今週の一冊(続・番外編)『ポジティブ心理学の挑戦 ~”幸福”から”持続的幸福”へ~』(2)
(本日のお話 2455字/読了時間3分半)
■こんにちは。紀藤です。
昨日火曜日は2件の打ち合わせ。
また、1件のコーチングでした。
重ねて、研修の企画など。
*
さて、本日のお話です。
昨日、今週の一冊(番外編)ということで、
『ポジティブ心理学の挑戦 ~”幸福”から”持続的幸福”へ~』
という本をご紹介させていただきました。
今日も、その続きをご紹介できればと思います。
タイトルは、
【今週の一冊(続・番外編)『ポジティブ心理学の挑戦 ~”幸福”から”持続的幸福”へ~』(2)】
です。
■昨日お伝えしたお話が、
”幸せ”という曖昧な言葉から
一歩進んだ「幸福理論」へと、
ポジティブ心理学
(心に病を持った人でなく、普通の人をよりよくするための心理学)
は発展してきた、というお話でした。
ちなみに、「幸福理論」とは
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「幸福理論」の3つの要素
1)ポジティブ感情(楽しい、歓喜、恍惚感、心地よさなどの快の人生)
2)エンゲージメント(フロー、時が止まる感覚、充実した人生)
3)意味・意義(自分よりも大きいと信じるものに属して、そこに仕える生き方)
→ これらの3つの要素が「人生の満足度」を決めるとする。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ということをお伝えしました。
■こんな風に言うと、
私のような素人目からすると
「「幸福」もだいぶ細かく分析されてるんだなー」
くらいに感じたのですが、
この書籍を少し読み進めると、ところがどっこい。
ペンシルベニア大学心理学部で、
ポジティブ心理学の大家であるセリグマン教授曰く、
「幸福理論は、未熟であった」
と早速、語るのでした(!)。
■そして、セリグマン氏が考えを改め、
今、新・ポジティブ心理学として提唱されているのが、
『ウェルビーイング理論』
というものです。
その名の通り、
ウェルビーイング(Well Being)。
直訳すると「良いあり方」です。
氏曰く
「幸福ではなく、”持続的な幸福”(Flourish)」
ということだそう。
■ちなみに、何が未熟だったかというと、
「これまでの幸福学は、
人生の満足度、すなわち”気分”を測定するもの」
という前提があると言います。
ただ、前提として
「自分がどれくらい良い気分でいるか」
という項目は、あくまで主観であり、気分。
そこに重きが置かれすぎていて、
「じゃあ、明るく楽しくないと本当に幸せじゃないのか?」
という疑問を呈したのでした。
■かつ、学術的な視点からすると、先述の
1, ポジティブ感情
2,エンゲージメント、
3,意味・意義
が「幸福理論」の要素に入っていても、
実際は、人生の満足度=気分に左右されすぎる、
ポジティブ感情は気分が一部はいるけれど、
じゃあ、エンゲージメント、意味・意義は、
明るい気分に影響しているの?と問うてみると、
いや、そこの因果関係も曖昧だよね、
その点も理論として不備があるよね、
と語っている(よう)でした。
(なんだか複雑だったので、
私の解釈も入っているかもですが、、、
そんなニュアンスでございます)
■そして氏は
「ウェルビーイング(持続的幸福)」
について理論を深ぼっていきます。
ウェルビーイングとは、
何も”明るい気分”だけで
構成されているのではない。
例えば、
・自分の仕事にどれくらい意義を見出し、
全力で打ち込んでいるのか、とか
・自分が大切に思う人々と
どれくらい深く関わっているのか
も影響している。
ゆえに、
「もっと正確に、ウェルビーイングに影響を与えている構成要素が何かを、
はっきりさせようではないか」
ということで新たに考えたものが、
以下の5つの項目なのでした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<ポジティブ心理学のテーマ「ウェルビーイング」を決める
5つの要素(PERMA)>
P:ポジティブ感情(Positive Emotion)
E:エンゲージメント(Engagement)
R:関係性(Relationship)
M:意味・意義(Meaning)
A:達成(Achievement)
※ 『ポジティブ心理学の挑戦 ~”幸福”から”持続的幸福”へ~』 より引用
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
とのこと。
■この5つの要素がパワフルなのは、
上記の5つがそれぞれ独立しており、
「他の要素に影響を与えない独立した要素」
であること。
この5つだけがウェルビーイングに関わるという
単純なものでもないですが、大きな因果関係があり、
この5つを高めると、ウェルビーイングも高まります。
■すなわち、ここから言えること。
(ようやく、私たちの日常に繋げます)
それは、
「もし私たちが「ウェルビーイング(持続的幸福)」に近づきたければ
『5つの要素(PERMA)を高めていけば、
その状態(ウェルビーイングの状態に)必ず近づく』」
ということ。
このことを「理論的に」証明しているのが
この著書の最も着目すべきポイントである、
と思ったのです。
■自己啓発書を否定するわけではありませんが、
「こうすれば幸せになる系の本」は、
学問をベースとした信頼性に
どうしても欠けるところがあります。
ゆえに、
「それは本当にそうなの?ファクトは?」とか、
「100人を、対照群と実験群に分けて、
比較した時に確実に効果があったと言えるの?」とか、
「抽象的な概念で煙に巻いていない?」とか、
と問われたとすると、
確かに、うっ…と答えに窮するところもある、
と私は感じます。
それは、多くの「ポジティブ系の本」は、
あくまで一つの見解でとどまるものが多く、
背景に学問としての研究・実験がないからなのでしょう。
■しかし、この本で語られる
「ウェルビーイング理論」
そして、先述の5つの要素、
また、それを高めるためのエクササイズは、
心理学的な著名な試験、プラセボ対照、
ランダム割付け等もクリアしているところが、
非常に納得できるものだ、と感じるのです。
例えば、著書の中で一般的に
簡単に実行できるものとして、
・『うまくいったことエクササイズ』
(毎晩寝る前に10分間とって、
うまくいったことを3つ書き出す。
それらがどうして上手く言ったのかを書く。
6ヶ月間継続すると、抑うつ感情が押さえられ、気分がよくなるという
実証結果が得られている)
・『特徴的強みエクササイズ』
(ミシガン大学で作られたVIAの強みテストを受講し、自分の強みを明確にする。
そして強みを活用する具体的な機会を決め、行動をする。
重度の抑うつ患者に対しても、プラセボ対照、ランダム割付などの
心理学に代表的な試験でも効果が見られた)
・『感謝の訪問』
(頭に浮かんだ人に感謝の手紙を書く。
手紙の内容は具体的に700~800文字程度。
その人が自分に何をしてくれたのか、
それが自分の人生にどう影響を与えたのかを具体的に書く。
自分が今何をしているのかを相手に知らせて、
相手がしてくれたことをよく思い返していたと伝える)
などを行うことで、
”意識的にウェルビーイングを高められる”
と伝えています。
これも、実に面白い。
■その他にも
・ウェルビーイングの身体への影響
・GDPとウェルビーイングの相違
などが、データを元に理論だって書かれており、
実に興味深い項目が並んでおります。
ということで、
・より良く生きるための理論的な手順”にご興味がある方、
・また一般的なビジネス書よりも一歩進んだ内容を学びたい方には、
特にオススメの一冊です。
よろしければ、ぜひ。
==============================
<本日の名言>
効果だと?影響だと?役に立つかどうかだと?
人間は自分のなすべきことをなせばよいのだ。
仕事の成果は、自分以外の人が気にかけることだ。
トーマス・カーライル(スコットランド出身の歴史家/1795-1881)
==============================