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1953号 2019年6月26日

情熱・思いやり・悲哀・人間らしさ、、、それは「◯◯◯◯◯」によって伝わるもの

(本日のお話 2056字/読了時間3分)

■おはようございます。紀藤です。

昨日は、研修企画の準備、
並びに溜まっていた事務処理など。

また夜からは、コーチングの勉強会に参加。
現在、いろいろな種類のコーチングの勉強会に行き、
自分の手法を改めて見直しています。

常に、新しいやり方も学びつつ、
皆さまの人生のサポートすべく、
自らをアップデートしていきたいと思います。



さて、本日のお話です。

先日トライアスロンの旅路の飛行機で本を読みながら、

『わかりあえないことから ―コミュニケーション能力とは何か―』(著:平田オリザ)
https://www.amazon.co.jp/dp/4062881772/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_YIQeDb5CXW0B1

という本に出会いました。

本当に名著で、感動しています。

今日はその本から学んだことについて、
皆様にご共有させていただきたいと思います。

タイトルは、


【情熱・思いやり・悲哀・人間らしさ、、、それは「◯◯◯◯◯」によって伝わるもの】


それではどうぞ。


■平田オリザさんという劇作家の方がいます。

先述の『わかりあえないことから』は、

平田さん自身の演劇の知識・歴史、
日本と西洋の文化と言葉の違い、
日本の国語教育の問題点などから、

「独自のコミュニケーションの哲学」を
目から鱗の話をコンボのように叩き込んでくれる著作です。

豊富な事例と事実と切り口から、
あまりにも引用したい点がたくさんありすぎる名著。

ここで一言には語れないので、
もし「コミュニケーション」に興味がある方は、
ぜひ読んでみてください。

今起こっているコミュニケーションの問題を、
考えたこともない切り口から考察していて、
大いなる発見があるはずです。


■そしてその著書の中で、
ある「伝える/伝わる」というコミュニケーションにまつわるお話がありました。

それは、

”アンドロイドを、「人間らしく」するには何が必要か?”

という研究でした。

一言で言えば「アンドロイドに演劇をさせる」というのです。

そこで、大阪大学が世界に誇る天才ロボット博士の石黒浩氏と、
演劇の第一人者の平田オリザ氏が組んで、
「人間らしい演技をするアンドロイド」を作る研究をしたそうです。



すると、わかったことがありました。

人間を、人間のように見せているもの、
無機質な機械ではなく、温かみ・深み、
「人間らしさ」を感じさせるものとは、


【無駄な動き】
(=「マイクロスリップ」と呼ぶそうです)

であった、と言うのです。


そして、一流の役者とは、
この「マイクロスリップ」のはさみ方が絶妙であると。



例えば、何か話出す前に、

ちょっと視線をずらしたり、首を傾けたり、
無駄な枕詞をつけたり、良い淀んだり、
時に文法的にちょっと妙な言い回しだったり…

このようなちょっとした「無駄な動き」「ノイズ」こそが
リアルさを醸し出して、”演劇に人間らしさが入り、伝わる”というのです。

逆に、「無駄な動き」がないと、
小学生の演劇のように言っている日本語は正しくとも、
芝居くさい印象になる、無機質な印象になる、とのこと。


■そして、この話を聞いて、
特に研修に関わる身として、思い出す話がありました。


これは教育の第一人者である立教大学の中原教授が、
ブログで言っていた話なのですが、

『あなたの研修に「野生」はあるか?』

という問いを教育に関わる関係者に投げかけていたのでした。

教育に関わる方なら思いあたるかと思いますが、
例えば、同じ研修プログラムを何度も何度もやっていくと、
多くの場合、洗練されていくものです。

・どこで研修受講者がつまずくか、
・どんな言い回しが伝わりやすいか、あるいは伝わりづらいか。
・どんなワークが機能するのか、しないのか。

、、、など。

それらをひたすらPDCAで回し改善していくと、
「無駄な動き」が取り除かれ、「必要なものだけ」が残っていきます。

それは表現としては「洗練」されていると言えます。
しかし、別の観点から見ると、「無駄な動き」がなくなるがゆえ、
「野生(=人間くささ、生っぽさ)」が失われていることにもなるのではないか、、、

そんな投げかけなのでした。


■確かに、思いあたるフシがあるのです。

ベテラン講師の人や、何度もやってきている人を見ると、
やり慣れすぎていて「こなれ感」が醸し出されていることを。

それは、経験による自信、安定感とも言えますが、

「無機質で情熱が伝わらない」
「ライブ感が少ない」
「予定調和的に感じる」

こともある、と感じることがあるのです。


何十回もやっている研修だけでなく、
何度となく繰り返される会議でも、
何度か繰り返しているプレゼンテーションでも同じ。

やればやるほど、意識をしないと「無機質」になりかねない、
そう思ったのでした。

■しかし、このことはまた、
『「駆け出し」の人にとってのチャンス』になりえます。

「野生」とは”未熟さ”の現れといえるでしょう。
洗練される前の「生の」「粗削りの」状態かもしれません。

しかし、見方を変えると

『「生っぽさ」があるからこそ伝わることもある』

これもまた一つの真なり、と思うのです。


つまり、まだまだ駆け出しの人だったとしても、
そこについ「無駄な動き」が入ったとしても、
それはそれで、その時にしかない「野性味」がある、

野性味により、本気で伝えようとしたことによって、
洗練された状態の人には伝えられない価値にも成り得る、、、

そんな捉え方もできるのでは、と思ったのです。


もちろん、どちらが求められるか、といえば、
「洗練されかつ、野生がある」ことなのでしょう。

しかしどんな人でも、最初から完璧であることなどはなく、
その道で「駆け出し」「未熟」な状況を受け入れ、進むステージがあるのです。

それでも、経験がなくとも、全く新しい試みでも、
必死で伝えようとすれば”伝わる魅力”がある。

それは、

【情熱・思いやり・悲哀・人間らしさ、、、それは「無駄な動き」によって伝わるもの】

なのです。

ゆえにどんどん発信し、伝えようともがき、
チャレンジしようとすること。

それはとても価値のあるのことではなかろうか、と思うのです。


最後までお読みいただきありがとうございました。
本日も皆さまにとって素晴らしい1日となりますように。

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<本日の名言>

マイナスをプラスに変えることができるのは、
人間だけが持っている能力だ。

アルフレッド・アドラー(オーストリアの精神科医)
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