーが発展し、これからもっと時間が出来ていくでしょう。
そんな中、「真理を探求すること」こそが人間が行うことなのかもしれない、そんなことをつい考える今日この頃。
ギリシア語では、「暇」のことを「スクー」と呼びました。
ちなみに、その「スクー」現代の「スクール」の語源です。
つまり、「暇」を作り出し、学び(スクール)をする。
真理を探求する。知的な遊びを行う。
本質的に大切なことを見つめ、外的なものだけでなく、内的なものも発展させていく。
今の世の中、あらゆるものが「過剰」となり、疲弊している中で、
改めて「本当に大切なものはなにか」が問われているように思います。
その答えは私も持っておりませんが、1つ「リベラルアーツ」というのは、
今だからこそ大切な問いではなかろうか、
そのように思っている次第。
、、、ということで、今年は「リベラルアーツ」も、ワークショップとして提供していきたいと思います。
お楽しみに!
ちなみに、読者アンケートもまだまだ募集中です。
「行替えが多い」という方と、「これまでのままがいい」という方、
意見が別れているようですね。。。
ぜひご意見、お待ちしております!
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さて、本日のお話です。
昨日、「プラトン」の『パイドロス』のお話をいたしました。
そして、その大まかな概要は、
1,恋する相手の中に「神」を見る、という話
2,「魂の3つの部分(悪い馬、良い馬、馭者)」という話
という話でした。
本日も続けます。
タイトルは、
【「プラトン」の『パイドロス』から学ぶ、"真実の愛"のあり方(後編)】
それでは、どうぞ。
■「真実の愛」とは何か。
こんな事を言うと、ストレート過ぎて、なんだか照れくさくなりますね。
しかし、「愛」とは人類が誕生したときから、
否、それよりも前からずっと存在する共通の価値観です。
ゆえに、最も大切な人の感情であると思います。
「愛」という感情を持っているがゆえ、人はここまで発展してきたのでしょう。
そんな、「愛」(=恋/エロース)について、プラトンが語った話が、
先日の「魂の3つの部分」のエピソードなのでした。
■人が「恋する人に会う」と、どうなるか。
ここについて、『パイドロス』ではこのように書かれています。
(以下、引用です)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(馭者は)はじめのうちこそ、道にはずれたひどいことを強いられたのに憤然として、
これ(悪い馬)に抵抗するけれども、しかし最後には、苦しい状態が際限なくつづくと、
譲歩して要求されたことをするのに同意し、引かれるがまま前へ進む。
そしてそのまぢかまで来た時、今や彼らは愛する人の光り輝く容姿を眼にする。
だが、馭者がその姿を目にしたそのとき、彼の記憶は<美>の本体へと立ち返り、
それが<節制>と共に清らかな台座の上に立っているのを、再び目の当たりに見る。
呼び起こされたこの光景に、彼は恐れに震え、畏敬に打たれて、仰向けに倒れ、
倒れざまにやむを得ず、握った手綱を激しく後ろに引くため、その勢いに二頭の馬は、
両方共尻もちをついてしまう。
一方は逆らわないから引かれるがままに、暴れ馬の方は、非常にもがきながら。
(中略)
こうして幾度となく同じ目にあったあげく、
さしものたちの悪い馬も、わがままに暴れるのをやめたとき、
要約にしてこの馬は、へりくだった心になって、
馭者の思慮深いはからいに従うようになり、美しい人を見ると、
おそろしさのあまり、たえいらんばかりになる。
かくして、いまやついに、恋する者の魂は、
愛人の後をしたうとき、慎みと恐れに満たされるということになるのである。
引用:『パイドロス』(著:プラトン)岩波文庫より
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
■自分の中には、暴走する馬(悪い馬)がいる。
相手の飛びかかりたい。
思いの丈をぶつけ、本能のままいきたい。
でも、相手の中にある"素晴らしき美(=神)"を見るが故に、
その"恋する相手"に対して謙虚になってしまう。。。
自分の中にも、愛情をぶつけたい、という思いと、
慎み深くありたいという2つの葛藤の中にありつつ、
愛する相手に対して、悩みながら、もがきながら大切に接する。
、、、というイメージでしょうか。
そして、ソクラテス(プラトンの『パイドロス』より)は、
青年パイドロスに、こう語り続けるのです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
"かくして愛人(恋人)のほうは、恋を装うものによってではなく、
ほんとうに心の底から恋している者によって、
身は神のごとくありとあらゆる奉仕を受けるわけであるし、
それにもともと彼自身の天性が、自分に使えてくれるこの人と親しくなるように
生まれついているわけであるから、(中略)
やがて時の経つにつれて、彼の年齢が熟するのと、
物事の必然の成り行きの結果として、彼は自分を恋しているものを、
交際の相手として受け入れるようになるのである。"
引用:『パイドロス』(著:プラトン)岩波文庫より
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
■この文章がどういうことを表すのか。
それを読み解いてみると、非常に面白いのです。
ちなみに、このポイントは、
ソクラテスが、青年パイドロスに、
何者かに憑かれたかのように壮大な「物語」として「恋(エロース)」の話をしている、
という背景にあります。
ソクラテスは青年パイドロスに恋をしていた。
すると、宇宙論的物語を語りつつも、
ソクラテスはこう伝えたかった、とも考えられそうです。
(私の意訳)
「お前(青年パイドロス)の中に、私(ソクラテス)の魂が、
かつて一緒だったゼウスの魂を感じている。
自分の中に、慎み深い自分と、迫りたい自分がいるが、
お前の中の美しさに畏怖の念を覚える。
同時に、私はお前を育て、より神へと近づけていきたい。
素晴らしい美へと、育てていきたい。
それは表面的なものではなく、心からそう思っているし、
実際、私とお前は天界で1つの魂としてつながっていた。
だから、恋に落ちる運命にあるのだ」
、、、そう、語って聞かせているようにも見えます。
つまり、ソクラテスの青年パイドロスに対しての、
『「壮大なる比喩」を用いた口説き文句』
である、ということ。
■そして、『パイドロス』の中で、ソクラテスは、
追い打ちをかけるようにこう語ります。
愛する2人が近づいていく時、
"この美の流れも、ふたたびもと来た美しい愛人のもとへと帰り、目を通って中へはいる。
中へ入ったこの流れが、本来通るべき路を経て魂まで行き着き、
彼の心をかきたてるとき、それは翼の出口をうるおし、
翼が生えんとする衝動を与え、そして今度は恋されているものの魂を、
恋で満たすことになるのである"
、、、と。
つまり、天上で一緒だった魂が、進路を間違えて地上に落ちてしまった。
それが人間の「肉体」に閉じ込められた私達の魂である。
しかし、恋するもの同志が一緒になると、
"翼が生える衝動”
すら覚える。それは、恋することにより、美へ近づき、
そして神のいる天界に戻ろうとするようなものである、、、
というのです。
、、、誠に、美しい表現だな、と私は思います。
■そして、これらの話を読み解きながら、思うのです。
いつの時代も、愛や恋というのは共通のもの。
そして、その崇高な感情が、一体どういうものなのか、
ということを、立ち止まって考えてみると、
新しい視点が得られるようにも思えるのです。
何となく今の世の中、
・コスパが悪いから、結婚しない
・色々面倒くさいから、恋愛はしない
・悩んだり、気を使ったりするのが大変だから、
付き合いたいとか思わない
という若者が増えている、そんな記事を読んだことがあります。
それがどれほど真実なのかわかりませんが、
情報が溢れ、人と人との関係もバーチャルなものになり、
相手と向き合う時間が少なくなっているのが、現代の世の中のように、私は感じています。
そんな中この、プラトンの『パイドロス』の話には、
【「真実の愛」とはいかなるものか】
という示唆が含まれているのかもしれせん。
・一緒にいる相手への尊敬の思い
・出会った相手との、見えない絆
・愛情というものの神聖さ
・人と関係を作るときに起こる葛藤
、、、
そんな、人間臭く、ときに重たく、面倒くさいように思えるものでも、
だからこそ、貴重で、得るものも大きい。
故に、"翼が生える"ごとき心の躍動もあるのかもしれません。
そんな
「愛のあり方」
について、改めて考えた次第です。
、、、という「古典」の楽しみ方のお話でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本日も皆様にとって、素晴らしい1日になりますように。
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<本日の名言>
魂には眼がある。
それによってのみ
真理を見ることができる。
プラトン
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