統計データからみる上司と部下の「1on1」の重要性
(本日のお話 2308字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日はオンラインの
コーチング・フォローアップ研修。
170名の方にお集まりいただき
開催をさせていただきました。
(ご参加いただきました皆さま
お忙しい中、ありがとうございました!)
*
さて、本日のお話です。
しばしばコーチングについて
お伝えをする中でいただくご質問で
「部下と対話をする意味が、正直よくわかりません。
1on1って本当に意味があるんですかね?」
なる率直なコメントを
いただくことがあります。
ただ結論として
「対話はめちゃ大事!」なので、
今日はあるデータを元に
「1on1の重要性」について
皆さまに学びと気付きをご共有させて
いただければと思います。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは
【統計データからみる上司と部下の「1on1」の重要性】
それでは、どうぞ。
■ITエンジニアの会社で働く
ある課長さんがこんな事を言っていました。
「1on1って本当に必要なんですかね?
私、困った時は自分で考えるんですよ。
キャリアとかも自分で考えるものだと思うし。
トラブルでもないときに
部下と何を話せばよいかよくわかりせん」
なる声。
曰く、
・マネージャーだから、
トラブル処理やタスクの質問は答えるのは仕事
・ただ、それ以外の悩みや懸念点などは
話す理由はあるのだろうか
・自分はタスク以外の悩みなどは
誰かに話さないし、話したくないし。
自分で考えている
、、、とのこと。
なるほど、たしかに合理的ゆえ、
「対話」はあんまり必要としない雰囲気です
■実際、こういうケースは
しばしばあるように感じます。
特に、上司の方が
「タスク志向型」であった場合など。
例えば、普段から
・目標に向けて何をすべきか、
・どのようにやればよいのか、
・いつまでに誰がやればよいのか
を考えることを軸にしている場合です。
そこに「人間関係志向」として”関係性”などよりも
おこなうべき「タスク」が先行する、ということ。
(ちなみに、タスク志向が悪い、のではありません。
状況によってどちらが有効か異なるだけです)
■ただ「タスク志向型」の方であれば
”1on1などのフォロー”
は、ふわっとしていて曖昧な
なんとも効果が見えづらいもの(かも)
しれません。
仕事なんだから、
仕事のことをやればいい。
たしかに、合理的です。
■しかし、
人は機械のように
プログラミングをすれば
その通りにアウトプットが出る
存在でもありません。
学ぶ存在であり、悩む存在であり、
成長する存在であります。
そして、人は学ぶ時に、
『経験学習モデル』(デイビットコルブ)
という学習モデルで学ぶと言われます。
つまり、
1,経験(物事を体験する)
↓
2,内省(自分自身を振り返る)
↓
3,概念化(上手くいく・失敗するパターンなど抽象化する)
↓
4,実践(それを活用して行動に活かす)
というように
”経験を通じ、振り返りながら学んでいく”
のです。
■確かに
「振り返り・内省」も一人で
やれればよいのですが、
一般的に
他者からフィードバックをしたり
質問をされたりしながら関わられた方が
「内省」は促されるとされます。
上司の関わりは「振り返り・内省」を促す
良い機会になりえるわけです。
そういう意味でも、
「上司の1on1の関わり」
は有用といえるでしょう。
■更に、こんな実証研究があります。
「上司による業務経験付加行動と
部下の能力形成」
という研究です。
(※参考:中原淳『経験学習論 ー人材育成を科学するー』,東京大学出版会,2012)
■ものすごーく平たく言うと、
”上司が部下に関わる際に、
「どのような行動が
部下の能力を成長させるのか?」
を調査・分析した研究”
です。
■数名のマネージャーに、
「普段、部下に仕事を任せるときに、
どんな行動してます?」
と聞き取り調査を行ったところ、
39項目の行動が出たのでした。
それらを大きく分類すると、
1,モニタリングリフレクション(=仕事の進捗管理と内省を促す)
2,仕事説明(=仕事の全体像を伝える)
3,ストレッチ(=背伸びする仕事を任せる)
という3要因にわかれました。
■もうちょっとこの3要因を
詳しくお伝えすると、
<1,モニタリングリフレクション(=仕事の進捗管理と内省を促す)>
とは、
「上司は、あなたが自分の仕事内容を
振り返る機会を与えてくれる」
「上司は、あなたの仕事について
新たな視点を与えてくれる」
「上司は、あなたの仕事について
新たな視点を与えてくれる」
などの質問項目で構成されます。
<2,仕事説明(=仕事の全体像を伝える)>
は、
「上司は、あなたに職場で抱えている
仕事の全体像について説明してくれている」
「上司は、あなたに任せる職場の前工程と
後工程について説明してくれる」
「上司は、あなたに任せる仕事の意義について
説明してくれる」
などの質問項目で構成されます。
そして3つ目の
<3,ストレッチ(=背伸びする仕事を任せる)>
は、
「上司は、あなたに背伸びが必要な仕事を
任せてくれる」
「上司は、あなたに易しくはない仕事を
任せてくれる」
「上司は、あなたの能力より若干高めの
仕事を担当させてくれる」
などです。
■そしてこれらの3要因の行動から、
「どの要因(行動)が部下の育成に役に立つのか」
を611名の入社2年目に対する
統計的データにより分析をした、
というのです。
■結論からすると、
「モニタリングリフレクション、仕事説明、ストレッチ、
いずれも部下の育成に役に立つ」
ということになりました。
ただ、その中でも着目したいのが、
『モニタリングリフレクション(=内省)』
の機会を与えることが、
業務能力向上へ繋がる関連性が強かった、
という点です。
■つまり、
「1on1で、振り返る・内省の機会を設ける」
という行為は
部下の育成に十二分にプラスの効果を発揮することが
統計的にも証明された、
ということです。
■同時に、この話から思うのが、
「信頼」の大切さです。
例えば、1on1による内省の機会の際に
「部下が安心して内省できるかどうか」
は大きなポイントになりそうです。
「信頼・安心」がなければ、
・上司が求めている答えを伝えようとする
(あるいは黙って、ぼちぼちです、で終える)
・失敗経験など話をすると
”詰められる”ような恐怖を持っている
・信頼がなく、率直に語れない
となり、当然ながら1on1も
機能しないことが想像されます。
■ということで色々と
データや理論を絡めて「1on1の重要性」をお伝えしましたが
まとめると大きく2つです。
1、経験を振り返り、内省する機会が
人を成長させてくれる
2、上司が内省を促す関わりをすることで
部下の育成に資することができる
ということ。
結論、
「対話と振り返り、めちゃ大事!」
なのですね。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。
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<本日の名言>
まわりを見渡し、自分に何ができるか考え、
それを実行したならば、前へ進むことができる。
ローザ・パークス(米国の公民権運動活動家/1913-2005)
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