今週の一冊『未来のスケッチ -経営で大切なことは旭山動物園にぜんぶある-』
(本日のお話 2132字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は早朝から1件の打ち合わせ。
その後、10-18時にて
毎月恒例の勉強会への参加。
その後、システムコーチングの
打ち合わせでした。
また今月末が期末で、
かつ今週が山場なので、
そこを越えたら少し本など読んで
ゆっくりしたいなあ、
などと思っております。
*
さて、本日のお話です。
毎週日曜日はオススメの一冊をご紹介する
今週の一冊のコーナー。
今週の一冊は
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『未来のスケッチ』 経営で大切なことは旭山動物園にぜんぶある
遠藤功 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/B01FSGH4OK/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_WNCqFb7R8CQ5K
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です。
■皆さまは、北海道の旭山動物園の
エピソードをご存知でしょうか。
これは、2000年代に、
「奇跡の再生」と呼ばれ
多くのメディアに取り上げられ、
そのストーリーは
数々のメディアに取り上げられ
書籍化、映画化もされた
知る人ぞ知る実際の
サクセスストーリーです。
■そのムーブメントは、
2007年をピークにして、
今は落ち着いているものの、
経営危機が叫ばれていて
来場者数が年間30万人を下回ったときから、
ピーク時は日本屈指の上野動物園に
匹敵する230万人を越え、
そして今なお安定的に
100万人の来場者数を誇る
一つのブランドとしての動物園となったことは、
着目すべき事実であると言えそうです。
そして、このケースは
早稲田大学ビジネススクールの
授業の一コマにもなったそう。
■では、この旭山動物園、
どのようにして「奇跡の再生」を
成し遂げたのでしょうか?
結論からすると、
『14枚の現場の方が描いた「未来のスケッチ」』
これが奇跡の再生の
出発点となっていた
と語られます。
■そして、その背景にある事実を
早稲田大学ビジネススクール教授の遠藤功氏が
旭川動物園に行き、坂東元園長に取材し、
完成させた本がこの一冊です。
そしてわかったことは
たまたま宝くじがあたったような
「奇跡」ではなく、理論があった、ということ。
魔法のような”マジック”ではなく、
背景がある”ロジック”があったのでした。
■ではその「ロジック」とはなにか。
大きく言ってしまえば、
『ビジョンの持つ力』
です。
「ビジョン」とはよく言われる話でしょう。
多くのリーダーも「ああ、ビジョン大事だよね。
うちの会社にもあるよ」と言えてしまうもので、
表面的に捉えられそう。
でも大切なのは、
そのビジョンを描いた背景、
すなわち「質や深さ」。
かつ、”ビジョン”を形にする上での
「現場を起点にした仕組み」などに
旭山動物園の凄さが隠れていると感じます。
■旭山動物園の場合、1989年当時、
現場で働く一人ひとりの飼育員が、
「自分の担当している動物は、こんなにもすごい!
この魅力を何とか伝えたい」
と語り合っている姿を
当時の菅野元園長が見たところから始まりました。
そのときに、
「せっかくだから、
展示施設のアイデアとして
まとめてみてはどうか?」
と、仕事が終わった後に
皆が夜集まって、アイデア出しの作業が
始まりました。
■中心メンバーは、
後に園長になる小菅さん、
そして復活劇のインタビューになった
これもその後園長となる坂東さん、
(当時若手だった)
後に、飼育係員から
絵本作家にとして活躍されるあべさん、
など4人があつまり、
「こういう施設にしたらいいよね!」
と皆が夢を語り合ったのでした。
■「これは難しいよね…」
「実現可能性がなさそうだ…」
そんなことは一切言わず、
ただただ夢や理想を語り合う。
そして広がったアイデアが
合計20枚のスケッチとなり
(現存するのは14枚)
それの描かれたものは
「奇跡の再生を成し遂げた旭山動物園を
まさに表した姿」
なのでした。
■注目したいのが、
『未来のスケッチ』を描いた1989年当時は
旭山動物園にとって真冬の時期であった
ことです。
環境としては、
来場者は減る一方。
夢を描いても
実現する予算もない。
動物園の理想とされる運営は
描いたものと逆とされていた時代。
旭川市のお荷物と思われていた。
、、、そんなときに、
現場の思いある4人が、
最も厳しい時に、理想的なビジョンを描き、
「旗」を立てたのです。
そして10年の時を経ながら、
ビジョンが実現されていった。
このストーリーに
魂が入った「ビジョンが持つ力」と、
そこから私達が学ぶものがある、
と感じるのです。
■「ビジョンを描く」と、
言葉にすることは簡単です。
しかし、
ビジョンとは「Vision」つまり、
目に見える(Visible)なものであるので、
”細部までイメージされている”
ことがなければ、
厳密には絵のような姿として
描くことはできません。
「動物園のペンギンの魅力を
どのように表現し、楽しんでもらうのか?」
を考えると、
コンセプトも、
施設のレイアウトも、
説明の文面も、
お客様がどのような
反応をしているのかとういう表情も、
細部までイメージができなければ、
”ビジョンを描く”ことはできないのです。
■しかし、「ビジョンを描く」ことができると、、
「自分達が向かいたい先が明確になる」
そして、
「ビジョンに引力が発生する」
ため、皆がそちら側に
自然と引き寄せられたりするのです。
メンバーは一丸となり、
向かうべき方向もひとつになる。
それは「ビジョン」が持つ
魔法のような、でも確かに存在する力です。
■かつ、ビジョンを描くと、
現実とのギャップも明確になります。
・何が今足りないのか?
・どうすれば実現できるのか?
・形にするチャンスはないだろうか?
と無意識に探すような
そんなメカニズムが発動していきます。
■結果、時を経て
ビジョンが形になることは、
十分起こりうる。
そんな奇跡の背景になるロジックを
この旭山動物園の事例は
教えてくれています。
■ちなみに書籍では、具体的に
旭山動物園がとった施策が書かれています。
早稲田大学ビジネススクールの
授業としても語られているものなので、
「ビジョンが大事」
「とにかくビジョン!」
という粗削りの話ではなく、
実際に現場で、
・どんな姿勢を持つことが推奨され
・何が行われたのか
・そこにはどんな失敗があったのか
・何が要因で結果に繋がっていったのか
・どのようなことを汎用的に学べるのか
が、わかりやすくまとめられています。
動物園の事例ではありますが、
私達の職場でもそのまま活かせる、
重要なメッセージが含まれる一冊。
特に組織のリーダーの皆さまは、
参考になられるかと思います。
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<今週の一冊>
『未来のスケッチ』 経営で大切なことは旭山動物園にぜんぶある
遠藤功 (著)
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