今週の一冊『他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論』
(本日のお話 2534字/読了時間4分)
■おはようございます。紀藤です。
昨日は終日コーチングの研修(受ける方)。
ロールプレイングなどをやり、
フィードバックを受ける、、、
そんなことを繰り返した1日でしたが、
多くの気づきがありました。
私を含めて人は、
”つい自分のやり方にとらわれてしまう”
ことがあるものです。
ゆえに、その道のプロ、
同じ学びの道にいる人のアプローチを観察する事は、
自分に大いなる刺激を与えてくれます。
持つべきものは、「場と仲間」ですね。
また、夜はムエタイのジムへ。
タイ人のコーチのスネが、
鉄パイプのように硬くて、
ちょっと触れただけでアザになってしまいました。
おそるべし。
*
さて、本日の話です。
毎週日曜日はお勧めの1冊をご紹介する、
今週の1冊のコーナー。
今週の1冊は、
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『他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論』
宇田川 元一 (著)
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です。
■少し私の話になりますが、
現在、「システムコーチング」というものを学んでおります。
これは、通常の”1対1のコーチング”とは違うもので、
職場のチーム、家族、サークル、
その他コミュニティー、、、
人々が集まる「組織全体」を対象に行うコーチング、
とされています。
そして今、かなりこの
「システムコーチング」が
注目が高まっているのです。
■それは、なぜか。
理由は、
”人々は相互に影響与えあっているから”
です。
当たり前じゃないか、と思うかもしれませんが、
案外人は、それぞれ別々の個体なので、
”組織の中にいても、
一人一人がただ立っているだけ”
とか
”同じ姿かたちをしているから、
自分と同じように考えられるはず”
(いや、自分と同じように考えるのが正しいのだ)
という前提条件を持っている節が、
あるように思うのです。
私も正直なところ、
メルマガで偉そうに語っていますが、
人の考えに腹が立つこと、まあ、あります(汗)
■しかし、人は同時に、
別々の個体でありながらも、
”相互に何らかの影響与え合っているシステムである”
とも言えます。
例えば、家族であれば、
妻がご機嫌ナナメであれば、
多くの場合夫も、子供もちょっと空気が悪くなったり、
何らかの影響受けるもの。
逆もまた然りです。
あるいは、組織内において、
そのチームのリーダーが発言した事は、
チームに影響与え、元気になったり、
逆にやる気がなくなったりします。
会議中に、携帯をいじっていたら、
その場の雰囲気として
「おいおい、もっと真面目に参加しろよ」とか、
「士気が下がるからやめてほしい」とか
それまた何かしらの影響を与えるのでしょう。
それは、その場が、
一つのシステムであり、
”システムとは相互に影響与えるものだから”
に他ならないのでしょう。
■それはまるで、
自動車における
エンジンと、タイヤと、
ハンドルと、アクセル、ブレーキの関係のよう。
どれか1つの調子が悪くなると、
他の部分も影響を受けて、上手く走れなくなるのです。
繰り返しますが、人の集まり(組織)も、
ひとりひとり別々のように見えて、実は、
”自動車のように影響与えあっている「システム」である”
のです。
そして、このシステムの影響により、
お互いの「関係性」が課題に影響を与え、
正論や理屈では解決できないことが生じ、
私たちは「他者と働く」上で悩み、迷うのです。
■、、、と、前置きが長くなってしまいましたが、
今回、ご紹介する1冊、
『他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論』
宇田川 元一 (著)
は、
”組織の生々しい現実
ノウハウやスキルで一方的に解決ができない問題、
向き合うのが難しい問題をいかに解くか”
について向き合った1冊です。
具体的には、
【対話とナラティブ・アプローチ】
という手法で関係性から生まれる課題を、
解決、解消、緩和させていくことを提案しています。
■本書のキーワードは、「ナラティブ」。
ナラティブとは『物語』を意味します。
人は、それぞれが持っている立場・役割・専門性等によって、
”解釈の枠組み”を持っています。
例えば、”営業”であれば、
「数字を達成することこそが正しい」
という解釈の枠組みを持っているかもしれません。
”法務”であれば
「リスクを最小化させていくことが正しい」
と考えているかもしれません。
あるいは、”広報”であれば
「人々を注目をさせる行動こそが必要なことだ」
と思うかもしれません。
それぞれ、「前提としている正しさ」が違うのです。
そして、上記の役割はわかりやすいものですが、
これまで受けてきた教育、経験、出会った人、価値観で、
”仕事に対するあるべき論”も違えば、
”職場の人付き合いのあるべき論”も違えば、
”休日の理想的な使い方”も違うのです。
見えないだけで、人は全く違っており、
「わかり合えるほうが奇跡」といえるのかも、
と思うほど。
■皆、大人なので、
”相手の立場に立った風”
で発言をします。
でも、本当にそうか、というと、
実はそれぞれの立場・役割によって生まれた、
”ナラティブ(物語)”
に従って、すべての発言、判断をしていないか、
ということなのです。
、、、というより、間違いなく、しています。
してない人は、いないのです。
していない、といったら、
多分その人は、自分の物語に気づいていないだけ。
■”解釈の枠組み”は、前提条件の違いとなります。
ゆえに、何か問題が起こった時、
議論やディスカッションをしたときに、
お互いの立っている視点が全く違うため、
”どちらも正論なんだけども、
一向に歩み寄ることができない”
ということが起こるのです。
そしてずっと平行線のまま…。
アイツとはわかり合えない。
そして、「妥協の旅」が始まるのです。
■では、どうすればその問題を解決できるのか。
それが
1,自分と相手のナラティブ(物語)の違いを理解する
2,その「溝」の間に橋をかける
ことである、というのです。
そもそも、
・自分と相手の物語にある間の”溝”を、
きちんと「観察」していなければ、
・溝があると言うことも「認識」できず
・結果、その溝の間に、
橋をかける(「解決」する)ことができない.
もの。
■この本書の中では、
・「ナラティブの違い」に気づく方法、
・ナラティブの間に橋をかける方法等について、
具体的かつ論理的に説明をしてくれます。
本の厚さとしては200ページ程度の薄い本。
内容はとても濃く、特に、
個人的にはあとがきは必見です。
著者の個人的なご経験をもとに、
”相手のナラティブ(物語)を理解しようとすることが、
いかに人との付き合う上での重荷を減らしてくれるか(人を責めずにすむのか)”
が書かれています。
職場や、家族、コミュニティの「関係性」に対して、
課題を解決したい方、さらに良くしていきたい方は
きっと良い気づきがあるかと思います。
よろしければ、ぜひ。
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<今週の一冊>
『他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論』
宇田川 元一 (著)
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