今週の一冊(GW番外編)『エリック・ホッファー自伝 構想された真実』
(本日のお話 2958字/読了時間5分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は、茨城の妻の実家にて読書や、
甥の遊び相手をしたりしておりました。
また実家に置かれている
調律をされていない音の外れたピアノで、
以前好きだった『Wind of Life』(久石譲)を弾いて楽しんだり。
(昔ピアノを習っていたのです)
*
さて本日の話です。
最近、読んだ非常に面白い本があります。
それが『エリック・ホッファー自伝 構想された真実』。
今日は「今週の一冊(GW番外編)」ということで、
この本からの気づきを、皆様にご共有させていただきたいと思います。
タイトルは、
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<今週の一冊>(GW番外編)
『エリック・ホッファー自伝 構想された真実』
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それでは、どうぞ。
■エリック・ホッファー(1902~83)。
アメリカの社会哲学者として有名な方(だそう)。
というのも、私はこの本を読むまで、
彼のことは全く知りませんでした(汗)
先日、別の書籍で、
「人間の生命の逞しさを感じさせる本」などと、
紹介されていたため、興味あり購入したところ、ビンゴ。
その面白さにグイグイ引き込まれて、
あっという間に読んでしまいました。
■おそらく以下、エリック・ホッファーの半生をみれば、
その波乱続きの人生に驚かされずにはいられません。
以下、エリック・ホッファーの半生です。
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・7歳で失明、15歳で突然視力を回復。
・正規の学校教育を一切受けておらず。
親が死に、18歳で天涯孤独の身になる。
・28歳の時に、毒物を飲んで自殺しようとする。
しかし、結局自殺未遂に終わる。
・「私は死ななかった。だがその日曜日、労働者は死に、放浪者が誕生したのである」
そう彼は言い、季節労働者となり、10年間放浪者としてカリフォルニア州各地渡り歩く。
・トマトの収穫、ホップ摘み、砂金発掘などの季節労働。
そのかたわらで、化学、数学、鉱物学などあらゆる学問にまい進し、
読書と思索を重ねていく。
・41年から67年まで湾岸労働者として働きながら、著書『大衆運動』を発表。
・カリフォルニア州大学バークレー校にて、政治学を講じる。
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そして、この『エリック・ホッファー自伝』は、
彼の40歳までに体験した、彼自身の物語を語った本です。
■著書自体は200ページ弱の短いものなのですが、
「人生とは、かくも数奇なものになり得るのか」
と思わされる、波乱に富んだストーリー。
かつ、エリック・ホッファー自身の、
”体当たりで人生にぶつかってきた強い言葉”を通じて、
考えさせられる事が非常に多くあるのです。
私自身の、言葉を紡ぐ力では、
その著書に含まれる多くの気づきを、
100%皆様に共有できないことが、非常にもどかしい限り。
、、、とはいえ、その中でも、
特に感銘を受けたお話をいくつか皆様に、
「おすそわけ」させていただきいと思います。
■その一つが、
ホッファーが語る「充実した人生とは?」という問いの答えについて。
以下、彼が語った言葉を、ご紹介いたします。
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”有意義な人生とは「学習する人生」のことです。
人間は、自分が誇りに思えるような技術の習得に身を捧げるべきです。
技能療法の方が、宗教的な癒やしや精神医学よりも大事だと思います。
技術を習得すれば、たとえその技術が役に立たないものでも、
誇りに思えるものです。”
※引用:『エリック・ホッファー自伝 構想された真実』より
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そして彼は続けて言います。
『成熟するとは、五歳の子どもの、
真剣な遊び心(=技術習得欲)を取り戻すことだ』
…と。
つまり、
(子供のように熱中、没頭するレベルで)「学び、技能を習得すること」
これが大事ではないか、と言うのです。
それだけだと、なんだそんなことか、
で終わるかもしれませんが、彼の言葉は重みがあります。
以下その理由を、ご紹介させていただきたく。
■おそらくホッファー自身は、
天賦の才として、物事を読み書きする能力に、
恵まれていたようです。
7歳のときに失明をしたものの、
それまでの間に、ドイツ語と英語の読み書きができていました。
そして、突如視力が回復した後も、
いつまた目が見えなくなるかわからないと言うことで、
読めるだけ読んでおこうと言い、
物理学、数学、鉱物学、化学の大学の教科書を独学でマスターしてしまいます。
そして、その彼の深い思索と知識は、
その彼の半生の中で
”「安定的な仕事」や「お金」”
に繋がることも、幾度となくありました。
しかし、彼はそんな時、常に立ち止まって、
「自分と向き合う」のです。
それが、自分自身の素直な気持ちに対して、
誠実で、裏表がなくて、自分への裏切りがなく、
それを実行する勇気があって、
そこが、人としてなんとも格好よいのです。
■例えば、ホッファーが、
オレンジのセールスをした時の話。
彼は、セールスの工夫で、
オレンジを飛ぶように売りさばきました。
しかし、その時のことを、彼はこう語ります。
(以下、引用です)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
”遅い昼食をとろうと腰をかけ、稼いだお金を数えているうちに、
次第に深い疑念にとらわれ始めた。
それはいままでに感じたことがなかったもの、
― 恥辱だった。
平気で嘘を付き、お世辞を言い、
多分なんでもしたに違いない自分に愕然とした。
明らかに、物を売ることは私にとって精神を腐敗させる元凶である。
おそらく、物を売るためには人殺しさえ厭わなかったかもしれない。
私は概して堕落しやすく、そうであるからこそ、
誘惑を避けることを学ばなければならなかった”
※引用:『エリック・ホッファー自伝 構想された真実』より
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そして、このオレンジ売りの仕事を辞めます。
■また、彼が砂金洗いのバイトの間に、
偶然、レストランで「柑橘物類研究所 所長」の
スティルトン教授に出会います。
彼は、ドイツ語の植物に関する本を読み解くのに苦戦しており、
ホッファーはドイツ語の知識も、植物学への知識もあったため、
「お手伝いしましょうか」と会話が始まるのです。
そして、研究所の一員になり、
教授が頭を抱えていた植物の病気である「白化現象」を、
その独創性で見事に解決してしまいます。
ちなみに、その前の彼は肩書としては「季節労働者」で、
砂金洗い、レストランの皿洗いです。
研究所の仕事といえば、おそらく安定感もあり、
当時、食べていく上では魅力的であるはず。
しかし、ホッファーはこう述べます。
(以下、引用です)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
”教授は(その後も)研究所の仕事を用意してくれていた。
しかし、私は本能的にまだ落ち着くべきではないと感じ、放浪生活に戻った。”
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
、、、と。
■彼は、とことん自分の「正直な思い」に対して、誠実でした。
「安定やお金」も確かに大切。
でも、それ以上に大切なことはもしかすると、
自分自身の「心の声」に従うことであり、
それを実行する「勇気」を持つことである
そんな「人としての哲学」を考えさせられるのです。
そして、その彼が語る大切にしている人生哲学の一つが
『成熟するとは、五歳の子どもの、
真剣な遊び心(=技術習得欲)を取り戻すことだ』
と語るところに、いたく感銘を受けたのです。
■エリック・ホッファーの言葉から感じるのは、
”表面的な手段ではなく、
深い部分で自分が本当に何を求めているのか”
このことを向き合い、
そして実行する勇気に溢れた姿勢のように思います。
読みやすく、自分のあり方を考えさせられる、
素晴らしい本です。
原書を読んでいませんが、翻訳された日本語も秀逸なのも素敵。
おすすめです。
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<今週の一冊>(番外編)
『エリック・ホッファー自伝 構想された真実』(訳:中本義彦)
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