メールマガジン バックナンバー

1904号 2019年5月5日

今週の一冊『みかづき』

(本日のお話 2157字/読了時間3分)


■こんにちは。紀藤です。

昨日は、午前中には「礼法」のレッスン第二回目。

そして、午後からは立川に移動し、
友人と共にトレイルランニング20キロ。

普通に良い天気だったのに、
10キロ過ぎからとてつもない凍てついた風と共に、
大量の雹(ひょう)が降ってくるという想像もしない展開に。

雹に打たれ、凍えながら、痛い痛いと走るランニングは、
ツラいけどどこか面白みがある新鮮な体験でした。

そして、その後、家に帰ってからは、
映画『ラスト・エンペラー』を視聴。

(清王朝最後の皇帝{満州国}を舞台とした映画で、
一人の数奇な人生と、歴史を同時に学べる深くて良い映画でした。お勧めです。)



さて、本日のお話です。

毎週に日曜日は、お勧めの一冊をご紹介する、
「今週の一冊」のコーナー。

今週の一冊は、

=============================

『みかづき』(著:森 絵都)


=============================

です。


■NHK土曜ドラマにもなった、この作品。

昭和から平成にかけて社会が変わる中で、
「塾」を立ち上げたある夫婦(一族)から始まる、
何世代にも渡って描かれる長編小説です。


内容を語る前に、一言。

この本は、スゴイ。

(最近、毎回本の紹介でスゴいと言っていますが、
 今回も、本当に素晴らしい本です)

「得るものが圧倒的に多い小説」でした。


■ちなみにこの本は、
「2017年 本屋大賞2位」に輝いた作品でもあります。

”NHKドラマ化&本屋大賞”の高評価も納得の作品。

壮大な人間ドラマだけでなく、
教育を舞台にした社会問題も描かれます。
重厚かつ、スケールが大きい、大河小説なのです。

600ページを超える長編ではありますが、
読んでいて全くそれを感じさせない、非濃厚な内容です。



■とはいえ「素晴らしい本」などというと、
人により色んな定義があると思います。

この『みかづき』が、「なぜかくも素晴らしいか」というと、
一つ挙げられるとしたら、

「得られるものが圧倒的に多い」

ところ。

この「本から得られるもの」も、
たくさんたくさんありますが、良い本の定義とは、

『感情的、知性的な揺さぶりの”絶対量”』

ではないかと私は思います。
そしてこの『みかづき』は、本当にそう。

圧巻。驚嘆です。


■少しこの「得られるもの」を深掘りたいのですが、
例えば、山崎豊子氏の小説は、

「得られるものが圧倒的に多い本」

の一つだと個人的に思います。

『不毛地帯』『大地の子』『華麗なる一族』
『沈まぬ太陽』『白い巨塔』などは山崎氏の

・圧倒的な取材に基づいた。
 その時代・業界の「社会問題」のリアルな設定
 
・圧倒的な人間観察眼よりもたらされる、
 「人間の複雑さな心象風景」を描く技術

・読者を引き込むストーリ―設計
 
を通じて、その文字が解像度が高く立体的な現実感をもって、
自分自身の知性に、頭脳に、感情に、何重もの揺さぶりをかけてくる。

そして、自分の「心」に、
大きな刺激や体験、痕跡を残してくれる、と感じるのです。

ゆえに、読み終えた後に、

(なんと、得るモノが多い時間だったのか。。。)

と、感動を通り越して、
ぼんやりしてしまったりします。


■すなわち、「素晴らしい本」とは、

1,「学びになった」感覚(=”社会問題”に付いて詳しくなれた)
2,「教訓になった」感覚(=”人間の怖さ”について学んだ)
3,「感動した」感覚(=”感情”が大きく揺り動かされた)

この「三重層(+α)」の重厚さが、
言葉にできない得た感を与えてくれて、
「素晴らしい本」たらしめてくれるのだろう、

と思うのです。


■、、、という、前提で
『みかづき』の魅力に戻ります。

しかし、山崎豊子氏の小説の場合、
一点難点をお伝えすると、

”きちんと理解して読むには、体力と知力を使う”

ところ。
(単に、私が勉強不足なだけかもしれませんが…
 上・中・下がデフォルトで”超長い”のは否めません)

しかし、今回ご紹介の『みかづき』は、
長編小説だけども、解像度が細かすぎず、
ノンフィクション感もあるフィクションであり、

な幾重にも重なる「得られるものの多さ」を、
ストレスなく、ジェットコースターのように飽きさせない展開で、
登場人物の生きる時空を越えた世界に一気に引き込んでくれるのです。


■この本の魅力を、引き込んでくれる要因も含めて、
羅列してみると、


・平易で読みやすい文章(ストレスがない)

・夫婦、親子などの人間関係のドラマから描いていて共感できる

・身近な存在(夫婦、親子)が理解し合う難しさが共感できる

・何人もの人生の追体験できるような濃厚なストーリー
 (心が揺さぶられる、人生の儚さ、奥深さを噛みしめる)

・昭和から平成へと移り変わる時代背景と、各時代に生きた人の価値観の違い
 (若者でも、じいちゃん、父母が生きた時代を年齢関係なく想像できる)

・全ての人に関わる「学校教育」の問題を考えられる
 (義務教育の問題点、ゆとり教育とは?などについて)

・一つの道を貫く生き様の”あり方”


などが挙げられます。

万人に共感できる身近な人間にスポットを当てたテーマから入りつつ、

多くの人物の状況と心情をパズルのように絡ませながら
一つのキーワード『みかづき』というタイトルに収斂させていく、
その世界観は、圧巻の一言です。


そしてそれを具体的に形にしている著者の森氏の
秀逸な比喩、物語の構造、ストーリー展開、
伏線のはり方、表情豊かな登場人物の描き方には、
感動と共に、ため息をつかずにはいられません。


■具体的な内容については、以下のように紹介されています。

この紹介だけではもったいない!と思うほど、
深く壮大な「大河小説」です。

特に教育に関わる方(お子さんをお持ちの親も含めて)は、
必読の一冊だと思います。

(以下、引用です)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「私、学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在になると思うんです」

昭和36年。人生を教えることに捧げた、塾教師たちの物語が始まる。
胸を打つ確かな感動。著者渾身の大長編。

小学校用務員の大島吾郎は、
勉強を教えていた児童の母親、赤坂千明に誘われ、ともに学習塾を立ち上げる。
女手ひとつで娘を育てる千明と結婚し、家族になった吾郎。
ベビーブームと経済成長を背景に、塾も順調に成長してゆくが、予期せぬ波瀾がふたりを襲い――。 


阿川佐和子氏「唸る。目を閉じる。そういえば、あの時代の日本人は、本当に一途だった」
北上次郎氏「圧倒された。この小説にはすべてがある」(「青春と読書」2016年9月号より)
中江有里氏「月の光に浮かび上がる理想と現実。真の教育を巡る人間模様に魅せられた」

驚嘆&絶賛の声、続々!

昭和~平成の塾業界を舞台に、三世代にわたって奮闘を続ける家族の感動巨編。


※Amazon内容紹介より:『みかづき』 (集英社文庫)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

とにかく、読んでみてください。

今を一生懸命、生きていこうと思える一冊です。


===================================
<今週の一冊>

『みかづき』(著:森 絵都)


===================================

365日日刊。学びと挑戦をするみなさまに、背中を押すメルマガお届け中。

  • 人材育成に関する情報
  • 参考になる本のご紹介
  • 人事交流会などのイベント案内

メルマガを登録する

キーワードから探す
カテゴリーから探す
配信月から探す