メールマガジン バックナンバー

今週の一冊『コーポレート・トランスフォーメーション 日本の会社をつくり変える』

今週の一冊『コーポレート・トランスフォーメーション 日本の会社をつくり変える』

2335号 2020年7月12日

(本日のお話 3780字/読了時間5分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日土曜日は、
月1の勉強会への参加。

その他1件のコーチング関連のミーティングでした。

先日より引越し後に入会した
キックボクシングジムにて
全身が猛烈に筋肉痛です…(汗)



さて、本日のお話です。

毎週日曜日は、お勧めの一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナー。

今週の一冊は

=========================

『コーポレート・トランスフォーメーション 日本の会社をつくり変える』

冨山 和彦 (著)

https://www.amazon.co.jp/dp/4163912339/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_GWXcFbRF4RFXS

=========================

です。

■最近よく目にするようになった、

「DX」とか「CX」という言葉。

DXはデジタルトランスフォーメーション
(Digital Transformation)ですが、

「CX」はコーポレート・トランスフォーメーション
(Corporate Transformation)の略で、

”組織の構造を、抜本的に変えること”

を意味します。

■Change が「変わる」に対して、
Transformは「変容する」というニュアンス。

いわば「CX」とは、
サナギから蝶へTransformするくらい

”組織が質的な変容”を意味し、

今こそ組織が革命をするときだ!

と、その必要性を書いているのが
この著書となります。

■著者は、
経営共創基盤のCEOである富山和彦氏。

氏は、

「日本的経済社会モデル」
「日本的”カイシャ”モデル」

に対して、激しく否定的であり、
かつ大いに日本の再興を憂いています。

そして、それが

何故、今この時に良くないのかを
(というよりも機能しないのかを)

これまで数々の企業再建を、
国の産業再生機構の実行リーダーを含めた
豊富な経験から、具体的かつ熱量高く語ります。

氏は決して、
日本や日本人の良さを否定するのではなく、
経営実務化として

”変化が激しい市場の中で、
もはや「日本型カイシャモデル」は極めて
戦略的に勝てない構造である”

ことと

”今、変われなければ、
自動車産業を含めた日本の名だたる会社達も、
ことごとく灰燼に帰してしまう”

のでは、と強烈な危機感を持っているのです。

■では、

「日本的経済社会モデル」
「日本的”カイシャ”モデル」

とは何でしょう?

著書では、以下のような状態が、
日本型カイシャの構造である、といいます。

ちょっと長いですが、「まさに!」と
膝を打つ日本的カイシャのまとめ。
(必要に応じて読み飛ばしてくださいね)

(ここから引用)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<日本的”カイシャ”モデルの構造の特徴>

{1}人事組織管理(コア人材)ー 同質的、閉鎖性、固定性、新陳代謝サイクルは40年、制度の一元性

・終身雇用
・年功制(賃金、役職)
・企業別組合(労使強調)
・新卒一括採用(潜在力採用)
・大卒日本人男性が暗黙の前提
・終身年功制の裏返しとしての定年制(勤続40年モデル)
・メンバーシップ型雇用(特定のジョブと個人の能力適正と報酬をあまり紐付けない)
・フルタイム・フルライフ型雇用(アフター5も週末もカイシャ共同体が第一) 他

{2}組織構造と運営 ー 年功階層性、ボトムアップ、集団主義、コンセンサス重視

・階層構造(年功ベースの世代別階層)
・事業単位、機能単位のミニ共同体分権構造(ムラ社会モデル)
・ボトムアップ型意思決定✕コンセンサス型意思決定→ 稟議モデル
・日常業務は現場主義志向
・組織管理は年功的身分制と人事権に基づくヒエラルキー指向
・意思決定も実行も全員参加型指向(成功も失敗も上下左右全員で共有)
・無数のしかも長い会議を繰り返し、夜の部まで時間を共有して「空気」の一体感を作る

{3}事業戦略経営 ー 連続的改良・改善型競争、自前主義競争

・共同作業による規模と経験蓄積が効果を上げる生産活動(量産型組み立て製造業)が
付加価値のコアを構成する事業を選択
・生産、開発、営業の全てにおいて、同質的な集団による持続的な改良・改善を延々と
積み重ねていく組織能力、コアコンピタンスを軸にした戦い方、競争モデル
・既存事業の成熟による成長力低下に対しては手持ちの組織能力で戦える事業領域の探索、
転地で対応→自前主義が基本

{4}財務経営 ー 財務経営は財務経営、事業経営は事業経営

・財務は全社としての資金の調達と使途の帳尻を合わせることが基本業務
・事業サイドの業績管理についてはP/Lを基本にした経理的な管理で関与
・財務責任者「経理屋」がトップ経営者になることはまれ

{5}コーポレートガバナンス ーサラリーマン共同体主義がガバナンス

・取締役会は社内取締役中心(現場の一般社員まで同質的、連続的なサラリーマン秩序の中に組み込む)
・株主のガバナンス機能は最小化(持ち合い、株主総会対策)
・取締役会も株主総会も成功のKPIはシャンシャン度合い(いかに形式的に短時間で終わらせるか)
・社長人事は前任者(たち)の専権事項(OBガバナンス)
・社長を含む幹部経営陣の選抜は、生え抜きの内部昇格が原則
(要は、そこそこ高学歴で転職をせずに1つのカイシャで勤め上げた日本人のおっさんから選ぶ)
・社長は新入社員生え抜きの日本人男性

※『コーポレート・トランスフォーメーション 日本の会社をつくり変える』より引用
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

■そして著者曰く、

「この構造は、
1960年代から30年近くにわたっては
極めて上手く機能していた」

と語ります。

それは、

改良的イノベーション力と現場の勤勉さにより
品質をぐんぐん上げ「安かろう、良かろう」として
世界の工場としては素晴らしい仕組みだったから。

しかし、それはあくまでも

”環境変化が今に比べて緩やかで、
野球→ソフトボールくらいの
マイナーチェンジのルール変更しかなかった”

という条件で機能していたことである、

といいます。

■ただ、今は違う。

一つの産業がまるごと
ある変化により駆逐されうる状況。

例えば、スマフォや
エンタメのサブスクの登場により、

・デジタルカメラの業界が
一部の一眼レフなどを除いて
一気に需要が消滅する、

とか、

・カーナビやカーステレオも
スマフォのナビ機能で一気になくなる、

とか、

・AV機器(ウォークマンやDVDプレーヤー)などが
ネットフリックス、Amazonプライムなどの登場で
一気に必要とされなくなる

みたいに、

「野球からサッカーへの変更を余儀なくされる」

という

破壊的なイノベーションが
世界中で起こっていく世の中です。

それは1990年代から既にそう。

ゆえに世界の会社が
資産価値を上げているのに、

日本は20年間全く成長がなく、
過去から前に進めていない、

のも、過去の勝ちパターンと
それを生み出す構造に縛られているから。

■加えていえば、現在は

「破壊的な危機」によって更に
「破壊的イノベーション」が引き起こされます。

まさしく、コロナによる
働き方の変化に対して、

また尋常じゃないスピードで
新たなサービスが生まれてくる
(ZOOMも、MicrosoftのTeamsもそう)

世の中です。

ゲームチェンジの幅と、
ゲームチェンジをされるスピードが、
全く持って違ってきている。

そして、それに
対応した企業が評価され、生き残る。
競争は世界に開かれている。

そんな中、

・周りの空気を重んじて、
・下から上まで稟議を上げて、
・色んなリスクを考えて全員OKになってスタート

では、あまりにも遅すぎる。

そうではなくて、

・未完成でも目処がたったら取り敢えず出してみる
・もしクレームが来ても、その対応を含めて改善・向上を高速で行う
・やりながら市場と顧客を満足させるものを作っていく

ことが、今の市場の変化のスピードに
あった戦い方なのです。

コロナにおける様々なサービスも、
思えばそのような対応ができている
(日本から見れば)新しい組織構造が
それを可能にしてきたように思います。

■これは誰が悪い、ではなくて、

上述した日本的カイシャモデルの構造は、
システムとしての問題なのです。

ゆえに、

”根本の組織構造をぶっ壊す”

くらいの気概でやること、

未来に向けて、
そして未来に続く後世のために、

日本と日本人の良さを、
新しい形で創造するための破壊を、
心を鬼にしてやる必要性を
強く我々に問うているのでした。

そして、今後の新しい、
組織の構造(アーキテクチャ)とは、
以下のようなものである、と伝えています。

ボリュームが多いので、
こちらも、必要に応じて読み飛ばしてください。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<日本経済的モデルの新憲法草案>

{1}人事組織管理(コア人材)ー 多様性、開放性、流動性、新陳代謝サイクルは10年、制度は多元的

・平均就社期間10年(転職、退職勧奨、事業ごとの売却などで新卒入社者は40歳まででほとんど退社)
・能力制(賃金、昇進)
・職能別組合(労使は、協調、対立ケースバイケース)
・通年採用(能力採用)
・国籍、男女、年齢のポートフォリオ型人的資本経営(経営幹部の構成は、多国籍、男女同数、年齢も30代から60代まで均等に分布)
・定年制はなし(能力的についていけなければ若くてもクビ、能力あるなら100歳でも働ける)
・ジョブ型雇用(特定のジョブと個人の能力適性と報酬を紐づける)
・会社の仲間よりも、家族、友人、同じ専門性や関心を共にする仲間
・オフィスに集まるのも自宅でリモートも本人やチームの選択にゆだねる
・早ければ30歳、おそくとも40歳までにトップ経営層を目指すかどうかを本人も会社も選択(もちろんその後の入れ替え戦、再チャレンジチャンスもあり)
・共通スキルが中心の評価処遇
・共通スキルのコアは普遍的な業務知識や経営管理上のスキル、
組織を超えて通用するリーダーシップ、コミュニケーション能力、判断力、ストレス耐性、人望、協調性、調整力
・忠誠心のあて先はジョブ>事業>会社
・オペレーショナルマネジャーとしての適性は出世する人の必要条件
・転職は基本的に善(当たり前)→出入り自由、再入社歓迎
・人材はいつでも転身できるように教育投資し、力をつけてもらう
・新卒か中途かは誰も知らない、気にしない
・人材育成は他企業に移る可能性も考慮したプロフェッショナルなスキル育成指向、リカレント指向
・期待される能力要件はどの会社でも通用するケーパビリティがコア
・中核人材ほどまずは当該ジョブと当該ビジネスのプロとして世界一流まで磨き上げる(40歳くらいまで)ことを目指す
・人事制度は多元的

{2}組織構造と運営 ー 能力ベースのネットワーク型、トップダウン&ボトムアップ、強い個人まずありき、コンセンサスより合理性
・フラットな階層構造(能力ベースのフラットな階層)
・個々人の能力に基づくネットワーク型、プロジェクト型の組織運営が基本
・対等なプロフェッショナル同士が知見と事実とロジックで議論し即断即決するプロ型意思決定スタイル
・日常業務も大きな意思決定も、(内部調整、内部調和よりも)顧客と競争を軸にした外部指向
・組織管理は能力と成果と市場評価(潜在的ヘッドハントリスク)ベース
・意思決定も実行も個人としてコミットし、個人として責任を負うことが基本単位(その集合体としてチームや組織単位の責任が生じる)
・経営層においても、プロとしてCEO、CXOは必要な場合はトップダウンで苛烈な決断を行いその責任を任命権者である取締役会に対して負う
・意思決定は時間と手続きよりもスピードと実効性重視(稟議もハンコもなし、少数の権限と責任を持ったプロ同士の会話、討議、合意ですぐに決定)
・組織単位、機能単位、構成員単位間の責任権限はクリアに決め、そこに書いてないことは名実ともに自由、広範な裁量権

{3}事業戦略経営 ー 両利きの経営、非自前主義

・共同作業による規模と経験蓄積が効果を上げる生産活動(典型が量産型組み立て製造業)が
付加価値のコアを構成する事業があれば、そこでは徹底的に儲ける
・それが難しくなった事業からは躊躇なく撤退する
・同質的な集団による持続的な改良・改善を延々と積み重ねていく組織能力、コアコンピタンスを軸にした戦い方、
競争モデルも、それが有効な事業領域では大いに活用するが、より多様的な戦い方の一つに位置づける
・同質モデルが通用しなくなり過剰になった組織能力については、それを構成する人材ポートフォリオの新陳代謝も躊躇なく行う 他

{4}財務経営 ー 事業戦略と財務戦略の高度な融合モデル

・ROE(自己資本利益率)、EBITDA(キャッシュフロー)重視
・ROIC(投下資本利益率)等の指標に基づく事業ポートフォリオ管理
・事業リスク、投資リスクと資本原資の整合化
・CFOはCEOへの典型的なキャリアパスの1つ

{5}コーポレートガバナンス ーステークホルダー主義の外部カバナンス

・取締役会は社外取締役中心(国内外の一流リーダー稼業経験者)
・株主のガバナンス機能は有効活用(持ち合い廃止、スマートな機関投資家との建設的対話重視)
・取締役会も株主総会も成功のKPIはどれだけガチで本質的経営課題を議論したか
・社長人事は現執行部と社外取締役会の協働作業
・社長を含む過分経営陣の選抜は、生え抜き中途、国籍、性別、年齢を問わず、
トップ経営陣としての能力と適正を重視した候補選抜、育成、タフアサインメントテストを通じて行う
・社長の連例は、40歳代から60歳代前半くらいまで均等に分布
・社長が新卒入社生え抜きの日本人である確率は3割以下

※『コーポレート・トランスフォーメーション 日本の会社をつくり変える』より引用
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

■、、、とのこと。

つまり、

勝てる領域では、
日本の同質性の強みを活かせば良い、

ただ、それだけではない
柔軟なやり方を導入することが重要

と語ります。

ただ、もし上記をやろうとすると
胆力がある誰かがファーストペンギンのごとく
立ち向かっていく必要があります。

著者曰く、上記のようなことを言うと

「日本の家族経営の良さが失われてしまう」

「こういった組織の風土は、
日本の歴史や文化と相容れない」

「株主至上主義は長期戦略を考えたモデルと
あっていない」

というような事を言われるそうですが
それについても、著者の意見を明確に述べています。

そして、後半では、

「CX(コーポレート・トランスフォーメーション)」を
実現するためにどのような施策が必要なのか、

を具体的にリストとしてあげています。

■著者は、企業再生の過程で
多くの人をリストラすることも行い、

多くの人が、先が見通せない中で
あるいは準備ができない中で
突然道が絶たれることの痛みを、

ご本人のこれまでの経験で
数え切れないほど見てきた方です。

ゆえに、人の人生を守るために
綺麗事ではなく、本気で取り組まないと
本当にやばいんだ、、、

その切迫感が私は伝わってきました。

同時に、この本は、
乱暴に言ってしまえば

”沈みかけた日本株式会社の根本的問題”

を突きつけている本、とも言えます。

ゆえに、その船の搭乗者である私達一人ひとりが
知り、考え、準備をする大切な問いが
多分に含まれている名著である、

そのように思っております。

以下、著書の紹介です。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ベストセラー『コロナショック・サバイバル 日本企業復興計画』続編!

史上最悪のコロナ恐慌、日本企業が生き残るための唯一の方法とは?
ポストコロナ時代、会社のあり方は、働き方は、生き方は、こう変わる!

・GAFAに負けた日本型企業モデルは、コロナショックで終焉へ向かう
・デジタル・トランスフォーメーション(DX)と日本型組織の相性が悪い理由
・終身雇用制は限界に。10年に1度の中高年リストラは、コロナ後に加速
・電機、自動車に続き、銀行、メディア業界も破壊的イノベーションの嵐に
・DX成功の鍵は「戦略」ではなく「組織能力」
・資金源となる既存事業で手を抜くな
・コーポレート・トランスフォーメーション(CX)こそがDXへの解
・日本のGDP7割、雇用8割を占めるローカル産業のDX化に活路あり。方法論のすべて。
・ビジネスパーソン全員に問われる「あなたの業(わざ)とは何ですか?」

前作『コロナショック・サバイバル 日本経済復興計画』は、コロナ禍の中いち早く緊急出版。
NewsPicks、週刊東洋経済、週刊ダイヤモンド等、各誌に取り上げられ、経営者やビジネスパーソンに注目された。
今作では、さらに踏み込んだ「ポストコロナ」に日本の会社がどう変わるのか?を描く。
日本で働くすべての人に注目してほしい、いまの時代を生き抜くための虎の巻。

※Amazon本の紹介より引用
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ぜひ、皆さまに読んでいただきたいですし、
皆で語り合いたい1冊だな、と思いました。

==============================
<今週の一冊>

『コーポレート・トランスフォーメーション 日本の会社をつくり変える』

冨山 和彦 (著)



==============================

365日日刊。学びと挑戦をするみなさまに、背中を押すメルマガお届け中。

  • 人材育成に関する情報
  • 参考になる本のご紹介
  • 人事交流会などのイベント案内

メルマガを登録する

キーワードから探す
カテゴリーから探す
配信月から探す