メールマガジン バックナンバー

2571号 2021年3月5日

「学習性無力感」を克服するための2つのアプローチ その1:上司の対応編

(本日のお話 2359字/読了時間3分)

■おはようございます。紀藤です。
昨日は4件のアポイント。
また大学院受験プロジェクトが終わったので

これから「Youtubeプロジェクト」を
始めることにいたしました。

これもまた楽しみです!
またメルマガでもご案内いたします。



さて、昨日のメルマガにて、

『「学習性無力感」に気をつけよう ~やる気を殺す上司の振る舞い~』
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/3779324/

というお話をいたしましたところ、
読者の方から以下のご質問をいただきました。

(ここから)

>「学習性無力感」についてまさにいま職場で思い当たる同僚がいます。

この「学習性無力感に気をつける」というのはわかるのですが、
ではこの無力感に襲われた場合はどう対処すればよいのでしょうか?
今回のメルマガの中には見当たりませんでしたので、どうしてもその部分
アドバイス頂ければ幸いです。

お忙しい中とは存じますが、何卒宜しくお願い致します。

Mさま

(ここまで)

Mさま、ご質問ありがとうございました。

とても大切な問いですね。
そしてご同僚の方への思いも大変伝わってまいりました。

今日はこのご質問について
私なりに回答をさせていただければと思います。

少し長くなりますので、
今日、明日と2回に分けてお伝えいたします。

それでは早速参りましょう。

タイトルは、

【「学習性無力感」を克服するための2つのアプローチ その1:上司の対応編】

それでは、どうぞ。

■学習性無力感。

昨日ご紹介いたしましたが、

アメリカの心理学会の会長であり、
ペンシルバニア大学教授のセリグマン、
そしてメイヤーが提唱した概念です。

”人の無気力は性格ではなく
学習して無気力になる”

というもので、平たく言えば、

「何をやってもどうせムダだし、、、」

という心境に
陥っている状態です。

■昨日の例では、

友人の会社における部長のアイデアに対する反論、
受け止めない過剰な姿勢が1つの原因となり、

この「学習性無力感」が

友人、ならびに友人の職場に
発生したというお話を紹介いたしました。

■では、この「学習性無力感」に陥った場合、
どのように克服をすればよいのでしょうか?


アプローチとして
2つご紹介させていただきます。

1つ目は、

<「上司」からのアプローチ>

です。

■例えば、先日の友人の例では、

友人は、元々は自信があった人で、
自分からアイデアも積極的に出していく方でした。

ですが、「学習性無力感」に陥ってしまった。

その理由は、以下のようなループが回って、
「学習性無力感」が発動した可能性が高いです

・部長の、重箱の隅を突くような指摘
(かつ言い方がキツい)

・それを乗り越えようとすると業務が膨大になる

・何か自分で動くたびに指摘が来る

・言われたことだけやっておこう
(自分から発案しても無駄だ、疲れるだけだ)

となります。

■この場合、大きなトリガーになっているのが、

「部長の接し方」

です。

加えて友人だけではなく、

他の部内のメンバーが多く同じような
状況に陥っていることからも、

この部署内での学習性無力感に
「部長(上司)のアプローチ」が関わっている可能性が高いです。

ゆえに、部長(上司)のアプローチを
変える必要があると考えられます。

■例えばですが、

ある程度自立をしている社員であれば、
指摘をするにしても、

「ここどうなってるんだ。
全然考えられていないじゃないか!」

「こことここも、詰めが甘い。
全部やり直してこい」

という
”指示・命令型のリーダーシップスタイル”
を部長が手放してみるなど。

失敗をある程度見越した上で、

「権限委譲を行い、
同時に責任も取らせる」

「本人にどうすればよいか内省をさせる」

というコーチング型のリーダーシップスタイルに
スライドさせていくというのは、一つ考えられるかと思います。

※ちなみに、このような部下の状況に合わせて
対応を変えていく方法を

「リーダーシップのコンティンジェンシー・アプローチ」

と言います。

※参考:バックナンバー
「リーダーシップ理論を紐解こう(前編)
~コンティンジェンシー・アプローチってなんだ?~」
https://www.courage-sapuri.jp/backnumber/9757/

■また、上司のアプローチとして、

”コーチングのスキルである「承認」”

も有用です。

叱責し、打たれて踏まれて
それでも伸びようとする人ばかりでは
ありません。

打たれて踏まれ続けたら、
多くの人は潰れるわけです。

それを「俺の時代はそうではなかった」といっても
周りが潰れていたら、時代を主張しても意味がありません。

■まず人は心理的に、

”やっていて成長感、変化感を
感じられるものは続けたくなる”

ものです。

逆に、いくら努力しても、
それが一向に成果につながらない。

しかも成果に繋がる兆しも見えない、
となると、

やる気を持続することが
難しくなります。

「努力→成果→報酬」。

この連動が見えてこそ、
人はモチベーションが高まると知られており、
行動が促されることが知られています。

(このことをモチベーション理論の
「期待理論」と言います)

■、、、とするならば、
「学習性無力感」を克服するための
上司からのアプローチとしても、

『承認』

をすることが重要です

特に、結果だけではなく、

「~ができるようになった」
「前回に比べこの部分はより良くなったね」

などの「変化承認」、
すなわちプロセス・行動変化に着目し、

認めていくアプローチが
重要になってくると考えられます。

そうして、

「以前よりも、できるようになった」
「以前よりも、進歩している」

という本人が、努力→成果への
つながりを自覚できるようになったとしたら、

”習性無力感の克服
にも影響があると思われます。

■そしてもう一つ、
上司のアプローチのご紹介。

「部下の能力向上を支援する」

ことで、

”学習性無力感”を克服するパターン。

学習性無力感とは言葉通り、

「無力感(どうにもならない)」
と感じる状態です。

ゆえに、”有力感”
(=あることを成し遂げる力がある、
と自覚できること)

を思えればよいわけであり、

そういった視点では、

「部下が能力向上の実感がある」

状態であれば、
学習性無力感の克服につながるでしょう。

■では、部下はどのような上司の行動により
「能力向上」が見込めるのか?

これは統計的なデータがあります。

2,300名を超える回答者からのデータを
統計的に解析をしたところ、

”以下の2つの上司のアプローチが
部下の「能力向上」に資する”

ことがわかりました。

以下の2つです。

1)内省支援… 仕事のあり方を客観的に折に触れて振り返らせる支援行為

例:自分自身を振り返る機会を与えてくれる
自分にない新たな視点を与えてくれる
自分について客観的な意見を言ってくれる

2)精神支援… 精神的な安息を提供する支援行為

例:仕事の息抜きになる
心の支えになってくれる
プライベートな相談にのってくれる
心の支えになってくれる
楽しく仕事ができる雰囲気を与えてくれる

※参考:『経営学習論 人材育成を科学する』(著:中原淳)

つまり、

能力向上を支援することで、
「有力感」が生まれるというアプローチも

有用かと考えられます。

■まとめますと

1)「リーダーシップスタイル」を変更する

2)「コーチングによる承認」をする

3)上司の内省支援、精神的な支援により、
「能力向上」を支援する



「学習性無力感の克服」

という経路が考えられる、
ということになります。

おそらく、正式な論文などもあると思いますが、
それはまた見つかったらご紹介させていただければと思います。

■では、これだけでOKか?

というと、そういうことでもありません。

もう一つは「本人」の問題があります。

この際のキーワードは

・本人の「能力感」
・そして「統制の所在」

です。

長くなりましたので、明日はこのお話を、
続けさせていただければと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。

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<本日の名言>

人を批評していると、
人を愛する時間がなくなってしまいます。

マザー・テレサ(インドの修道女/1910-1997)

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